地球大気の「進化」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 09:00 UTC 版)
「地球史年表」および「太陽系の形成と進化」も参照 地球大気の歴史については、確証は得られていないが、以下のようなことが考えられている。 星間中の塵やガスから誕生した46億年前の地球では、内部からの噴火による脱ガスにより揮発成分が大量に放出されて原始大気(げんしたいき、英: primordial atmosphere)を形成した。星間ガスは、水素とヘリウムが圧倒的に多く、次いでCO(一酸化炭素)、H2O(水)、NH3(アンモニア)、HCHO(ホルムアルデヒド)、HCN(シアン化水素)の順で多い。原始大気もこれに準じた成分で、高温高圧だった。これは現在の太陽の大気と似た成分である。水蒸気による温室効果が原始地球を高温高圧に保っていたという説もある。水素が多いため、大気は還元的だったと考えられる。このうち水素、ヘリウムなど軽い成分は、原始太陽の強力な太陽風によって数千万年のうちにほとんどが宇宙空間へ吹き飛ばされてしまったと考えられている。 水素を失った大気では、一酸化炭素が水から酸素を奪って二酸化炭素になり(太陽に近い地球ではメタンは大気の主成分にはならなかった)、高温によりアンモニアから窒素分子と水素分子が生成された。こうして新たに生じた水素も散逸し、原始大気の主成分は二酸化炭素、水蒸気、窒素となった。やがて太陽風は太陽の成長とともに次第に弱くなってくる[要出典]。原始大気は100気圧程度もあり、高濃度の二酸化炭素が温室効果により地球が冷えるのを防いでいた。現在の金星の大気に近いものであったと考えられている。この頃の大気に酸素はほとんど含まれない。太陽からの紫外線により水蒸気が光解離して酸素を形成した過程はあるものの、地殻を構成する鉄などの金属のほとんどは還元状態にあり、酸素は酸化に使われすぐに消費されて大気中にはほとんど残らなかったためである。 古い変成岩に含まれる堆積岩の痕跡などから、43 - 40億年前頃に海洋が誕生したとみられる。この海洋は、原始大気に含まれていた水蒸気が、火山からの過剰な噴出と温度低下によって凝結し、雨として降り注いで形成されたものであった。初期の海洋は、原始大気に含まれていた亜硫酸や塩酸を溶かしこんでいたため強い酸性となった。強酸性の原始海水は地殻に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄などの金属イオンと反応し、中和物を生じて沈殿し海洋の酸性度を下げたと考えられている。酸性度が下がった海洋は二酸化炭素が溶解できるようになり、これも金属イオンと反応して方解石、苦灰岩、菱鉄鉱などを生じて沈殿し、やがて海水にはナトリウム、カリウム、塩素などの水溶性のいわゆる「食塩」の成分が相対的に多く残ることになった。こうして原始大気の半分とも推定される大量の二酸化炭素を吸収して大気圧が急降下し、温室効果が下がって気温も低下した。 やがて生命が誕生し、二酸化炭素を用いて光合成を行う生物が誕生すると、それらは水を分解して酸素を発生するようになる。さらに、二酸化炭素が生物の体内に炭素として蓄積されるようになり(炭素固定)、長い時間をかけて過剰な炭素は化石燃料、生物の殻からできる石灰岩などの堆積岩といった形で固定される。植物が現れて以降は酸素が著しく増え、二酸化炭素は大きく減少する。大気中の酸素は、初期の生物の大量絶滅とさらなる進化を導いた。 また、酸素は紫外線に反応しオゾンをつくった。酸素濃度が低かったころは地表にまで及んでいたオゾン層は、濃度の上昇とともに高度が高くなり、現在と同じ成層圏まで移動した。これにより地表では紫外線が減少し、生物が陸上にあがる環境が整えられた。 最初のうちは酸素濃度は上昇し続けたが、2億8500万年前のペルム紀後期を境に酸素濃度が徐々に減少を始める。この頃は酸素を消費するさまざまな好気性細菌が誕生し、木材腐朽菌なども発生して、後に石炭となる形でそれまで地下に封じ込められてきた植物を芯まで分解するなどして徐々に炭素循環サイクルが変わっていった。そして2億6100万年前に大大陸パンゲアが出現し、すべての陸地が一つの大陸として集まっていた頃、プレートテクトニクスによる火山活動が活発化し、それに伴いメタンや硫黄化合物などがまき散らされ、それらと化学反応を起こして突然酸素濃度が急降下した影響で海洋無酸素事変が2000万年も続き、ペルム紀末の大量絶滅を招く原因となった。また、火山ガスが放出されたことで水蒸気、二酸化炭素、メタン、硫黄化合物などといった温室効果ガスが大量に撒き散らされた。これによりメタンハイドレートが気化し水蒸気とメタンが間散らされるなどしてさらなる気温上昇が生じるというスパイラルが発生。低温、高酸素環境に慣れた原生代の生態系に致命的な影響を与えた。 人類は大気中の酸素濃度が18%を下回ると酸素欠乏症に陥るため、酸素濃度が18%より低い約3.5億年より前の地球は人類が生きられない環境であったことになる。
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