政治学と合理的選択理論とは? わかりやすく解説

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政治学と合理的選択理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 21:07 UTC 版)

合理的選択理論」の記事における「政治学と合理的選択理論」の解説

政治現象自己の利益効用最大化しようと行動するアクター相互作用総体として捉えるのが、政治学における合理的選択論である。1950年代より経済学アプローチ政治現象分析取り入れる形でスタートした政治学における合理的選択理論とは統一され一つ理論を指すわけではなく方法論的個人主義個人合理性仮定するかなり幅広いアプローチ総称した用語である。従っていくつかの分野合理的選択理論分類される。その代表的なもの公共選択論実証政治理論である。にもかかわらず、しばしば合理的選択理論公共選択論は同じものとして扱われることがある。また経済学方法論応用することから、政治経済学として扱われる場合がある。 政治学において合理的選択理論移入され以前から、経済学者ケネス・アロー集合的意思決定に関する先駆的研究行っている。その知見一般可能性定理不可能性定理)として知られており、合理的選択理論のうち特に社会的選択理論集合的選択理論)と呼ばれる分野確立した政治学における合理的選択理論確立大きな役割果たしたのがアンソニー・ダウンズ彼の著書民主主義経済理論」(1957)である。さらにダウンズ示したモデル多大な影響与え先駆的業績残したダンカン・ブラックの名も挙げることができる。これらの業績により合理的選択理論は、集合的決定のみならず政党政治家官僚有権者といった多様な政治的アクター行動とその相互作用射程収める事が可能となった。すなわち、マクロ政治現象政治過程ミクロ視点から分析しミクロ基礎付けを行う理論として合理的選択理論確立されたわけである。 合理的選択理論の最も代表的なアプローチ公共選択論実証政治理論であり、この二つ厳密に区別されなければならない。もっとも近年ではこの二つ理論の間の接近図られており、区別がつかないほどになっている例え公共選択論の最も包括的なテキストであるPublic Choice III(Dennis Mueller著、2003年Cambridge University Pressにおいては、本来実政治理論発達した投票ルール意思決定理論扱っている。その意味では合理的選択理論統合され一つアプローチという方向向かっているとも言える。ここでこの二つアプローチ概説しておくことにする。公共選択論は、経済学者でもあるジェイムズ・ブキャナン率いられ経済学者或いは政治学者達により発展遂げた公共選択論政治交換システムとみなす。すなわち彼らによると、政治過程合意の上様々なサーヴィスコスト負担とを交換するプロセスである。その上で公共選択論交換システムとしての政治を、市場における部分均衡分析同様の手法分析する一方実証政治理論は、ウィリアム・ライカー中心とした政治学者グループにより開拓され発達した実証政治理論研究者たちは、公共選択論者とは異なり個人選好から集団的な決定を導くプロセスとして政治捉えた。彼らは主に社会的選択理論ゲーム理論とを基礎政治分析する政治学分析における制度的文脈軽視批判されるうになると、合理的選択理論次第制度分析取り組み始める。こうして合理的選択新制度論が確立されることとなる。アクターと、その行動意味づけ媒介し拘束する制度相互作用着目する理論である。同時に合理的選択新制度論は、制度アクター合理的戦略的行動帰結として生成することを強調する立場をとる。 個人効用最大化行動原理とするという個人合理性は強すぎる仮定であり現実にはそぐわないとの批判受けて近年一部研究者合理性代えて限定合理性概念導入しよう図っている。限定合理性においては個人効用最大化しようと行動するではなく満足化を図ると仮定する。すなわちこれは次のようなことを意味する合理性という概念では、個人可能な限り全ての選択肢吟味しそれを効用という観点から順序付けることが求められるそのようにして初めて人は自らの効用を最も大きく出来るからだ。しかし限定合理性主張する論者たちは二つ観点から合理性概念批判する一つ環境的制約という観点である。彼らはこの観点から人間選択しうる選択肢が非常に多く選択関わる情報量膨大であるために最大化行動とれない考える。もう一つ人間認識限界という観点である。つまり人間数多い選択肢全て把握できない、すなわち選択関わる膨大な情報を処理できないというわけだ。このことから限定合理性主張する論者達は、個人合理的であろうとし効用最大化しようと目指すが、認識限界から最大化することは出来ず選択肢一部比較して効用観点から比較満足できるものを選択するという満足化しかなし得ない論ずる。 合理的選択理論政治学様々な分野影響及ぼしきわめて重要な方法論となっている。その影響力は従来公共選択論実証政治理論範囲に留まらない。例え政治哲学においてもジョン・ロールズロバート・ノージック以降合理的選択理論前提となるアクター合理性立脚した理論多く見られる国際関係論にあってはリアリズムネオリアリズム)とネオ・リベラル制度主義という2つ重要なアプローチ合理的選択理論方法論受け入れている。

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