MRワクチン開発及び2回接種の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 03:05 UTC 版)
「麻疹・風疹混合ワクチン」の記事における「MRワクチン開発及び2回接種の理由」の解説
女性の社会進出に伴い、乳幼児の集団保育が増加していること。また、集団保育機会の増加が求められていること:集団保育は、その当然の帰結として感染症罹患の機会を増加させることとなる。そのため、感染力の強い疾病の予防策を強化したいという需要が生じた。また、現に感染症に罹患している際にはワクチン接種を受けられないため、ワクチン計画全体での接種回数はなるべく少ないほうがよい。そのため、2種のワクチンを別個に接種するよりも、混合接種したほうが有利である。 麻疹・風疹の流行が減少したことにより、ワクチン既接種者が麻疹・風疹患者に接触する機会が減少し、ワクチン接種後長期間を経過することによって抗体価の低下が起こっていること:ワクチン既接種者では、その後に対象ウイルスに接触することによりさらに抗体価が上昇する(ブースター効果)。しかし麻疹・風疹の流行が減少したため、ブースター効果が得られず、成人する頃には感染防御に十分な抗体価を有さない者も増加していると考えられる。2006年、関東地方の一部地域で、ワクチン既接種者に麻疹(修飾麻疹)が流行し、2018年8月に風疹の流行が東京都と千葉県で起きていると報じられたのも、このような背景があってのことである。2回目の接種を行うことでブースター効果を発生させ、抗体価の上昇を得る狙いがある。 先天性風疹症候群の危険性:先天性風疹症候群は、妊娠初期~中期の妊婦が風疹に罹患することにより、胎児が白内障、先天性心疾患、難聴、精神発達遅滞などの先天性障害を持つものである。かつて日本では、風疹ワクチンは女性のみに定期接種が行われていたが、これは男性差別で科学的根拠がなく、成人男性の風疹流行と先天性風疹症候群の原因として、男女とも幼児期に接種するように改められた。しかし、妊婦が風疹に対する抗体価を有していたとしても、不顕性感染による先天性風疹症候群の発症を予防できない可能性が示唆されている。このため、風疹ワクチンを2回接種として、風疹の流行自体を防止することが必須である。 諸外国との関係、麻疹撲滅:先進国では麻疹がほとんど見られない疾患のため、小規模ながらも麻疹の流行が見られる日本は、諸外国から「麻疹の輸出国」と見られている。麻疹は理論上、痘瘡(天然痘)のように撲滅が可能な疾患であるため、日本は麻疹撲滅の足を引っ張っているという批判が挙がっている。このため、麻疹ワクチンの接種率を高め、2回接種を徹底させて麻疹の流行を予防することが、世界からも求められるようになった。
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