小中華思想とオリエンタリズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 23:05 UTC 版)
「朝鮮文化に対する中国の影響」の記事における「小中華思想とオリエンタリズム」の解説
朝鮮人にとって中国は憧れの対象であり、そのことから自らを中国に次ぐ文明国と見なす文化的優越意識を芽生えさせた。これは中国に支配・服従させられた屈辱感だけでなく、中国に対する「あこがれや悲哀や妄念」をあらわす朝鮮人独特の感情・恨である。古田博司によると、朝鮮は有史以来「朝鮮はシナの家来(李朝の王はシナの皇帝に『臣李某』と書簡を送った)で弟子」であったが、それは文化にまで及び、国風文化の覚醒ができないほど、中国に仕えたのだという。これを孟子梁恵王篇の章句から事大主義といい、中国の子分であるために、周辺国にたいする侮蔑・虚栄・見栄が歴史的個性となり、これを小中華思想という。 外国人が朝鮮文化に対して抱く「朝鮮の文化は、中国の文化の巨大な影響を受け続けてきた」というのはオリエンタリズムという指摘がある。岡百合子によると、戦前の日本人学者は、朝鮮を「その国家は、常に侵略による隷属と被支配のくり返しであって独自に発展することはなかった」と主張しており、朝鮮に青銅器や鉄器の自生が存在しないという見解や「朝鮮には独自の文化はなく、すべて外部から流入したものである」という見解は、戦前に日本人学者によって提出された。例えば、現代では中西輝政は、「韓国はそんな大陸性文明の極致である中華思想の縁辺にあって、属国として虐げられた歴史を歩んできた。悲惨な韓民族の心を支えてきたのが『中華文明に属さない日本のほうが野蛮だ』という差別感である」と言っている。 宇山卓栄は、「中国は儒教を朝鮮人に教えました。儒教では、身分の上下関係だけでなく、国や民族の上下関係も守ることが重要だと説かれます。朝鮮のような小国が中国という大国に事えることを『事大主義』と呼びます。また、朝鮮人のような周辺異民族(夷狄)は世界の中心(華)である中国人に対し、臣下の礼を尽くすべきとする儒教独特の考え方があり、これは『華夷の別』と呼ばれます。中国は儒教を用い、『事大主義』や『華夷の別』を朝鮮人に叩き込み、自らに服従させる精神文化を培養し、彼らを操ったのです。上位の者や国に従うことは美徳であり、儒教的な教養の証しとされました。貧弱な朝鮮人が強い者にすがり付いていく哀れな媚態を儒教が『礼』という美名の下、巧みに覆い隠したのです。朝鮮は度々、中国の高慢な要求に屈服させられましたが、彼らはその屈辱を屈辱とせず、美徳であると自らに言い聞かせました」「中国の模倣社会…文武王の後、新羅の王たちは自ら進んで、唐に朝貢して、臣従しました。新羅はその政治体制の全てを唐の律令制から模倣します。政治体制だけに止まらず、社会や風俗全体が中国の模倣となり、自分たち独自の文化をほとんど生み出せなくなります。それまで、朝鮮人の姓の多くは日本人と同じく、二文字でしたが中国式の一文字に改名させられました。唐の皇帝が李姓だったため、それにあやかろうとした親唐派の貴族・豪族がこぞって李姓を名乗りはじめました。文武王の二代後の孝昭王などは唐に媚びへつらい、唐の実権者の則天武后のおぼえめでたく、唐への従属を深めました」と評している。 宮脇淳子は、「朝鮮はシナ文化の単なる通過点…韓国人がよく言うように、自分たちが全て日本に教えてやったというのは大きな勘違いで、日本と朝鮮半島の文明化はほぼ同時期にスタートしたと考えられます。もちろん、その後は朝鮮半島経由でも文化がもたらされますが、それにしても彼らの思い込みに反して、あくまでシナからもたらされたのであって、朝鮮は新幹線の停まらない駅と同じ。単なる通過点に過ぎないことは言うまでもありません」「朝鮮半島の川は全て『江』と表記されるということです。シナ大陸では、黄河は『河』で、揚子江すなわち長江は『江』です。つまり、南部の川は『江』で、北部は『河』と表す。ということは、シナ大陸の北と南では言葉が違っていたということであり、朝鮮半島に最初に入った漢字を使う人々は、海を経由して南から入った可能性が高いと考えられるわけです。その理由として、燕国の東側は拓けるのが遅かったことが挙げられます。その地域一帯は北方騎馬民の勢力圏だから、商隊はすぐに襲われるので安全なルートじゃない。高句麗に入っても靺鞨などが蟠踞しています。そこで海を利用するわけですが、同様に漢字を使う人たちは、日本列島にも東シナ海経由で来た可能性が高いのです。朝鮮半島から日本への渡来人は、いわば第二派だったという説が、現在、かなり有力になっています」と評している。
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