昇進基準
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横綱昇進の内規については、古くから論議を呼んでいる(具体的内容は横綱審議委員会#横綱推薦の内規を参照)。 横綱審議委員会及び内規ができる以前はある程度幅のある対応がなされていた。連続優勝で昇進を見送られたのは第32代・玉錦三右エ門(年4場所で3連覇)と第41代・千代の山雅信(年3場所で2連覇)がいるが、いずれも後に(ともに連覇ではなかったが)横綱に昇進している。なお、優勝制度確立後に年2場所で大関の地位で2場所連続優勝を決めたのは第22代・太刀山峯右エ門、第27代・栃木山守也、第35代・双葉山定次の3人がいるがいずれも場所後に横綱に昇進しているため、年2場所では皆無という事になる。横審発足後も、鏡里喜代治は横審への諮問なしで協会が横綱昇進を決めたという例がある。 横審の内規が制定されたのは、本場所が年6場所制になった1958年(昭和33年)1月6日である。その第2項で「大関で2場所連続優勝した力士を推薦することを原則とする。」としながらも、これ以降「大関で2場所連続優勝」で横綱昇進したのは昭和期では大鵬、北の富士、琴櫻の3人のみである。多くの場合は第3項「第2項に準ずる好成績を挙げた力士を推薦する場合は、出席委員の3分の2以上の決議を必要とする。」を適用して、多分に興行上の必要性もあって、連続優勝を果たさなくても横綱に昇進する例が続いた。もっとも大鵬の場合であっても「連続優勝でありさえすれば星の内容はどうでもかまわぬとするのか、それとも13勝以上の星を希望しているのか(中略)「力量抜群」とある文句に「12勝3敗での優勝」が当てはまると解釈されるか、この二つをめぐって議論が出るかも知れない。」として、「優勝」という結果を最も重視する姿勢には当初から議論がある。 1987年(昭和62年)12月に、一度も優勝経験が無い第60代横綱・双羽黒光司が、当時の師匠(立浪親方・元関脇・安念山)らとのトラブルが原因で突如廃業すると、横審委員長の高橋義孝は「今後は「大関で二場所連続優勝」とした横綱推薦内規の第二項以上に「品格、力量抜群」とした第一項を絶対的に尊重していきたい」と述べ、さらに1988年1月場所後の横審でも「横綱昇進について、いやが上にも慎重でありたい」と申し合わせた。このとき、内規の見直しも検討されたが、結果として内規そのものの改正には至らなかった。以降、第63代横綱・旭富士正也が何度も横綱推薦の諮問を見送られた末に、大関で2場所連続優勝を果たして横綱に昇進したことから、内規を審判部が厳格に解釈する傾向が強くなり、結果的に旭富士から第70代横綱日馬富士公平までの8横綱は全員、「大関で2場所連続優勝」で昇進している。 多くの場合、千秋楽終了後から翌日の横審の定例会までの間に、当該力士の横綱昇進の可否をかなり的確に判断できる。具体的には、 内規に該当しているかどうか。 千秋楽終了後の報道陣の取材に対し審判部長が理事長に当該力士の横綱昇進を審議する臨時理事会開催を要請するという趣旨の回答をするかどうか。 理事長が審判部長の要請を受け臨時理事会開催の意向を示すかどうか。 横審への諮問があった場合、報道陣が行う審議出席予定の横審委員への取材で、多くの委員が当該力士の昇進に関して肯定的な見解を回答するかどうか。 といったことなどを基準にしている。 しかし、このような前例に基づく横綱昇進予想は正しい予想が多いとはいえても、確実に正しいとまではいえない。例えば、1994年(平成6年)9月場所で全勝優勝を果した貴乃花の横綱昇進について理事長から横審への諮問が行われ、新聞各紙も1969年11月場所直後に北の富士の横綱昇進に関する理事長からの諮問で横審が否定の答申をした事例以降は理事長からの諮問で横審が長年昇進を見送らず横綱推薦してきた例から横綱昇進確実と報じたが、昇進が見送られた例がある。 2009年(平成21年)7月14日時点において横綱昇進確実条件と目される「大関での2場所連続優勝」という条件も見直されつつある。例えば、2009年5月場所において14勝1敗で優勝し、次の7月場所で綱とりに挑む大関・日馬富士の横綱昇進についても、同場所千秋楽翌日の5月25日に行われた横審で、近年の相撲内容や昇進直前約3場所までの成績をあまり重視せず、2場所連続優勝の昇進内規を形式的に適用して横綱昇進を判断してきたことへの批判があったためか、横綱昇進の話題がほとんど上がらず、鶴田卓彦委員長は「いきなり綱取りを論じるのは早い。(5月場所の)稀勢の里戦のような立合いの変化は評価できない。綱取りには今場所以上の成績も求められる」と述べ、無条件での横綱昇進を却下した。 また、内館牧子委員も「綱獲りは全く話題にならなかったし、特に稀勢の里戦の変化は非常にガッカリした。『大関で2場所連続で優勝すれば横綱』というのなら横審なんて全く必要無い」と発言し、「2場所連覇」で無条件に横綱昇進を決めることに対して、否定的な見解を示した。これ以降は横綱昇進対象となる力士の成績や相撲内容が悪ければ大関で2場所連続優勝を達成しても横綱昇進が見送られる可能性があるのは否定できない。 以上のように、横審の答申前に横綱昇進見送りの前例がないことや少ないことを根拠として横綱昇進の可否を判断するのは、多くの場合正しいとはいえても、確実に正しいとまではいえない。あくまで、横綱昇進の可否の確定は横審の答申を受けて行われる理事会及び番付編成会議の結果である。
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