ライブドアによる敵対的買収事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 06:44 UTC 版)
「ニッポン放送の経営権問題」の記事における「ライブドアによる敵対的買収事件」の解説
以降、フジサンケイグループは実質的にフジテレビを中心として運営されていくことになったが、そのフジテレビの筆頭株主は、グループ内の一企業で総資産規模もはるかに小さいニッポン放送である、といういびつな構造はそのまま放置され、資本のねじれ現象が続いていた。ニッポン放送はフジサンケイグループによって運営され、そのフジサンケイグループはフジテレビが舵取りし、そのフジテレビの親会社がニッポン放送という、ちぐはぐな経営状態だったのである。この状況を是制すべく、上場後筆頭株主となった村上ファンド代表の村上世彰は、フジテレビと共同持株会社を設立して、両社をその事業子会社とする案を提示。しかし経営陣はフジテレビに対する第三者割り当て増資を実施し、まずはこれで資本構成の是正を図るとした。 その結果、一時筆頭株主がM&Aコンサルティング(16.6%) 、第2位「フジテレビ」(12.3%)となる。2005年1月17日、鹿内家の株式放出の知らせを聞いたフジテレビ側は、村上ファンドの意を受けて50%超以上を占める筆頭株主になり、親子関係のねじれを解消することを目標に、同社発行済み株式を5,950円で買い付ける公開買付け(TOB)を発表した。 しかし、2月8日午前8時すぎのわずか30分の間に、堀江貴文率いるライブドアが熊谷史人や塩野誠が中心となり子会社「ライブドア・パートナーズ」が700億円を投じ、東京証券取引所の時間外取引で発行済み株式の29.5%を追加取得、ライブドアは取得済みの株式を加えて35%を占める事実上の筆頭株主となった。その後もライブドアは過半数を目指し買い増した。これを受け、フジテレビはTOBの目標を「25%超以上」に変更することでTOB成功を確実にさせ、ニッポン放送を媒介にしたライブドアからの間接支配を排除する方針を固めた。 続く2月23日、ニッポン放送亀渕昭信社長とフジテレビの日枝久会長が共同記者会見を行い、ニッポン放送はフジテレビに対して4,720万株の新株予約権を発行すると発表。日枝は発行差止め申請が出された場合「受けて立つ」と宣言。仮に権利がすべて行使された場合、現在の発行済み株式の1.44倍の新株が生まれるため、ライブドア側がそれ以外の株をすべて買い集めてもニッポン放送はフジテレビの子会社になる。 これに対して、翌2月24日、商法で禁じられた「(フジテレビによる)支配権の維持や争奪目的の新株発行」に当たるとして、ライブドアが新株予約権の発行を差し止める仮処分を東京地方裁判所に申請した。 3月2日、ニッポン放送社員会は、「堀江氏の一連の発言にはリスナー(聴取者)に対する愛情が感じられず、また責任のある放送や正確な報道についても理解しているとは思えず、ニッポン放送の資本構造を利用したいだけとしか映らない」という理由から、ライブドアの経営参画に反対する声明を発表した。 3月7日、フジテレビのTOBが締め切られ、翌日のフジテレビによる発表では、TOBが成立しニッポン放送発行済み株式の36.47%を取得。これによりフジテレビはニッポン放送の商法の子会社の議決権規制と重要議決拒否権を確保した。しかしこの時点でフジテレビとライブドアの合計持ち株比率が発行済全株式の70%を越えており、これは、上位10社の合計出資比率が80%を越えると東京証券取引所の規定により1年間の猶予後に上場廃止、また90%を越えると即時上場廃止という規則により、ライブドアの株買い増しは同社にとって得策ではないとの意見もあった。 3月9日、「新株予約権の発行によって既存株主が損害を被る」として、個人株主が東京地方裁判所に発行差し止めの申請を行ったことをニッポン放送が発表(後に取り下げ)。 3月11日、東京地方裁判所はライブドアが申請していた新株予約権の発行差止めを認める仮処分を決定した。これを受けてライブドアは5億円を供託したため、最終的に上級審で覆されない限り新株予約権の発行はできなくなった。 3月14日、ニッポン放送が子会社のポニーキャニオンなどの株式の売却を検討している(買収に対する防衛策の一つで、いわゆる「焦土作戦」と言われるもの)と報道される。 3月16日、ライブドアの議決権比率が49.8%に達したと報じられる。これによりライブドアが経営に参画する可能性が高まってきたことから、開局以来労働組合の無いニッポン放送に労働組合が結成されるとも報じられる。また同日、3月11日に決定された東京地方裁判所の仮処分決定に対するニッポン放送の異議申し立てについて審尋が行われた。東京地方裁判所はニッポン放送の異議を退け、仮処分を認める決定を行った。ニッポン放送は即日で東京高等裁判所に対し抗告を行った。 3月23日、東京高裁(裁判長は鬼頭季郎)は地裁の仮処分決定を支持、ニッポン放送の抗告を棄却した。これにより24日の新株発行は事実上不可能となり、ニッポン放送は新株予約権の発行を断念、記者会見で最高裁へ特別抗告を行わないと宣言した。また、ライブドアはフジテレビ株の取得を凍結する方針を固め、フジサンケイグループとの業務提携交渉を優先させると報じられた。 3月24日、ソフトバンクグループの金融サービス会社であるソフトバンク・インベストメント(SBI/現・SBIホールディングス)とニッポン放送、フジテレビの3社が、メディア・通信分野などの新興企業に投資するベンチャーキャピタルファンドを共同出資で設立することと、これに伴う関係強化を名目に、ニッポン放送が所有するフジテレビ株(発行済み株式の13.88%)をSBIに貸し出すことを発表した。これにより、すでに大和証券SMBCに貸し出している株式8.63%と合わせ、ニッポン放送が所有するフジテレビ株は0%となり、ライブドアのフジテレビへの間接支配に対する防御策であったと考えられる。 4月18日、ライブドアの熊谷史人とフジテレビの飯島一暢が中心となり和解交渉を続けた結果、ライブドアとフジテレビが和解し、両者が業務提携するとともに、ライブドアグループが所有するニッポン放送株全てをフジテレビに譲渡し、フジテレビがライブドアに出資すると発表。
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