ペンドリーノとは? わかりやすく解説

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ペンドリーノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/09 00:59 UTC 版)

ジュネーヴヴェネツィア行のユーロシティとして運用されるETR610

ペンドリーノイタリア語: Pendolino)とは、イタリアフィアットの鉄道車輌部門であったフィアット・フェロヴィアリア [1]によって開発された車体傾斜式電車である。
呼称はイタリア語で「振り子」を意味する「pendolo(ペンドロ)」に由来する。

概要

イタリアは山岳国であるため線形の悪い線区が多く、古くから車体傾斜式車両の開発に熱心であった[2]1957年1967年には車体傾斜式車両の試作車2種類が製作され、1971年には、後のペンドリーノの原型となる試作車Y-0160がフィアット・フェロヴィアリアによって完成した[3]

フィアット・フェロヴィアリアの元からの技術に加え、イギリス国鉄(当時)が1970年代に開発したAPT370形の技術も購入して、1975年には初めての営業用車両であるETR401が完成した[4]

イタリアではフィレンツェ - ローマ高速線の一部が1977年に欧州初の高速鉄道として開業し、250 km/h運転を実現したが、その後の整備でフランス西ドイツ(当時)に後れを取り、同線は1992年になるまで全通しなかった。従来区間のスピードアップのために不可欠である曲線通過速度の向上のため車体傾斜式となっているが、その方式は日本で実用化された台車の揺れ枕に組み込んだコロ装置による自然振り子方式ではなく、油圧シリンダーで車体そのものを8°前後傾斜させる強制車体傾斜式である。また、国内の高速新線ディレッティシマ、Direttissima)では最高速度250 km/hでの走行も可能で、イタリア国内に一大ネットワークを構築した。

高速新線でない在来線でも安価に高速化を実現できるため、イタリア以外にも高速新線を建設するほどの需要や経済力がない国を中心として多くの国に輸出され、在来鉄道の高速化に大きく貢献している。現在はかつて370形が試験走行したイギリス西海岸本線にもペンドリーノの技術を採用した390形「ペンドリーノ・ブリタニコ」が導入されている。

イタリア

  • ETR4501988年に営業投入された初の車体傾斜車両。9両編成の動力分散式電車)で、直流専用
  • ETR4601994年に登場した第2世代。ETR450同様に、9両編成の動力分散式で直流専用電車だが、電動車の比率が減り、車体の幅が広くなり、定員も増加した。デザインジョルジェット・ジウジアーロによる。
  • ETR470(CIS:Cisalpino) : 1996年に登場。イタリア国内からスイス・ドイツへ乗り入れするチザルピーノに運用され、アルプス越えに対応するETR460の派生型で、交直流電車。当初は各国の国鉄またはその民営化された鉄道会社ではなく、チザルピーノ社(CIS)が保有していたが、現在ではスイス、イタリア両国での保有となっている。このほか、塗装もETR450・460・480の赤と白を基調とするものではなく、白と青を基調とする別のもので、在来線のみでの運用が前提のため、最高速度も200km/hに抑えられている。
  • ETR480 : フランスへの乗り入れのためにETR460を交直流対応とした形式。ETR470とは異なり、高速新線を走行することが前提の車両。ETR460と外観の違いはほとんどない。
  • ETR600 : イタリア国内専用の第4世代ペンドリーノ。直流3000Vと交流25kV50Hzに対応。信号システムはERTMS(欧州共通信号システム)とSCMT(イタリア国内の信号システム)に対応。7両編成で最高速度250km/h。供食設備はビストロ車。
  • ETR610 : チザルピーノ社向けの第4世代ペンドリーノ。直流3000Vと交流25kV50Hzのほか、スイス・ドイツ・オーストリアに直通するため、交流15kV 16.7Hzにも対応。信号システムはERTMS・SCMTのほか、スイスZUB・SIGNUMとドイツLZB・PZBに対応。7両編成で最高速度250km/h。オーストリア直通の準備工事も行われている。供食設備は食堂車(18席)。

イタリア国外への輸出

ドイツ

  • 610形気動車 : ドイツ連邦鉄道がニュルンベルク・ホーフ間の山間路線向けに計画し、1992年に運行開始。台車を含めた強制振子システムをフィアットが供給し、愛称も元祖と同じ「ペンドリーノ」となった。2014年12月のダイヤ改正時に定期運行から引退。
  • ICE T : ペンドリーノの車体傾斜システムを採用した高速電車で、7輌編成の411形と5両編成の415形の二種類がある。なお、ICT Tに類似するICE TD高速気動車も存在するが、そちらの車体傾斜システムはシーメンスが開発したものであるため、厳密にはペンドリーノではない。

フィンランド

ポルトガル

スペイン

スロベニア

イギリス

チェコ

ポーランド

  • ED250(ポーランド国鉄): 2014年から運行を開始したインターシティ用の車両でETR610がベースとなっている。

中華人民共和国

  • CRH5中国国家鉄路集団):中国国鉄第6次在来線スピードアップのために、フランスのTGVを製造したアルストム社と提携して導入した高速鉄道車両である。最高営業速度250km/h。

今後の予定など

その他、ルーマニアでの導入の動きがある。必ずしも高速新線を必要とせずに、安価に高速化が図れることから、今後も勢力を拡大するものと思われる。

関連項目

脚注

  1. ^ この当時、フィアットの鉄道車両製造部門はフィアット・フェロヴィアリア(Fiat Ferroviaria)と呼ばれ、ジャンニ・アニェッリが国立サヴィリアーノ協会ワークショップ(Società Nazionale Officine di Savigliano. SNOS)へ段階的に増資を行い、フィアットがその経営権を完全に支配した時期にあたる。2000年にフランスのアルストムがフィアット・フェロヴィアリアの株式を51 %取得してアルストムグループ傘下となり、その後フィアットグループは鉄道車両と電機機器の製造から撤退し、鉄道車両部門は2002年にアルストムによって買収された。
  2. ^ 『電車基礎講座』、p.152
  3. ^ 『世界の高速鉄道』、p.291
  4. ^ 『世界の高速鉄道』、p.292

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