半自動散弾銃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 07:37 UTC 版)
詳細は「半自動式散弾銃(英語版)」および「半自動式散弾銃の一覧(英語版)」を参照 日本では1971年(昭和46年)の銃刀法及び鳥獣保護法施行規則改正までは、ブローニング・オート5をはじめとする半自動散弾銃は管状弾倉に4発まで装塡可能であった為、薬室の1発と合わせて5連発であり、水平二連や上下二連に対して自動五連銃と呼ばれた。米国では反動利用式が主流であった1960年代中ごろまでは管状弾倉を延長し、5連発以上に改造して鳥猟を行うことが当たり前であったが、1918年(大正7年)に米連邦法として施行された1918年連邦渡り鳥条約法(英語版)(連邦鳥類規正法、MBTA)に基づき、第二次世界大戦後に合衆国魚類野生生物局は狩猟で用いる半自動散弾銃の最大装填数を3発までと規定し、連邦各州も次第にこの規制に基づく州法を適用していった。日本は1970年(昭和45年)にMBTAを基にした日米間条約である渡り鳥条約に批准し、翌1971年(昭和46年)に銃刀法及び鳥獣保護法施行規則を改正する形で半自動散弾銃の弾倉装填数を最大3発に規制。この時、従来の自動五連銃は銃砲店などで装填数減少の為の改造を施すよう通達が行われ、その後最大2発の現行法に至るまで同様の措置が行われた。なお、米国では護身の為に半自動散弾銃やポンプアクション式散弾銃を所持する者も多い事から、銃器メーカーの多くは管状弾倉内に弾倉を分解しなければ取外し不能な樹脂製のプラグを挿入したり、管状弾倉に横からピンを打ち込む事などの方法で装填数を制限して出荷しており、狩猟銃として用いない場合には装填制限を所有者の任意で解除する事が許容されているのが現状であるが、狩猟・有害鳥獣駆除・標的射撃以外の用途で散弾銃を使用する事が許されていない日本では、制限を解除する行為は銃刀法及び武器等製造法違反であり、銃刀法第13条に基づき年に一度行われる銃砲全国一斉検査や、大日本猟友会が所轄する狩猟指導員による猟場の巡回指導などによってこうした違法改造に対する厳しい監視体制が敷かれている。その為、豊和工業など一部の国産メーカーでは国内向け仕様において弾倉そのものを短縮して制限の解除自体を行えない対策を施す例も見受けられた。 反動利用式(ロングリコイル、銃身後退式) 発射の反動を直接利用して銃身を後退させ、その作用で遊底も同時に後退させる事で排莢と次弾装填を行う形式。初期の自動散弾銃で採用されていた形式であるが、装弾を変更してもガスピストンの調整により容易に回転の調整が可能なガス圧利用式の普及によって現在では少数派となっている。この形式の超高級品としては、イタリアのコスミ・アメリコ・アンド・フィグリオ(英語版)が、中折開閉の反動利用式オートを製造している。 ガス圧利用式(ガス・オペレーテッド、ガスオート) 発射の際のガス圧を銃身からガスピストンに誘導して遊底を後退させ、排莢と次弾装填を行う形式。現在の自動散弾銃で主流となっている形式であるが、散弾重量によって火薬量が異なる散弾銃装弾独特の事情により、初期の物は装弾の不適合によって回転不良を起こす場合が多かった。現在では各メーカーが独自のガスピストンを開発し、軽装弾から重装弾まで特に機関部の調整なしに回転することを謳っている銃も多いが、銃の整備状態による作動の可否や、装弾メーカーによる銃との相性は依然存在するため、使用の際には十分な銃の整備と弾の選定が必要である。 イナーシャ・オペレーション(慣性利用方式) ベネリ(英語版)社の自動散弾銃で採用されている形式。発射の反動を利用して銃身を少量後退させ遊底に内蔵した反発スプリングを圧縮、この反発スプリングの反発により遊底を後退させ排莢と次弾装填を行う。ロングリコイルの一種とも言える形式であるが、反発スプリングを内蔵した独自の遊底構造によって、高速な回転速度と多種多様な装弾への対応を両立している。 なお、イナーシャ・オペレーションに類似した「遊底に可動式のボルトフェイスを設け、反動を利用して機関部を回転させる」半自動連発機構は、1900年代初頭にスイスのシェーグレン散弾銃(英語版)(スジョーグレン散弾銃とも)や、ドイツのラインメタル半自動散弾銃が存在しており、戦前の日本にごく少数輸入された記録が残る。両者とも銃身は固定式なのがイナーシャ・オペレーションとの違いで、前者は「機構が未完成であるが、試験的に販売する」という触れ込みで信頼性に乏しく、後者にいたっては陸軍技術本部に持ち込まれて研究が行われるも、当時の日本人銃工や大日本帝國陸軍の技術将兵達にはついに回転の理屈が理解できなかったという曰く付きの代物で、ブローニング・オート5が持て囃された戦前の日本では全く定着せず、銃身後退の要素をベネリが導入するまでは双方とも忘れ去られた存在になっていた。
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