最大効率が作業物質によらないことの証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/26 07:19 UTC 版)
「カルノーの定理 (熱力学)」の記事における「最大効率が作業物質によらないことの証明」の解説
上と同じように、カルノーサイクルを考える。カルノーサイクルCが高温源から受け取る熱を Q H {\displaystyle Q_{H}} 、低温源に受け渡す熱を Q L {\displaystyle Q_{L}} とおく。このとき、熱効率は 1 − Q L Q H {\displaystyle 1-{\frac {Q_{L}}{Q_{H}}}} で表せる。 ここで、Cと異なる作業物質を使ったカルノーサイクルC'を考える。C'は高温源から熱 Q H ′ {\displaystyle Q'_{H}} を受け取り、低温源に熱 Q L ′ {\displaystyle Q'_{L}} を受け渡すと定める。すなわち、C'の熱効率は 1 − Q L ′ Q H ′ {\displaystyle 1-{\frac {Q'_{L}}{Q'_{H}}}} である。このとき、 Q L Q H = Q L ′ Q H ′ {\displaystyle {\frac {Q_{L}}{Q_{H}}}={\frac {Q'_{L}}{Q'_{H}}}} が成り立てば、熱効率はCとC'で同じとなり、最大効率は作業物質によらないことが証明できる。 これを証明するために、まず、 α = Q L Q L ′ {\displaystyle \alpha ={\frac {Q_{L}}{Q'_{L}}}} とおく。さらに、C'を逆回転させた上に、体積や密度を変えて、C'の系自体を α {\displaystyle \alpha } 倍した逆カルノーサイクルを考える。この逆カルノーサイクルは、外から仕事を与えることで、低温源から熱 α Q L ′ {\displaystyle \alpha Q'_{L}} を受け取り、高温源に α Q H ′ {\displaystyle \alpha Q'_{H}} を受け渡す。 ここで、次の動作を行う。 Cを動かして、高温源から熱 Q H {\displaystyle Q_{H}} を受け取り、低温源に熱 Q L {\displaystyle Q_{L}} を受け渡す(仕事Wが発生する) α {\displaystyle \alpha } 倍したC'を逆回転させ、低温源から熱 α Q L ′ {\displaystyle \alpha Q'_{L}} を受け取り、高温源に α Q H ′ {\displaystyle \alpha Q'_{H}} を受け渡す(仕事W'が発生する。なお、W'<0) α {\displaystyle \alpha } の定義より α Q L ′ = Q L {\displaystyle \alpha Q'_{L}=Q_{L}} なので、1,2の動作を同時に行うと、低温源の熱の出入りは相殺される。 このとき、この過程で発生する仕事を考える。1と2で発生する仕事W,W'はそれぞれ W = Q H − Q L {\displaystyle W=Q_{H}-Q_{L}\,\!} W ′ = α Q L ′ − α Q H ′ {\displaystyle W'=\alpha Q'_{L}-\alpha Q'_{H}\,\!} で表せる。しかし、1と2の動作全体を考えると、発生する仕事はゼロでなければならない。なぜなら、この過程全体では低温源における熱の出入りが無いのだから、仕事が発生した場合、高温源の熱が(低温源に移動することなく)100%の効率でそのまま仕事に変換されたことになる。そのため、この機関は熱力学で否定された第二種永久機関になってしまうからである。 したがって、 W + W ′ = 0 {\displaystyle W+W'=0\,\!} であるから、 ( Q H − Q L ) + ( α Q L ′ − α Q H ′ ) = 0 {\displaystyle (Q_{H}-Q_{L})+(\alpha Q'_{L}-\alpha Q'_{H})=0\,\!} α {\displaystyle \alpha } の定義を使って α {\displaystyle \alpha } を消去すると、 Q H − Q L + Q L − Q L Q H ′ Q L ′ = 0 {\displaystyle Q_{H}-Q_{L}+Q_{L}-{\frac {Q_{L}Q_{H}'}{Q'_{L}}}=0} これを整理して、 Q L Q H = Q L ′ Q H ′ {\displaystyle {\frac {Q_{L}}{Q_{H}}}={\frac {Q'_{L}}{Q'_{H}}}} よって、熱機関の最大効率は作業物質によらない。
※この「最大効率が作業物質によらないことの証明」の解説は、「カルノーの定理 (熱力学)」の解説の一部です。
「最大効率が作業物質によらないことの証明」を含む「カルノーの定理 (熱力学)」の記事については、「カルノーの定理 (熱力学)」の概要を参照ください。
- 最大効率が作業物質によらないことの証明のページへのリンク