最大収録時間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 23:04 UTC 版)
音楽用途の場合、規格上デジタルのPCM形式で最大79分58秒、99トラックの音楽が記録でき、また1トラック中には99インデックス(位置決め標識)を設けることができる。2000年頃までのプレーヤーは、インデックスサーチできるものが多数存在した。 記録トラックの幅を狭めれば容量は増やせるが、古い音楽CDプレーヤーには稀に74分記録されたCD-Rは再生できても80分以上は再生できないという互換性の問題が存在する。2003年に策定されたガイドライン High Capacity Recordable Disc 1.0に対応していないCDプレーヤーでは長時間CDは再生できない。MP3ファイルをデータとして書き込んだ場合、最大収録時間はファイルのサイズにもよるが概ね8時間前後となる。ただし、対応機器は限られる。 CD初期の最大収録時間(74分42秒)が決まったいきさつについて、開発元のソニーによれば以下の通りである。開発の過程でカセットテープの対角線と同じでDINに適合する11.5 cm(約60分)を主張するフィリップスに対し、当時ソニー副社長で声楽家出身の大賀典雄が「オペラ一幕分、あるいはベートーヴェンの第九が収まる収録時間」(12 cm、74分)を主張して調査した結果、クラシック音楽の95%が75分あれば1枚に収められることからそれを押し通した。その大きな要因となったのが、指揮者のカラヤンであった。 開発当時、大賀典雄は、親交のあったカラヤンに、11.5 cm(60分)と12 cm(74分)との二つの規格で二者択一の段階に来ていることを話すと、カラヤンは「ベートーヴェンの交響曲第9番が1枚に収まったほうがいい」と提言した。指揮者によって変わるが、カラヤンの「第九」は約63 – 69分であり、ほとんどのヒストリカル指揮者による演奏時間は60分を超えていた。結果的に74分(最大80分も可能)という収録時間は、1951年にライヴ録音されたフルトヴェングラー指揮のいわゆる「バイロイトの第九」(演奏時間およそ74分32秒)や、それに匹敵する長さであるカール・ベームやレナード・バーンスタインの演奏も、コンパクトディスク1枚に収めることが可能になった。 この話は、大賀がフィリップスを説得するためにカラヤンの名を引き合いに出したという見方があるが、カラヤンが音楽媒体のディジタル化を望んでいたことは事実である。しかしそれ以上の最大収録時間の長大化には、ソニーとフィリップスが躊躇したため、なかなか74分以上の長時間ディスクは1980年代には現れなかった。そのせいもあって、CD-BOXとして200枚以上のセット販売も依然として存在している。 8 cmCD(CD SINGLE)の最大収録時間は約22分程度。これは、CDビデオのオーディオパートとビデオパートを分けそれぞれ開発した際に由来。8 cmというサイズはケースに収納したときレコードのシングル盤ケースのちょうど半分のサイズとなるため、小売店でレコード用の棚を使いまわせるだろうと考えたためである。 現在の収録時間最長の音楽CDは、マーキュリー・レーベルにザンクト・フローリアン・アルトモンテ管弦楽団/レミ・バロー(指揮)が録音したブルックナー:交響曲第3番 (GRML99044)の89分03秒である。Eight-to-fourteen modulationが定めた規格上は97分まで可能であるが、YAMAHAほかのメーカーのドライブはすでに99分59秒まで対応し、100分収録を謳うCD-R商品もすでに発売されている。2019年現在までに990 MBのCD-Rまで開発されたので理論上は110分強がコンパクトディスクの最大収容量になるが、商用録音でこの収録時間はまだ出ていない。一時期にはソフトウェアにオーバーバーンモードまで設け、990 MBまで対応することを謳ったCD-Rドライブもあった。 現在市販されている最大の音楽用コンパクトディスクは台湾とポーランドで販売された99Min 870 MBとドイツで販売された100Min 900 MBであるが、両方とも頒布国が限定されているうえドライブ未対応といった問題が残っており、普及率は低い。CDを焼くソフトウェアはすでに90Min 800MBへ対応している。 2020年代は、90分CDがほぼ商用面で実用化しており、DECCAやNAXOSに90分CDを使用したクラシック音楽のためのコンパクトディスクがある。
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