地球大気との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:00 UTC 版)
一見したところ、金星の大気物質と地球上の大気はまったくの別物である。しかし両者とも、かつてはほとんど同じような大気からなっていたとする以下の説がある。 太古の地球と金星はどちらも現在の金星に似た濃厚な二酸化炭素の大気を持っていた。 惑星の形成段階が終わりに近づき大気が冷却されると、地球では海が形成されたため、そこに二酸化炭素が溶け込んだ。二酸化炭素はさらに炭酸塩として岩石に組み込まれ、地球上の大気中から二酸化炭素が取り除かれた。 金星では海が形成されなかったか、形成されたとしてもその後に蒸発し消滅した。そのため大気中の二酸化炭素が取り除かれず、現在のような大気になった。 もし地球の地殻に炭酸塩や炭素化合物として取り込まれた二酸化炭素をすべて大気に戻したとすると、地球の大気は約70気圧になると計算されている。また、その場合の大気の成分はおもに二酸化炭素で、これに1.5%程度の窒素が含まれるものになる。これは現在の金星の大気にかなり似たものであり、この説を裏付ける材料になっている。 金星では誕生から現在に至るまでに 海洋は一度も形成されなかったか、 海洋は一度形成されて蒸発し消滅した のどちらなのかはよく分かっていない。後者では金星では地球と同様に誕生直後に大気中の水蒸気が液化して海を形成し、その後に太陽定数の増加に伴い気温が上昇してある限界を超えたところで海の蒸発が始まり、温室効果を持つ水蒸気が放出されさらなる温度の上昇をもたらす循環に陥る暴走温室効果が歴史のいずれかの時点で発生して現在の状況に至ったと考えられている。前者の場合、金星は水蒸気の強い温室効果のため長期間マグマオーシャンと厚い水蒸気に覆われ続けて、地球と比べて非常にゆっくりとしたペースでマグマオーシャンの固化が進む。大気中の水蒸気は終始海を形成することができず、集積を終えた時点で存在していた水は水蒸気として長期間大気に留まっている間に宇宙空間に散逸し、現在の状態に至ったことになる。2つの歴史のどちらを辿るかは惑星が集積を終え冷却が始まった段階での太陽からの距離によって決定づけられると予想されている。地球はその境界より十分に外側で集積し冷却が始まったため痙性直後に海洋を持つ惑星になったと考えられているが、金星の軌道はその境目となる距離に近いところにあり、金星がどちらの歴史を辿ったのかは明確な結論は得られていない。 一方で、地球と金星の大気の違いは地球の月を形成したような巨大衝突の有無によるという考え方があるが、金星の地軸の傾きの原因は巨大衝突だという説もあるため、これらは両立しない。
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