ゲーム内課金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 18:50 UTC 版)
「Games as a Service」の記事における「ゲーム内課金」の解説
GaaSという言葉がよく使われるようになったのは、ゲームの無料化(Free-to-play)が進んだ後からである。その背景にはマイクロトランザクション(アイテム課金)の一般化がある。マイクロトランザクションは少額課金のことで、メーカー側にとっては定期的かつ小出しでアイテムや追加コンテンツを提供して、継続的に収益を上げる合理的なビジネスモデルである。またプレイヤーにとっては支払いを1回で済ませることができるほか、自分の好きなゲームが時代性を維持し、十分なサポートを受け続けていることを実感できる。この個人の実感が口コミとして他のプレイヤーに広がることで、メーカーの目的も概ね達成される。 ルートボックス、いわゆる「ガチャ」はマイクロトランザクションの一種である。その中身には当たりと言える価値を持つものやハズレのものが存在し、それはいわば「くじ引き」である。お金を払ってするくじ引きはギャンブルに該当する可能性があるし、当たり外れを換金できる手段があれば賭博、さらにはオンラインカジノではないかという疑惑を持たれることとなる。換金手段の有無、賭博目的のプレイヤーが出現するかどうかという問題が、日本でも議論の対象となっている。また、ゲームは未成年も楽しむものであるから、彼らにお金を費やさせる仕組みを提供すべきでないという意見もあり、以上を合わせて世界中で調査・議論されている。 これらの問題に対し、各国政府は様々な反応を示している。アメリカ合衆国では、ハワイ州の州議会議員Chris Leeがギャンブル要素を含むとするゲームを規制する法案を策定した。ハワイ州ではルートボックスシステムを持つゲームをギャンブルと認定しており、同議員はこの流れをアメリカ全土に広げる考えを示した。ベルギーでは、EAの『スター・ウォーズ バトルフロントII』や米国のブリザード・エンターテイメントの『オーバーウォッチ』におけるマイクロトランザクションについて、早くからギャンブルの可能性を指摘して調査を開始した。当局がギャンブルに該当すると述べた一方で、公共放送RTBFがまだ調査中と報じるなどベルギーでは情報が錯綜した。ニュージーランドでは、ギャンブル規制を担当する内務省がルートボックスについてギャンブルに該当しないとした。内務省のTrish Millwardは、今後もこの問題に注目していくと述べた。中華人民共和国では、『バトルフロントII』のリリース以前からルートボックスの確率表記を法律で義務づけていた。その意味で、中国はこの問題の最先端を走っていると言える。 ゲーム業界では、米国のゲーム会社テイクツー・インタラクティブの会長Karl Slatoffや同国のビデオゲーム団体エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)が合法性を主張している。その一方で2017年、業界は要人や専門家などからなる委員会National Committee for Games Policy(NCGP)を組織し、政府への提言を行っている。NCGPはシンクタンクNCGP ITKや自主規制組織NCGP SROなどを設立し、具体的な行動を始めた。 課金したプレイヤーは課金しないプレイヤーより大幅なアドバンテージを得られるため、これをPay-to-win(支払って勝つ)という。米国のエレクトロニック・アーツ(EA)のFIFAシリーズはその一例としてよく例示される。本作はソフトの購入に数十ドルかかる上に、優秀な選手を入手するために有料パックを購入しなければならないことが欧米プレイヤーの不満の対象となっている。また米国のエンターテイメント会社ワーナー・ブラザースの『シャドウ・オブ・ウォー(英語版)』では、要塞を防御するための強いキャラクターが有料でしか手に入らない。もちろん、課金要素の中には新たな衣装など、ゲームプレイにアドバンテージを与えないアイテムもある。しかしながら、完成品としてゲームを購入しているのに追加の出費を求めるシステムに違和感を覚えるプレイヤーが少なくない。『バトルフロントII』はルートボックスのランダム性が特に問題視されたゲームである。本作のキャラクターを強化するアイテムはルートボックスで入手できるが、あるプレイヤーの計算によると、すべてを入手するためには4,528時間プレイするか、有料のゲーム内通貨が2,100ドルも必要とされた。ソーシャルブックマークサービスredditにおける本作のスレッドは炎上し、EAは単価の値下げなどランダム性の緩和に取り組んだ。しかし騒動は収拾せず、本作の課金システムは一時中止に追い込まれた。 こうしたユーザーの声に、業界もセンシティブになっている。米国のソフトウェア会社AppleはApp Storeで配信されるタイトルについて、ルートボックスで排出されるアイテムの排出率の開示を義務づけた。米国のゲーム会社Playsaurusは『Clicker Heroes 2(英語版)』において、課金中毒のプレイヤーから収益を得ることを望まないと述べ、本作をFree-to-playから売り切り型へ移行した。また米国のid Softwareの『DOOM』において、プレイヤーがジョークとして、本作にルートボックス要素を追加するModを作成するなど、この問題はプレイヤー間でも大きく取り上げられている。
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