主演者選考の変化
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『おはなはん』以来、ほとんどがオーディションで選ばれてきた。以前は「朝ドラ主演は人気スター俳優への登竜門」と言われることが多く、合格者のキャリアに応じて「新人発掘の場」「ステップアップの機会」としての性格を持っていた。 以前は、実績が乏しく、知名度が比較的低かった女優が主演に起用される事例が多かった。例えば沢口靖子は、1984年に芸能界入りし、翌85年上半期の「澪つくし」で主演になった。田中美里は、1996年に芸能界入りし、翌97年上半期の「あぐり」に起用された。このように、芸能界入りしてわずか1年程度の新人でも、主演に抜擢された事例はたびたびあった。一方で、「ふたりっ子」(1996年下半期)の主演だった岩崎ひろみは、幼少期から子役として数多くの作品に出演し、朝ドラ「走らんか!」(1995年下半期)に出演した経験もあったが、このような事例は少数派だった。 20世紀後半の朝ドラでも、「青春家族」(1989年上半期)のいしだあゆみ、「京、ふたり」(1990年下半期)の山本陽子、「おんなは度胸」(1992年上半期)の泉ピン子、「春よ、来い」(1994 - 95年)の安田成美、中田喜子のようなベテランが主演に起用された事例はあった。こうした事例でも、「春よ、来い」以外は、当時は若手だった女優とダブル主演扱いになることが多かった。 「さくら」(2002年上半期)の高野志穂、「天花」(2004年上半期)の藤澤恵麻、「わかば」(2004年下半期)の原田夏希、「風のハルカ」(2005年下半期)の村川絵梨などは、演技経験なし、または乏しい状態で、朝ドラ主演に抜擢されたが、その後は伸び悩んだ。以前の主演選考方法は、新人に近い俳優でも抜擢が容易である反面、朝ドラ後の活躍では当たり外れが大きい側面もあった。 「純情きらり」(2006年上半期)の宮崎あおい以降は、オーディションを経ずに、映画や民放ドラマですでに主演実績のある女優が、朝ドラ主演に起用される事例が増えてきた。「ゲゲゲの女房」(2010年上半期)の松下奈緒、「おひさま」(2011年上半期)の井上真央、「梅ちゃん先生」(2012年上半期)の堀北真希、「花子とアン」(2014年上半期)の吉高由里子、「ひよっこ」(2017年上半期)の有村架純、「なつぞら」(2019年上半期)の広瀬すず、「スカーレット」(2019年下半期)の戸田恵梨香、「エール」(2020年上半期)の二階堂ふみ、「カムカムエヴリバディ」(2021年下半期)の上白石萌音などは朝ドラ主演以前から、複数の民放ドラマ、映画で主演経験があり、複数社のテレビCMに出演した人気女優だった(二階堂と上白石はオーディションで選ばれている)。2011年の日刊スポーツ記事では、『もはやNHK朝ドラは「新人女優の登竜門」という意味合いだけでなく、人気女優の主演による「ヒット作」が大命題になりつつある』と評されていた。 30歳を過ぎた芸歴の長いベテランが、主演に起用される事例も、少数ではあるが存在している。「芋たこなんきん」(2006年下半期)主演の藤山直美(『心はいつもラムネ色』ほか5作)は、朝ドラ放送開始時で満48歳、芸歴42年の大ベテランだった。「カーネーション」の尾野真千子は、朝ドラ放送開始時には満30歳、芸歴14年目で、大河ドラマ「義経」(2005年)、朝ドラ「芋たこなんきん」などにも出演していたが、長らく助演が多かった。「まんぷく」(2018年下半期)の安藤サクラは、朝ドラ放送開始時は満32歳、芸歴11年目だった。「カムカムエヴリバディ」(2021年下半期)の深津絵里(朝ドラ出演歴なし)は、朝ドラ放送開始時は満48歳、芸歴33年だった。 一方で、朝ドラの1 - 2作品に助演(脇役)として出演した後、(オーディションの有無にかかわらず)のちに主演に昇格する事例も増えており、若手俳優の発掘・育成という、朝ドラ本来の機能が衰えたわけではない。 土屋太鳳:「おひさま」(2011年上半期)助演→「花子とアン」(2014年上半期)助演→「まれ」(2015年上半期)主演。 高畑充希:「ごちそうさん」(2013年下半期)助演→「とと姉ちゃん」(2016年上半期)主演。 芳根京子:「花子とアン」(2014年上半期)助演→「べっぴんさん」(2016年下半期)主演。 有村架純:「あまちゃん」(2013年上半期)助演→「ひよっこ」(2017年上半期)主演。 安藤サクラ:「おひさま」(2011年上半期)助演→「まんぷく」(2018年下半期)主演。 戸田恵梨香:「オードリー」(2000年下半期)助演→「スカーレット」(2019年下半期)主演。 窪田正孝:「ゲゲゲの女房」(2010年上半期)助演→「花子とアン」(2014年上半期)助演→「エール」(2020年上半期)主演。 杉咲花:「とと姉ちゃん」(2016年上半期)助演→「おちょやん」(2020年下半期)主演。 清原果耶:「あさが来た」(2015年下半期)助演→「なつぞら」(2019年上半期)助演→「おかえりモネ」(2021年上半期)主演。 川栄李奈:「とと姉ちゃん」(2016年上半期)助演→「カムカムエヴリバディ」(2021年下半期)主演。 黒島結菜:「マッサン」(2014年下半期)助演→「スカーレット」(2019年下半期)助演→「ちむどんどん」(2022年上半期)主演。 神木隆之介:「どんど晴れ」(2007年上半期)助演→「らんまん」(2023年上半期)主演。主演ではないが、浜辺美波は、「まれ」(2015年上半期)助演→「らんまん」(2023年上半期)ヒロインである。 2020年初頭ごろには、NHK番組への出演実績の多さが重視される傾向が、顕著になりつつある。清原果耶は、朝ドラ以外でも、「放送90年 大河ファンタジー 精霊の守り人」(2016 - 17年、総合、主人公の少女期役)、「透明なゆりかご」(2018年、総合、主演)、「螢草 菜々の剣」(2019年、BSプレミアム、主演)、「マンゴーの樹の下で〜ルソン島、戦火の約束〜」(2019年、総合、主演)といったNHKドラマに出演した。朝ドラ3作品と合わせると、清原は2015年から2021年までの6年間で、計6作品のNHKドラマに出演した。 黒島結菜も、「孫のナマエ〜鷗外パッパの命名騒動7日間〜」(2014年、NHK BSプレミアム)、大河ドラマ「花燃ゆ 」(2015年)、「戦後70年 一番電車が走った」(2015年、NHK広島、主演)、「恋の三陸 列車コンで行こう!」(2016年、NHK総合)、「夏目漱石の妻」(2016年、NHK総合)、「アシガール」(2017年、NHK総合、主演)、大河ドラマ 「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(2019年)、「戦争童画集 〜75年目のショートストーリー〜」 第3話(2020年、NHK総合、主演)など、NHKドラマ出演が多い。朝ドラ3作品と合わせると、黒島は、2014年から2022年までの8年間で、計11作品のNHKドラマに出演した。 「舞いあがれ!」(2022年下半期)主演の福原遥は、子役時代の2009 - 13年に、子供向け料理番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』(NHK Eテレ)で主役として出演した。
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