先天性風疹症候群とは? わかりやすく解説

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先天性風疹症候群

免疫のない女性妊娠初期風疹罹患すると、風疹ウイルス胎児感染して出生児に先天性風疹症候群(CRS)と総称される障害引き起こすことがある風疹サーベイランスワクチン接種は、先天性風疹症候群の予防第一目的考えている。風疹については感染症週報2001年第29週通巻第3巻29号)に既出である。

疫 学
風疹流行年とCRS発生の多い年度は完全に一致している。また、この流行年に一致してかつては風疹感染危惧した人工流産例も多く見られた(図1)。風疹は主に春に流行し、従って妊娠中に感染した胎児のほとんどは秋から冬に出生している。流行期における年毎10 万出生当たりのCRS発生頻度は、米国で0.9 ~1.6 、英国6.4 ~14.4 、日本1.8 ~7.7 であり、国による差は殆ど見られない母親顕性感染した妊娠月別CRS発生頻度は、妊娠1 カ月50%上、2カ月35%、3カ月18%、4カ月で8%程度である。成人でも15%程度不顕性感染があるので、母親無症状であってもCRS発生し得る。1993 年最後に全国規模風疹流行なくなったので、それに対応してCRS発生数年間数例に減少し1999 年4 月施行感染症法の元での届け出は2 例のみである。発生ゼロになる日も近いと思われる

先天性風疹症候群
先天性風疹症候群
先天性風疹症候群
1. 日本における風疹と先天性風疹症候群(CRS )の疫学

病原体
CRS病原体風疹ウイルスである(図2)。ウイルス株による病原性の差は認められていない発生段階初期(特に3 カ月以内)に胎児内である量以上のウイルス増殖があれば、CRS引き起す考えられている。

臨床症状
CRS の3 大症状先天性心疾患難聴白内障(図3)である。このうち先天性心疾患白内障妊娠初期3 カ月以内母親感染発生するが、難聴初期3 カ月のみならず次の3 カ月感染でも出現する。しかも、高度難聴であることが多い。3 大症状以外には、網膜症肝脾腫血小板減少糖尿病発育遅滞精神発達遅滞小眼球など多岐にわたる

病原診断
病原体である風疹ウイルス検出には、ウイルス分離よりもウイルス遺伝子検出の方が感度良くまた、時間的にはるかに短期間でできる。それは、ウイルス遺伝子RNA逆転写PCR増幅して検出する方法である(図4)。
CRS患児からは、出生後6 カ月位までは高頻度ウイルス遺伝子検出できる検体として検出率の高い順から述べると、白内障手術によ
摘出された水晶体脳脊髄液咽頭拭い液、末梢血、尿などである。
CRS診断としては、症状ウイルス遺伝子検出以外に、臍帯血患児血からの風疹IgM 抗体検出確定診断として用いられるIgM 抗体胎盤通過をしないので、胎児感染結果産生したものであり、発症有無かかわらず胎内感染証拠となる。
胎児感染したか否かは、胎盤絨毛臍帯血羊水などの胎児由来組織中に風疹ウイルス遺伝子検出することで診断できる母親発疹生じて胎児まで感染が及ぶのは約1/3であり、またその感染胎児の約1/3 がCRS となる(図5)。

先天性風疹症候群
先天性風疹症候群

治療・予防
CRS それ自体治療法はない。心疾患軽度であれば自然治癒することもあるが、手術可能になった時点手術する白内障についても 手術可能になった時点で、濁り部分摘出し視力回復する摘出後、人工水晶体使用することもある。いずれにしても遠近調節困難が伴う難聴については人工内耳開発され乳幼児にも応用されつつあるが、今まで聴覚障害児教育が行われてきた。
予防重要なことは、十分高抗体価保有することであり、既に自然感染免疫獲得していることが明らかな者以外は風疹ワクチン免疫付け必要がある。現在、風疹ワクチン標準的には男女幼児(1 から3 歳)に接種されている。(予防接種法対象年齢1歳から7歳半までである。)
また、2001年11月7日予防接種法見直し以降1979年4月2日1987年10 月1日生まれの未接種者が接種可能になる経過措置がとられている。この経過措置2003年9月30日までの期間とされているので、対象年齢で未接種者は早め接種望まれるこの年以外の希望者には任意接種となる。
妊娠能年齢の女性風疹抗体ない場合には、積極的にワクチン免疫獲得しておくことが望まれる妊娠中のワクチン接種避ける。しかし、たとえワクチン接種妊娠判明したとしても、過去蓄積されデータによれば障害児出生は1 例もないので、妊娠中断する理由にはならない極めてまれではあるが、低い抗体価保有していながら、再感染によってCRS発生した例がある。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
先天性風しん症候群は5類感染症全数把握疾患定められており、診断した医師7 日以内最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の1 )と2 )の基準両方とも満たすもの
1 )臨床症状による基準
「A から2 項目以上」または「A から1 つと、B から2 つ以上」若しくは「A の(2) または(3) と、B (1)
A. (1) 先天性白内障、または緑内症
(2) 先天性心疾患動脈管開存肺動脈狭窄心室中隔欠損心房中隔欠損など)
(3) 感音性難聴
B. (1) 網膜症
(2) 骨端発育障害X 線診断よるもの
(3)出生時体重
(4) 血小板減少性紫斑病新生児期のもの)
(5) 肝脾腫
2 )病原体診断等による基準
以下のいずれか一つ満たし出生後風しん感染除外できるもの
 1. 風しんウイルスの分離陽性、またはウイルス遺伝子検出
  例:RT-PCR 法など
 2. 血清中に風しん特異的IgM 抗体存在
 3. 血清中の風しんHI 価が移行抗体推移から予想される値を高く越えて持続
  (出生児風しんHI 価が、月あたり1/2 の低下率で低下していない。)


国立感染症研究所ウイルス第三部 加藤茂孝





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