散弾銃における導入
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「ガス圧作動方式」の記事における「散弾銃における導入」の解説
散弾銃においては、半自動式散弾銃の動作方式はジョン・ブローニングが1902年に開発し、その後1998年まで100年余りの期間製造が続けられ、戦前の日本では半自動式散弾銃の代名詞的な存在ともなったブローニング・オート5に代表されるロングリコイル方式が長年主流であり続けた。 転機が訪れるのは1963年、レミントン社が事実上世界初の実用的なガス圧作動方式を採用したレミントンM1100を発売してからである。これにより散弾銃にも本格的なガス圧作動方式の時代が訪れることになった。 しかし、半自動式散弾銃は半自動式小銃と比較した場合、その構造上・運用面の相違から下記の3つの問題点が存在した。 市販されている装弾の装薬量が多種多様である。 同一口径でも下はクレー射撃用の競技装弾の散弾量24グラム、最大は狩猟用マグナム装弾の56グラムまで2倍以上の差違が存在するのが散弾銃の特徴である。その銃の目的とする商品レンジの性質にも因るが、基本的にはある程度以上までの装弾の薬量の差は銃側で対処できなければ商品性を確保することが困難である。 銃身と並行して管状弾倉が設けられている。 散弾銃の場合、一部の軍用散弾銃を除いてほぼ全ての半自動式散弾銃が銃身と並行した管状弾倉(チューブラーマガジン)を採用している。そのため、通常の半自動式小銃に見られる銃身と並行して設けられているガスピストンをそのままの形で採用することは極めて困難であった。また、この管状弾倉は銃の仕向地によっては狩猟以外にホームディフェンスなどの用途で用いられることもあるため、延長弾倉が装備できることが商品性の確保に必須となる場合もあった。 銃身交換が容易である必要がある。 散弾銃は目的とする狩猟対象に応じて銃口の絞り(チョーク)や銃身長が多種多様である。それまでのロングリコイル式半自動散弾銃やポンプアクション式散弾銃の多くは簡易な分解整備で簡単に銃身を交換できる構造を採用しており、用途に応じたオプション替え銃身を安価に用意することで、旧来から存在する元折式散弾銃に対する差別化を図っていた。そのため、どのような構造のガス圧作動機構を採用するにしても、この原則だけは引き続き守り続ける必要があった。 最初に登場したレミントンM1100は、管状弾倉と銃身の間に遊底に連結されたアクションバーを配置し、このアクションバーに直接銃身からの発射ガスを吹き付けて動作させるという、ロングストロークピストン方式とリュングマン方式を折衷したような構造を採用した。アクションバーの先端は管状弾倉に巻き付くような筒が設けられてピストン構造を形成し、銃身側にはこのピストン構造に覆い被さるようなリングが設けられてシリンダーの役割を果たしていた。これによりガスピストン構造をある程度再現しながらもこれまで通り簡易な整備による銃身交換を両立することが可能となった。この方式はレミントンM870などのポンプアクション散弾銃を並行開発することが容易であり、延長弾倉をオプションで用意できるという利点がある反面、小銃のガスピストン構造と異なり銃身からのガスが管状弾倉の前方にある程度以上吹き抜けることが避けられないため、高度なガス圧制御を行うことは難しく、軽装弾を使用する際にはガスピストン部周辺に専用のOリングをその都度取り付けて対処するというやや強引とも思える手法で対処を行うことになった。 レミントンM1100の構造はその後多くのメーカーのガス圧作動方式散弾銃で似たような構造が採用されたが、本家のレミントンも含めその多くが多種多様な装薬量への対応には苦慮することになった。日本の新SKB工業に至っては初期のM1900から現在のM3000に至るまで一貫して手動切り換え式の規制子構造を採用し、軽装弾と重装弾で銃側が自動的に対処して動作させるという方法論を初めから敢えて採らない方針を選択している程であった。後開発のレミントンM11-87やレミントンM11-96等で、バレルのガス弁に新たにバイパスを設け低圧で正常に駆動し高圧(重装弾)では上部に与圧を逃がす構造になっている。 こうした状況の打破を計ったのは日本のフジ精機製作所(旧日本猟銃精機)が豊和工業との技術提携の元で開発し、1971年に販売を開始したフジ スーパーオート(フジオート)であった。フジオートは管状弾倉の先端に可変式のガスピストンを内蔵してガス圧力を制御しながらアクションバーを動作させる、ショートストロークピストン方式に似た形式を採用した。これにより世界に先駆けて軽装弾から重装弾まであらゆる装薬量の装弾に対応することに成功し、海外でもS&W社やモスバーグ社へのOEM供給を通じた販売で高い評価を得ることになり、後にベレッタAL390などもこれに類似した構造を採用し、レミントン方式に対する第二の極の構造となった。しかし、この方式は管状弾倉の先端に可変式ガスピストンを内蔵する構造上、延長弾倉の装着が不可能という大きな欠点が存在し、ホームディフェンス用途での散弾銃需要が多い北米市場では苦戦を強いられることにもなった。 延長弾倉への対応を重視してガス圧変化への対応をある程度犠牲とするか、延長弾倉への対応を度外視してでもガス圧可変に拘るか、現在のガス圧利用式半自動式散弾銃の方向性がこの2つの方向にほぼ分化している傾向がある中で、イタリアのベネリ社は旧来のロングリコイル方式を改良したイナーシャ・オペレーション方式を開発。延長弾倉にも対応しながら軽装弾から重装弾まであらゆる装薬量の装弾にも対応するというガス圧利用方式の相反する課題をクリアーすることに成功し、後に多くの軍用散弾銃に正式採用されることになった。
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