交易路としての発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 15:03 UTC 版)
近世に入ると瀬戸内海一体では木綿帆が普及しており、水主の労働力の省力化と高速化を可能にする帆走専用の弁財船が発達し、ある程度の横風や逆風のなかでも帆走が可能になった。特に古くから造船業で栄えていた広島藩倉橋島では「終日丁々戛々の音」絶えないほど盛んに船が造られ、全国各地から注文が殺到したといわれる。 江戸幕府は各地に海駅(海路における公認宿場)を置き、芸予諸島内では三之瀬(下蒲刈島)と鞆の浦が整備された。江戸時代の1605年以後、将軍代替わりを慶賀して朝鮮王朝から朝鮮通信使が1811年まで計12回来日した。通信使は瀬戸内海を通り、芸予諸島で接待を受けた。特に三之瀬は評判がよく、通信使一行から「安芸蒲刈御馳走一番」と絶賛された。また、鞆の浦からながめた瀬戸内海の風景は「日東第一形勝」(日本一の景勝)と賞賛された。 大崎上島にあった和船の造船場 (復元)蒲刈島御番所 御手洗の町並み .mw-parser-output .locmap .od{position:absolute}.mw-parser-output .locmap .id{position:absolute;line-height:0}.mw-parser-output .locmap .l0{font-size:0;position:absolute}.mw-parser-output .locmap .pv{line-height:110%;position:absolute;text-align:center}.mw-parser-output .locmap .pl{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:right}.mw-parser-output .locmap .pr{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:left}.mw-parser-output .locmap .pv>div{display:inline;padding:1px}.mw-parser-output .locmap .pl>div{display:inline;padding:1px;float:right}.mw-parser-output .locmap .pr>div{display:inline;padding:1px;float:left} 御手洗 上関 津和地 鹿老渡 三之瀬 忠海 鼻栗 弓削 岩城島 鞆 尾道 今治 三津浜 近世における主な地乗りおよび沖乗りの港。赤が沖乗り、緑が地乗り、黄が共通。 17世紀後半寛文期頃、河村瑞賢によって東廻り航路・西廻り航路が整備され、東北地方・北陸地方の米穀などを江戸に運輸送する海上ルートが発達した。すでに西日本各地を水運でつないでいた瀬戸内海は、西廻り航路の整備によって、「天下の台所」大坂と、蝦夷地、東北・北陸・山陰地方を結ぶ物資輸送の大動脈となった。これによって島伝いに沖合を航行する「沖乗り」が発達し、御手洗・木江(大崎上島)・鼻栗(大三島)・岩城・弓削など瀬戸内中央部の港町は成長を遂げた。芸予諸島には「風待ち」「潮待ち」の船が入港した。御手洗では船宿・商家・倉庫、船の発着場の雁木や船番所などもできて港町としての整備がはかられ、当初は、薪・水・燃料供給が中心であったが、18世紀以降は北国米を中心とする廻船間の仲介・中継的問屋商業も盛んになった。 近世から近代にかけて塩作りはピークを迎える。江戸時代中期、西廻り航路が確立すると塩が大量に扱われ、瀬戸内海一帯は一大塩田地帯となった。商人たちによって島嶼沿岸部が塩田として整備され「浜旦那」と呼ばれた地主・経営者が誕生した。また本州・四国側においては、竹原塩田(広島藩)・松永塩田(備後福山藩)・多喜浜塩田(西条藩)・波止浜塩田(伊予松山藩)が藩主導で整備され藩財政を潤し、近代に入ると専売制となり、政府が管理した。その伝統を受け継いで現在も残るのが「伯方の塩」である。 江戸時代後期、藩の影響力を超えて芸予の地域交流が盛んになり、安芸の忠海からは塩・綿実・煙草・菰俵・苧などの特産品が多く輸出され、伊予廻船を通じて伊予から干鰯(肥料)・炭・蝋・紙などが輸入された。この頃の芸予諸島は物流の発展により、全国的にみても貨幣経済の浸透度が高かったとされる。 下見吉十郎によって、サツマイモ栽培が導入されたのもこの頃である。
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