不定冠詞の使用による可算名詞化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 09:16 UTC 版)
「英語の冠詞」の記事における「不定冠詞の使用による可算名詞化」の解説
#名詞の可算性と冠詞の選択で触れた有界性には、ほぼあらゆる品詞を可算名詞に変換する力がある。以下に示すように、不可算名詞だけでなく、固有名詞・代名詞・動詞・動名詞・助動詞などを可算名詞化することが可能である。それは、英語の不定冠詞には「a unit of」「a serving of」「a kind of」「a type of」「a period of」「an event of」「an occasion of」「an example of」というニュアンスを表す機能があるためである。 物質名詞は基本的には不可算名詞だが、種類・銘柄・一定量・具体例を表す場合には、例えば a good butter(良質のバター)、Give me a coffee.((レストランなどで)「コーヒーを(1杯)たのむ」)、We had a heavy rain last summer.(「昨夏(のある日)、大雨が降った」)などと言う。液体であるコーヒーは明確な境界線を持っていないが、カップのような容器に入れることによって境界線ができるため、可算名詞として扱われるのである。雨については、無冠詞で We had heavy rain last summer. と言うことも可能だが、それでは夏を通しての合計雨量について話していることになる。a heavy rain と不定冠詞を付けることによって「一度に大量の雨が降った」というニュアンスが出せるのである。 抽象名詞とともに、具体的な種類・例・まとまりを表す。例えば、have/take a rest(ひと休みする)、You should have a talk with your boyfriend.(「彼氏と話してみた方がいいよ」)、He received a very strict education.(「彼はとても厳しい教育を受けた」)など。このうちのいくつかは「不定冠詞+動詞」という形で動詞が名詞に変化したという見方もできる。同様の形で「ちょっと...する」という意味になるものには、take a walk(散歩する)、have a swim(ひと泳ぎする)、have a listen(ちょっと聞いてみる)などがある。 動名詞とともに、He got a good severe scolding.(「あいつは、こっぴどく叱られた」)などと言うことも可能である。 動詞「give」の過去分詞から形容詞に転じた「given」には、前置詞的・接続詞的用法(Given (that)..., ....)もあるが、不定冠詞を付けて a given とすると、「当然のこと」「言うまでもないこと」「基本的な状況・前提」「既知事実」という意味の可算名詞になる。例えば、In our system it is a given that all are equal before the law.(「我々の制度において、全ての者が法の前で平等だということは言うまでもない」)、At a couture house, attentive service is a given.(「オートクチュール店では、気配りの効いた接客は当然のことです」)など。 通常は助動詞である「must」を名詞として使用する a must という語法がある。これは「絶対必要なもの」「不可欠なもの」「必...」という意味で、例えば、a must for every student(学生にとって絶対必要なもの)、a sightseeing must(ぜひ訪れるべき観光地)、A raincoat is a must in the rainy season.(「つゆ時にはレインコートが欠かせない」)、This video is a must for everyone.(「このビデオは必見だぜ」)などと言う。さらに、アメリカ英語では、形容詞的に a must book(必読書)、must subjects(必修科目)などと言うこともある。 「a」+形容詞+名詞または「a」+名詞+関係節という語順で、その名詞の特別な性質・状態などを表す。例えば、a tremendous earnestness(とてつもない真面目さ)、an existence that is beyond our imagination(我々の想像も及ばない存在)など。 不定冠詞の指示対象は原則として不特定であるが、不定冠詞は固有名詞に付けることも可能で、a Mary(メアリーという人)、a Smith(スミス家の人)、a Rodin(ロダンの作品)、a Toyota(トヨタ製の車)、a Newton(ニュートンのような大科学者)、He is a little Nero.(「彼はまるでネロ(暴君)だ」)などと言う。ただし、「...という人」という意味で使用される際には軽蔑が含まれることもある。 同じ固有名詞が複数存在する場合にも不定冠詞が使用されることがある。例えば、She's a different Alice.(「彼女は違うアリスだよ」)、We stayed at a Y.M.C.A.(「僕たちはYMCAに泊まった」)など。 商品名においても、その中の1つ(1冊、1箱、1本など)を指す場合には不定冠詞を付け、Can I have a Newsweek?((書店やニューススタンド(英語版)などで)「『ニューズウィーク』を(1冊)ください」)、He was smoking a Marlboro.(「彼は(1本の)マールボロを吸っていた」)、He bought a Marlboro.(「彼は(1箱の)マールボロを買った」)などと言う。 指示対象が特定人物であっても、様相や性格が変化したり、以前には知られていなかった面が露になった場合に不定冠詞を用い、a new Paul(心機一転したポール)、a vengeful Tom(復讐に燃えるトム)などと言う。同様に、代名詞に不定冠詞を付けてa new me(生まれ変わったボク)などとする用法もある。これはペットにも用いられ、例えば犬の散歩をしている人とすれ違う時などに Is your dog a he or a she?(「あなたの犬はオスですかメスですか?」)などと尋ねることもできる。 固有名詞の所有格(...’s)から始まる名詞句には基本的に冠詞は付かない(固有名詞がもともと冠詞を伴う場合は除く)が、「Pandora’s box」(パンドラの箱)のようなメタファーには不定冠詞が付く。例えば、This court case could open a Pandora's box of similar claims.(「この裁判は、類似の請求というパンドラの箱を開くことになりかねない」)、Her parents are understandably afraid of opening a Pandora's box if they buy her a car.(「彼女の両親が、娘に車を買ってあげることによってパンドラの箱を開いてしまうのではないかと心配するのは無理からぬことだ」)など。 指示対象が唯一の存在である場合には「the」を用いるのが通例だが(#定冠詞の語法を参照)、特別な状態を表すために不定冠詞を用いることがある。例えば、a crescent moon(三日月)、What a sky!(「なんと素晴しい(ひどい)空だろう」)など。同様に、固有名詞の特別な状態を表す際にもa Japan which can say “no”(ノーと言える日本)、a Christmas that I shall never forget(決して忘れられないクリスマス)などと言う。 本来は1つであるはずのworld(世界)をメタファーとして使用する場合、He is in a world of his own.(「彼は自分だけの世界に閉じこもっている」)、You and I live in different worlds.(「君と僕とは住む世界が違うんだ」)などと言う。 各個人にとって唯一の存在、すなわち身体の一部の特別な状態を表す際にも、不定冠詞が用いられる。例えば、I have a runny nose.(「鼻水が出る」)、I have a stiff neck.(「首筋がこわばっている」)など。
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