創刊の具体化とは? わかりやすく解説

創刊の具体化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 02:42 UTC 版)

文藝時代」の記事における「創刊の具体化」の解説

関東大震災後都市復興の中、横光利一は「新時代道徳と美の建設」に取りかかるため、都市現われ様々な物を題材とした作品着手し川端康成も「新進作家老眼鏡掛けて月を見る消極視力者でなく、望遠鏡発明者なければならぬ」として、「若い娘の踊」のような力を持つ新し文芸創造模索していた。 既成文芸刷新しようとする川端意気込みは、既成作家らからは「既成文壇破壊運動の勇士」とからかわれ、「文藝春秋意識」「新思潮意識」あるいは「所謂ブルジョア文壇意識」とプロレタリア陣営からも罵られた。そうした中、大震災復興後1924年大正13年6月廃刊となっていたプロレタリア陣営の『種蒔く人』から引き継がれた『文藝戦線』が新たに創刊された。 それが起爆剤にもなって『文藝春秋』の若手同人内から、自分たち新人だけの雑誌持ちたいという雰囲気出てきた。7月頃に菅忠雄今東光石濱金作の3人が護国寺あたりを歩いている時に自分たちも「新し雑誌出そうじゃないか」という話が出て、その発案呼応した川端横光片岡鉄兵らを交えて新し同人雑誌創刊具体化されていった東光は「若い者の力を集めて既成文壇打倒するんだ」と主張した菊池寛の『文藝春秋』は随筆中心雑文雑誌でもあったため、小説家志望の若い新人作家には物足りない面があった。菊池が『文藝春秋』を創刊した頃、28程度の薄い雑誌なら出してもよい、という菊池意中東光から伝え聞いていた川端は、すぐに東光二人で菊池の家に下相談承り行っていたこともあった。 新たな文芸同人雑誌若手だけで創刊する意義は、すでに新進作家としてある程度認められている新人たちが、より一層自分たちの存在感を示すため団結することであった川端世代は、二葉亭四迷時代の「文学男子一生の仕事にあらず」といった考え方はなく、作家というものに対す一般社会からの引け目や、文学無力感囚われることもなかった。むしろ文学こそが世界良い方向に導くものだという自負があった彼らは、作家が「団結」すること必要だ考えていた。 「文藝時代」は無名作家文壇に出るための同人雑誌ではなかつた。その意味同人雑誌を一先づ卒業した者の集まりであつた。(中略)既に新進作家として認められてゐる新人群が、自分たちの存在を一層はつきりさせ、既成作家と戦つて、新文藝打ち建てるための団結であつた。(中略)これらの同人勧誘に私はよく役立つた。なぜなら、私は同人となる人たちことごとくと前から知り合つてゐたからである。 — 川端康成あとがき」(『川端康成全集第9巻 母の初恋』) 同人集めは、文芸時評家として活躍していた川端が、顔の広さの利を生かして主導し仲間らと話し合いながら、第6次新思潮』『蜘蛛』『行路』『無名作家』などの同人誌から新人たちが勧誘された。片岡鉄兵は、当時インターナショナリズム動きなどから、人間知らず知らずのうちに人類自滅運命辿っているという「人類滅亡」説を提唱し、「インテリマルクシズム対す意識的な抵抗」を持っていた。 誌名は、当初金剛』という案もあったが、集めた同人らの初顔合わせ席上で、川端が「『文藝時代』はどうだろう」と提案し出席者全員賛成決まった田端ソバ屋開かれたその会で、当時婦人公論記者だった諏訪三郎が、「既成文壇打倒」というスローガン嫌だなと片岡に言うと、「ナニそれは一部意見で、全員意志じゃない」と説得したという。 発行する出版社は、当時西欧前衛的な新文学出版していた新進気鋭金星堂決まり川端らが話を取り付けていた。金星堂は『父帰る』など菊池著作複数出版していて、社長福岡益雄は菊池知り合いでもあった。また、金星堂編集部には、菊池推挙により中河与一勤務していた背景もあった。 既成作家主要作品原稿大手出版の『中央公論』や『新潮』に行ってしまっていたため、新し文芸出版社だった金星堂にも、新進作家による新雑誌創刊の話を機に、彼らに協力して既成文壇打倒」の気運生まれた。 『文藝春秋傘下新人による新雑誌創刊について、金星堂福岡菊池から「構わぬ」と了解され川端横光事前に菊池承諾得た。そして、1924年大正13年10月川端横光両雄として、既成作家プロレタリア系に対抗する新し文芸同人誌『文藝時代』が創刊されることが決まった

※この「創刊の具体化」の解説は、「文藝時代」の解説の一部です。
「創刊の具体化」を含む「文藝時代」の記事については、「文藝時代」の概要を参照ください。

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