映像のデジタルリマスタリング
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「NHKアーカイブス」の記事における「映像のデジタルリマスタリング」の解説
このNHKアーカイブスの施設開館、ならびに放送を実施するに当たって、製作された当時の映像を当時の雰囲気そのままに伝えるために、スタッフがデジタルリマスタリング(修復)処理を実施する。この方式は、番組としての『NHKアーカイブス』が放送される直前の2000年1月 - 3月に、総合テレビ深夜放送でシリーズ放送された『よみがえる新日本紀行』で初めて紹介された。 1959年にNHKは送出用として2インチのアンペックス方式VTRの使用を開始する。それから1981年頃までの間は、送出用として同方式のVTRを使った。この方式のビデオテープは非常に高価だったために、テープを使い回しせっかく収録した番組も次の収録で上書きされ失われる場合がほとんどである。一部の番組は「キネレコ」という装置でフィルム映像に変換して残されたりなどしたが、大部分の番組は前記のように失われてしまったため、著作権法に基づく権利を行使し、視聴者のエアチェックなども収集する。現在[いつ?]では、日本で2インチVTRにて収録された番組作品は全てNHK・民放問わず、1インチ、U規格、ベータカム等のアナログVTR、D1・D2・D3・D5等のデジタルVTRにダビングされたものが、地上波・BS・CS等での放送用等の再生に使われる。 元NHKアナウンサーの宮田輝は、1960年代後半からオープンリールの家庭用VTRを所有した。自身が司会を務めた、1960年代後半の『紅白歌合戦』、『思い出のメロディー』、『ふるさとの歌まつり』の放送は自宅で録画され、その映像は後にNHKに提供された。 特にフィルムの場合は年月を置くと映像・音声とも劣化してしまうため、放送原版のフィルムを一旦特殊な液などで汚れをふき取り、フィルムの破損部などはコンピューターでその部分を修復する処理・加工を行う。 日本のテレビ放送方式(NTSC)では原則として1秒の動画は30コマ(30フレーム)であるが、走査線が上から下に2回走ることで1つの画面が構成される。しかしフィルム映像の場合は16mmフィルムでは1秒間24コマで構成されるため、1秒30フレームを、60フィールドに分割し、それをさらにフィルムの24コマに変換する事で16ミリフィルム1コマ単位に置き換えて細心の注意を払った上でリマスタリング作業を実施する。525方式の放送の30分番組の修復時間は平均20 - 30時間、16ミリフィルムからハイビジョン映像に変換した30分番組は平均で40 - 60時間の修復時間が必要だといわれている[誰に?](テレシネを参照)。 2005年頃までは、16mmフィルムはハイビジョンに対応出来ないとテレビ業界や映画業界では言われた。16mmフィルムは映像を記録している面積が狭く、それで対応できるのは525方式までだという考えだった。しかし1999年からNHKの映像修復担当者とテレシネを担当する会社(ヨコシネ ディー アイ エー)は、共同でハイビジョン化の準備をすすめ、ついに2004年にはNHK全体の取り組みとして『NHK特集シルクロード』で16mmフィルムからのハイビジョンへのテレシネを本格導入することになった。『シルクロード』の高画質化はそれまでの常識を覆す出来であったため、その後、16mmフィルムからもハイビジョン化することはごく普通のことになってしまった。 2007年1月よりBS2(現在は廃止)のアーカイブス関連番組の増加に対応するため運営体制の強化が行われた。このため、2003年2月と比較すると数倍の修復能力を持つに至る。2007年の主な修復スタッフ構成は、修復マネージメント1人・技術マネージメント(修復オペレーター兼務)1人・修復専門オペレーター2人の計4人である。この他にも、2インチVTR等の使用についてはNHKアーカイブス全般を管理する技術担当者が放送博物館や渋谷の放送センターと調整を行ったりする場合があったり、フィルムからVTRテープに映像を変換するテレシネを行う企業なども考慮すれば、作業に関わるスタッフは実際には相当な数にのぼる。 2007年1月以降しばらくの間、NHKアーカイブスで映像修復が行われた番組は画面右上に「NHKアーカイブス」のウォーターマークが入った(NHKで修復作業が許される施設は、品質管理の点から川口市にあるNHKアーカイブスのみ)。修復後に放送されている映像には、動画共有サイトへの無断アップロードなど不正コピー対策のためウォーターマークが入る。 2018年4月から、NHK放送技術研究所が開発したAIカラー化システム(2019年放送文化基金賞(放送技術)受賞)を導入。2018年8月15日に放送された「NHKスペシャル ノモンハン 責任なき戦い」では、ソ連軍が撮影した35ミリ白黒フィルム映像のカラー化が行われ番組に使用された。2019年には大河ドラマ「いだてん」田端政治編の一部と、毎週公開されている「いだてん」のウェブサイトのカラー化映像制作を担っている。
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