大森組
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宮藤 映一(くどう えいいち) 主人公。映像の仕事がしたくてテレビ局に入社したが、くだらないバラエティ番組のADばかりで腐る日々を送っていた。そんな中、ある新作映画のメイキングに参加した時、大森宗俊の知遇を得て映画スタッフの一員に加えられ、2年間、映画の現場で毎日が発見と驚嘆の連続である濃密な日々を過ごした。その経験は何物にも代えがたい財産となっている。以降、映画監督をめざして映画の世界に入る。 そして曲がりなりにも助監督と呼ばれるようになって5年、現在34歳。最初の頃は自分でも呆れるくらいに熱く、監督以上に小道具一つ衣装一着に拘りを見せ、どれだけ寝不足だろうが二日酔いであろうが撮影所に入れば心と身体が跳ね起きた。しかし現在は、最初に起用してくれた監督の威光で様々な現場からお呼びが掛かり、5年の間にサードからセカンドに昇格したものの、意に染まぬ仕事が多く、惰性で働くようになり昔の湧き立つような興奮はなくなっている。現在は酒浸りの日々。 スティーヴン・スピルバーグやデヴィッド・リンチを特に尊敬しており、部屋にポスターを貼っている。メールの着信音は『E.T.』、通話の着信音は『インディ・ジョーンズ』。地下鉄の駅から徒歩15分のオートロックでもない築20年を過ぎた5階建てのアパートに住んでいる。 大森 宗俊(おおもり そうしゅん) 監督。邦画界の重鎮、映画界の巨匠。宮藤や小森らからは「オヤジ」と呼ばれている。デビュー2作目でいきなりベルリン国際映画祭の金熊賞を獲得。それ以降も世界に通用する傑作を作り続けたが、完璧主義を貫くあまり、1作に最低4年かかってしまう。彼が率いる制作スタッフは”大森組”と呼ばれ、海外の映画界でも彼を師と仰ぐ者は多く、彼の映画に触発されてこの世界に入ってきた”大森チルドレン”も多数存在する。国内での評価は海外のそれに追随する形。作品の完成度を追求するあまり、いつも資金繰りに苦しめられており、実はそれが寡作である理由の一つ。静謐な佇まいより、過剰なまでのドラマを好み、ビデオ撮りは大嫌いでフィルムにこだわる。美人好みだが、男の運命を狂わせるような存在感がなければフィルムに残す価値などないというのが持論。世田谷区の砧に、内玄関と外玄関が分かれた屋敷ともいうべき日本家屋の自宅があり、試写室を兼ねた大広間があるため、大森組のオールスタッフ(スタッフ編成の他、キャスティングや撮影スケジュールなどを作成する作業)はここで行われるのが慣例。実は製作費を捻出するために何度も抵当に入っている。 昨年肺炎で入院し、以前より顔も身体もひと回り小さくなり、髪の毛の艶もなく四肢がやせ細ってしまった。外部の移動には車椅子を使うように夫人から厳命されている。しかし相対する者を射抜くような眼光は変わらずトレードマークとも言われている咥えタバコはやめず、〈蒸気機関車〉と綽名をつけられる程のチェーン・スモーカーぶりも変わらず。 紳士というわけではなく、温厚でもない。直情径行で気難しい。それなのになぜかその人柄に皆惹きつけられる。妙に子供じみたところもあり、仕事の出来不出来をすぐ顔に出す。癇癪玉が爆ぜる寸前になると、左手で額を押さえ、右手の指がせわしなく動き出す。しかし誉める時には極上の笑顔を炸裂させるので、それが見たくて周囲が奔走することしばしば。 現場は刺激的でアイデアが見る間に形になり、照明の当て方や美術の工夫、演出方法などは他の現場でも応用がきく。どんなカットやどんな演技指導にも勘や経験だけでなく明確な理論づけがあり、「報酬をもらって映画学校に通っているようなものだ」と歓喜した者もたくさんいる。 五社 和夫(ごしゃ かずお) 大森監督がベルリンで名を馳せた2作目からずっと大森の映画をプロデュースし続けている盟友。「五社プロ」の代表。彼の存在なくしてはその後の大森作品も生まれていなかっただろうと言われている。大森に全幅の信頼を寄せて裏方に徹するため、カネは出すが口は出さない。70を過ぎているが黒々とした髪をオールバックで整えていて、精悍な顔立ちはプロデューサーというよりスポーツ選手をイメージさせる。 小森 千寿(こもり せんじゅ) 大森組のカメラマン。カメラマンとしては日本で5本の指に入る実力者。大森の全作品を手掛けていて、斯界では大森・小森コンビなどと呼ばれている。大森より6歳年下の温和で気さくな男。大森には「千ちゃん」と呼ばれている。 雑司が谷の駅から徒歩20分の所にある瓦葺平屋建てに住んでいる。大森の新作撮りに宮藤を誘う。 平岡 伸弘(ひらおか のぶひろ) キャストのスケジュール管理のみならず、スタッフ管理も完璧にこなす大森組の大黒柱的存在。長年大森組におり、しごかれた甲斐あって今は顔色だけで大森の言わんとすることがわかる。当初は今回の映画でも演出部チーフ助監督をつとめることになっていたが、帝都テレビのものいいにより、吉崎徹に変更されてしまう。 苫篠 哲(とましの てつ) 演出部チーフサード助監督。おっとりとした男。YouTubeに原稿や映像が流れているのを発見する。 土居 博司(どい ひろし) 美術監督。物腰は柔らか、見てくれもロマンスグレーの紳士。
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