採用試験競争率の低下、人材不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:37 UTC 版)
「学校における働き方改革」の記事における「採用試験競争率の低下、人材不足」の解説
現職の教師が前向きに取り組んでいる姿を知らしめ、減少傾向が続く志望者を増やすことを目的として2021年3月末に文部科学省が始めた「#教師のバトン」プロジェクトは、ツイッターで長時間勤務の実態や部活動指導の重い負担を訴える声が溢れ、文科省は2021年4月に訴えを受け止めて働き方改革を加速すると宣言した。しかし「♯教師のバトン」には、勤務時間を実際より少なく申告させられているという投稿もあり、文部科学省が上司の許可は不要と説明しているにも関わらずNHKの取材では管理職から投稿を止められているとの声が複数あると報道されている。また昨年度の公立小学校の教員の採用倍率は過去最低を記録し人材確保が危機だと言われてる。2021年1月、国家公務員制度を担当する河野太郎規制改革相が、霞が関の各府省が長時間労働のサービス残業を常態化していることについて問題視したことから、残業代の適切な支給を閣僚に要請した。2月には適切な国家公務員給与の支給に踏み切った。一方で2021年7月、萩生田文科大臣は給特法について様々な意見があることを認め、かつ教員の長時間残業を変えないと志望者が増加しないことも認識し改革を促進させることを口にした。これに対し都内の校長は教員に残業代を支給すれば国の財政負担が莫大なものになることに理解を示しながら、人材確保のためとせめて本給の増加を希望している。 参議院常任委員会調査室・特別調査室の報告書で、文教科学委員会調査室による教員採用選考試験における競争率の低下の分析で、2次ベビーブームへの対応で大量採用された教員の多くが定年退職時期の影響と学校現場に対する「ブラック」なイメージによる忌避が挙げられている。競争率低下に伴い教員の未配置問題や教育の質の低下が懸念され、学校における働き方改革を進め、教員を取り巻く労働環境を向上させることは急務と述べられており、教員の仕事の崇高さ、やりがいといった魅力の発信については多くの教員が過労死レベルを超えて働いている現状の中で精神論だけでは限界があり、処遇改善が不可欠と指摘されている。 ところで、日本育英会が行っていた奨学金制度は小学校・中学校・高等学校の常勤職員になり全額免除に必要な15年の在職期間に達したとき返還特別免除制度により償還免除となっていた。2004年に日本育英会が日本学生支援機構となった際に廃止された。奨学金改革により低所得者層の優秀な学生が教員を目指さなくなる弊害が指摘されていた。 2022年1月公表の文部科学省調査では、全国で教員不足2558人上ることが明らかになった。文科省では教員不足によって「授業が停滞するといった深刻な事態は把握していない」としているが、千葉市では免許保有者に教員を確保するため、勤務実績のある人など延べ1000人に電話を掛けたり、福岡県の小学校では担任が不在となり、教頭が一時期、担任を務めるなどの弊害が発生してる。73歳OBまでフル勤務で穴埋めする現状がある。この調査結果について、末松信介文部科学大臣は調査結果について危機をもって受け止め、学校における働き方改革が一番の優先施策であると述べた。 始業式の不足が2558人から2021年5月には臨時的任用教員などの手当で2065人にまで改善したものの、依然不足は2000人を超えその実態も小中の1割前後が臨時教員により学級担任を補填している状況にあり、抜本的解消は遠いため、教師の「働き方改革」が必要と報道されている。 これら教育職員の人材不足には、公立小中学校の教職員給与が小泉純一郎政権の「三位一体の改革」により、2006年度から国の負担率が2分の1から3分の1に引き下げられたことと、財政難により文科省が2004年度から「総額裁量制」を導入し、正規の教職員給与水準を引き下げたりしたことなどが相まって臨時教員が増えていったと指摘する識者もいる。第二次ベビーブーマーのために大量雇用された世代が大領退職し、その後の若手職員が産休育休に入ると臨時教員のニーズが高まるが正規職員雇用増で臨時職員予備軍も減っているとの状況が報道されている。 2022年、日本若者協議会では、当事者である、教員志望の学生を対象にアンケートを実施したが、志望者が減っている理由として、94%の回答者が「長時間労働など過酷な労働環境」を挙げた。次に、「部活顧問など本業以外の業務が多い」が77%、「待遇(給料)が良くない」が67%を挙げている。やりがい搾取、部活動の外部化の声もあった。
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