ポップカルチャーとしての『レント』とは? わかりやすく解説

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ポップカルチャーとしての『レント』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 06:26 UTC 版)

レント (ミュージカル)」の記事における「ポップカルチャーとしての『レント』」の解説

『レント』上演されていたブロードウェイ西41目通りのネダーランダー劇場では、1階席と2階席の前方が110ドル(約1万2100円)前後2階後方でも55ドル前後値段だったが(2008年9月終演時の価格当時平均的為替レート1米ドル=110円で計算)、最前列の2列は特別に20ドル(約2200円)の当日券設定されていた。これは生前お金余裕がない学生ブロードウェイにあまり縁がない若い人たちにも楽しんでもらいたい」とこの割引チケット案を提唱していたジョナサン・ラーソン意志継いだのである開幕当初はこの最前列別当日券を目当てにした徹夜組連泊組の若者で、ネダーランダー劇場周辺キャンプ場さながら様相呈していた。この若者たちが「レントヘッド」の元祖である。後に警備上の問題からこの「先着順」は「抽選制」に代わったが、この伝統は現在でもツアー公演が行われる全米都市劇場や、各国版上演される外国都市劇場でも基本的に踏襲されている。チャリティー価格2000ドル(約22万円)という高額チケット話題となった十周年記念公演でも、最前列の二列はやはり20ドル当日券で、その徹底ぶりが評判となったエンジェルが歌う“Today 4 U”では、金持ち夫人から頼まれ近所のうるさいを「黙らせて」金を稼いだことが得意げに語られる。これは『ラ・ボエーム』でショナールが英国紳士から頼まれてうるさいカナリア殺して金を稼ぐ話を下敷きにしているのだが、このカナリア『レント』では「秋田犬エビータ(Akita-Evita)」になっている。これには1980年代中頃から90年代はじめのニューヨーク世相反映されている。当時ブロードウェイ低迷期にあり、国産新作ミュージカル多く伸び悩んでいた。そんな中ロンドン発の『キャッツ』、『スターライト・エクスプレス』、『オペラ座の怪人』、『サンセット大通り』などは好調で、これらを書いたアンドルー・ロイド・ウェバー一人勝ち状態にあった。そのウェバー地位不動のものにした作品が『エビータ』である。つまり「近所のうるさいエビータ」には「どこからも聞こえくるロイド・ウェバーメロディー」を素直に喜べなかった当時ニューヨーク舞台関係者たちの本音表されている。このEvitaに韻を踏ませたのがAkitaであるが、当時アメリカでは飼い主忠実信頼できる高級番犬として秋田犬注目集めており、ニューヨーク金持ちの間では一種ブームとなっていた。ラーソンはこの二つ巧みに組み合わせたのである。 この“Today 4 U”にはジョナサン・ラーソン時代考証ミス含まれている。歌詞の中で「…誇り満ちたエビータは、まるで悲壮浸ったテルマルイーズのように、23階の窓の縁から真っ逆さま飛び降りた… (After an hour, Evita, in all her glory, On the window ledge of that 23rd story, Like Thelma and Louise did when they got the blues, Swan dove into the courtyard of the Gracie Mews.)」というのがそれで、このテルマルイーズというのは映画テルマ&ルイーズThelma & Louise)』のラストシーンへの言及である。この映画公開されたのは1991年だったが、1991年時点でボヘミアンイーストヴィレッジはすでに終焉をむかえており(次項参照)、『レント』のようなストーリ展開することはほぼ不可能な状況だった。ラーソンもあとになってこのエラーに気がつき、『レント』は「12月24日からちょう1年間」のイーストヴィレッジ繰り広げられるという、年代曖昧な表現にした。しかし映画化にあたってクリス・コロンバス監督時代設定必要性から、あえて脚本を「1989年12月24日からちょう一年間」と改めている。 警官隊によるモーリーンのパーフォーマンス騒動鎮圧と、その一部始終マーク撮影してこれが彼の成功きっかけになるというエピソードも、実際に起ったある事件下敷きにしている。1988年8月6日深夜から7日未明にかけて、イーストヴィレッジは「トンプキンズスクエア暴動」という嵐に見舞われた。これは、イーストヴィレッジ中心に位置するトンプキンズスクエアパークに居座っていたホームレスたちを警官隊追い出そうとしたところ、「これに反発した地元ボヘミアンたちが暴徒化して衝突」、重軽傷44人を出すという流血惨事になった事件である。ところがその一部始終ビデオ撮っていた近隣の住民がいて、これをテレビ局持ち込んだことから大騒動になった。そこに記録されていたのは暴徒化したボヘミアンの姿などではなく群衆過剰反応して無抵抗市民警棒めった打ちしはじめ警官隊の姿だったのである。この事件後「ボヘミアンイーストヴィレッジ」は急速にその終焉向うことになる。 モーリーンが披露するFly over the Moon”というマルチメディア パフォーマンス アートは、一般に過剰演技だと思われがちだが、実際に当時ニューヨークのアングラアートシーンを知る者を思わずニヤリとさせるほどリアリティー溢れパフォーマンスとなっている。なおミュージカル映画では、先に録音しておいた歌に合せて撮影時役者口パク演技をするのが通常だが、この“Fly over the Moon”に限って実際に撮影中にライブ録音された音声そのまま映画使われている。イディナ・メンゼルは“完璧なパフォーマンス”を披露するために、撮影ではこの長丁場シーンを実に7回も繰り返している。 劇中では敵役演じテイ・ディグスベニー)とイディナ・メンゼル(モーリーン)は、『レント』 での共演が縁で交際始め大恋愛の末2003年結婚おしどり夫婦としてニューヨークで有名なセレブカップルだったが、2013年離婚している。 第一幕の切れ(映画では前半終わり)でキャスト全員が “La Vie Boheme” を歌うシーン舞台になったライフ・カフェ (Life Cafe) は、イーストヴィレッジの東10目通りアヴェニューBの角に実在するレストランである。オフブロードウエイ版が製作上演されたニューヨーク・シアター・ワークショップからほど近くラーソン本人をはじめスタッフ俳優たちが仕事開け毎晩のように通った行きつけの場所だったことから、ラーソンはこれに敬意表して劇中そのままの名で登場させた。映画版ではこの実在のライフ・カフェの外観ロケ撮影内部シーンセット撮影したが、実物よりも格段と広いことを除けばその内観は1996年当時のライフ・カフェとほぼ変わらないものとなっている。 なお: 日本プログラム種々の解説書では、“Joanne”をフランス語読みでジョアンヌ」と表記しているが、実際の英語の発音も、原作発音も、すべて「ジョアン」の方が発音としては近い。 日本プログラム種々の解説書では、エンジェル役を演じたWilson Jermaine HerediaミドルネームJermaine”を、「ジェレマイン」と表記しているが、実際発音は「ジャーメイン」が近い。

※この「ポップカルチャーとしての『レント』」の解説は、「レント (ミュージカル)」の解説の一部です。
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