オベチェとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 建築・不動産 > 外材一覧 > オベチェの意味・解説 

オベチェ


アフリカから輸入される木材多くは、輸送距離が長いため、材面の美し高価な木材選ばれていますが、その点からみると、かなり違った意味で輸入されているのでしょう。この木材は、いわゆる美し木材ではなく、材面はむしろ特徴が非常にない、しかも軽軟な木材です。
西アフリカ広く分布しており、ギニアからカメルーンわたってみられます。どちらかというと典型的な熱帯降雨林樹種ではなく降雨林と半落葉樹林中間地帯にある河に沿った地域および放棄され農地跡などに生育し優勢になっている樹種です。大型樹木で、大径の、しかも形のよい丸太がより多く得られるために、一般用内の樹種として優れてます。

木材
辺材心材の差はほとんどなく、ほとんど白色から淡黄白色です。軽軟で、気乾比重は0.38程度です。したがって加工取扱い易い木材いえます塗装の色の仕上り均一にようとする時にはこのような淡色木材は大変有利な材料となります。かっては、合板板として使われいましたが、今日では均一な着色出来るため、着色したスライスドベニヤとして利用するようなこともされています。大径で形のよい丸太得られるため、製品とした際の歩留りがよいのも、この樹種特徴いえます。耐朽性は低く青変菌の害をうけ易いので、乾燥早くする必要があるでしょう

用途
やや軽軟で淡色木材必要な用途には好まれています。建具合板などが知られています。ヨーロッパ製の女性ハイヒールでその踵の部分がこの木材出来ているのをご存知でしょうか。軽軟であることを上手く利用したでしょう


オベチェ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/10 23:07 UTC 版)

オベチェ
ガーナで採取されたオベチェの標本。
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ群 Malvidae / rosid II
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Helicteroideae
: オベチェ属 Triplochiton
: オベチェ T. scleroxylon
学名
Triplochiton scleroxylon K.Schum.
シノニム
  • Samba scleroxylon (K.Schum.) Roberty[2]
英名
African whitewood, African maple

オベチェ[3][4][5][6][7][8]あるいはオベチュ[9](obeche; 学名: Triplochiton scleroxylon)とは、アオイ科(旧アオギリ科)の落葉高木の一種である。西アフリカの主にギニアからカメルーンにかけて自生し(参照: #分布)、西アフリカで産出する材木の半分を占める[9]。特徴の一つはカエデのような形状の葉であり(参照: #特徴#オベチェ属)、また材木は白っぽい色合いで加工が容易であり、内装家具彫刻などの用途がある(参照: #利用)。ガーナでは伝統的な紋様(アディンクラ・シンボル)の一つに本種の種子にちなむものが見られるが、この紋様はガーナ以外の場所でも使用されている(あるいはそう推定される)例が複数見られる(参照: #民俗・ポップカルチャー)。

オベチェというのはナイジェリアエド語に由来する呼称である[10]が、本来のエド語の発音では [óʋɛxɛ̀] といい、「オヴェヘ」に近い発音である(参照: #諸言語における呼称)。カメルーン周辺での呼称からアユース(ayous)[7][11][注 1]コートジボワール等での呼称からサンバ(samba)[12][5]とも呼ぶ(参照: #諸言語における呼称)。日本においてはアユースの名で取引されていることが多い[8]アフリカスオウと訳された例も存在する[10]

木材としては軟らかい部類であるが、それにもかかわらずギリシア語で〈硬い材〉を意味する種小名 scleroxylon がつけられている[13]

分布

ギニアシエラレオネリベリアコートジボワールガーナトーゴベナンナイジェリアカメルーン赤道ギニアガボン中央アフリカ共和国コンゴ共和国コンゴ民主共和国に分布する[2]

生態

サバンナや古い二次林に見られ、半落葉林の第一級高木である[12]。ガーナでは落葉林で極めてよく見られる一方、湿潤地域では極めてまれであり、二次林で急速に生長する[14]

特徴

胸高直径1-1.5メートル[6]の大径木で、樹冠は小さく密である[12]。落葉性、樹幹はまっすぐで高さ65メートル以下、老木になると縦溝が見られるようになる[9]。樹皮は灰色から橙褐色、鱗状になる[9]。樹皮と材との間から明褐色でゼラチン状の樹液がしみ出し、青く変わる[12]板根は高い[12]

葉は掌状裂の単葉[12]互生、広卵形から3角形、葉の1/3程度まで切れ込みがあり、裂片は5-7[9]葉柄は長い[12]

花は短い円錐花序(落葉期に集散花序[12])で多少とも皿状で白色、花弁の基部は赤紫色である[9]。芳香がある[12]

果実は1つづつの水平翼のある5分果である[12]

利用

オベチェ材
オベチェ材

オベチェからは木材が得られる。外観は辺材心材もほぼ区別がなく淡黄白色から淡黄色で[6]木肌は非常に粗く、直通な材であるが柾目で軽い交錯木理をなし、細かい斑が出て光沢を見せる[11]

ベルリンで見世物にされたナイジェリア産オベチェ材(1932年1月)

材質は軽軟で収縮も小さく、湿度変化にも変動が少ない[11]気乾比重は0.32-0.49[7]、乾燥は非常に早く容易で、裂けや既存のひびの拡大もないが若干ねじれが生じることがあり、また湿度の高い環境下で鉄化合物と接触すると青色染色を起こしてしまう[6]。柔らかいが目が詰まっているために繊維が壊れにくく、木口がボロボロにならない[7]曲げ強さ[注 2]、圧縮強さ[注 3]は低く、剛性[注 4]、耐衝撃性[注 5]も極めて低い[6]が、軽軟な材のわりにはしなやかな方である[11]。蒸し曲げに対する適性は中庸から低度である[6]。加工時に細かい木粉が舞い上がって喘息症状を起こす恐れがあるためマスクを着用するなどして作業に臨むことが強く推奨される[11]。しかし加工はしやすく個体差も感じられないため建築材に向いている[7]。手道具でも機械でも加工は容易であり[6]ロクロを使用する場合はサクサク削れる[7]。刃先を鈍磨させる性質もわずかしかなく、切削の際には刃先を鋭く研摩したものを浅い角度で用いることが推奨される[6]。接着も塗装も良好で[11]、釘打ちも容易であるが釘着性は低い[6]。辺材はヒラタキクイムシ[注 6]の害を受けやすいが透水性があり、保存薬剤を吸収してくれる[6]。一方、心材は腐朽しやすく保存薬剤による処理も困難である[6]

耐久性も強度も重要でない場所で、白木家具造作、内装横木引き出しの桟木や裏板、キャビネットの骨組み、内装建具、モールディングオルガン用スライダーレス共鳴板、模型製作に用いられ、さらに青色染色を起こしてしまったオベチェ材も象嵌職人に愛好されている[6]彫刻にも適しており、長尺ものなど大きな板材を得ることが可能である[7]。ロータリーカットされて積層材の芯材や合板の裏板に、また縞模様の美しいものはスライスカットされて化粧単板にされる[6]。ほかに箱材や額縁にも用いられる[11]ポプラ材の代用となる[12]

民俗・ポップカルチャー

ことわざ

ナイジェリアヨルバ語でオベチェは arère と呼ばれ、以下のようなオベチェが登場することわざが存在する。

  • Àràbà tún ara mú, odò ńgbé Arère.

これは文字通りには「川がオベチェを流してしまったらカポック(別名: パンヤノキ)は帯を締めるはずだ」と訳されるが、この西アフリカ産の立派な2種の木が用いられたことわざの含意は、用心するために状況の変化を評価し直し続けることの必要性を説いたものである[17]。つまり、自分の仲間に起こった良いことあるいは悪いことは自分自身にもそのうち起こり得るので身構えておくべきということである[17]

ワワ・アバ

アディンクラ・シンボルの一つ、ワワ・アバ
アフリカネイションズカップ2008公式試合球「ワワ・アバ」

ガーナの現地語の一つであるアカン語でオベチェはワワ(wawa)と呼ばれる[18]が、喪服などに用いられる布アディンクラ(adinkra)の柄(アディンクラ・シンボル)の一つにワワ・アバ(アカン語: wawa aba)というものがある。ワワ・アバとは文字通りには〈ワワの種〉を意味するが本種の種子は非常に硬く[18]、このシンボルは〈頑丈さ〉、〈忍耐〉を表す(Willis (1998:196–7))[19]。このシンボルはジャマイカの首都キングストンのエマンシペーション・パーク(: Emancipation Park、〈解放公園〉)の一角にも装飾として用いられている[20][注 7]。また、マーベルシリーズにおいて架空のアフリカの国・ワカンダ王国の王女という設定のキャラクターシュリが、映画『ブラックパンサー』においてワワ・アバと見られる紋様入りのシャツを着用して登場するシーンが存在するが、この紋様について衣裳デザイナールース・カーターは、「このアディンクラ・シンボルは〈目的〉を意味し」、「シュリは確かにワカンダ王国においてある目的を持っています」と説明している[22]

なお、ワワ・アバの名称はガーナで開催されたサッカー大会・アフリカネイションズカップ2008の公式試合球の名にも用いられている (de:wawa aba

諸言語における呼称

アフリカの現地語には複数の言語名を持つものもある。Lewis et al. (2015) も参照。

ガーナ:

ガーナおよびコートジボワール:

カメルーン:

  • バカ語(Baka): gbado(バド)[27]
  • 言語名不明: ayous[5]

コートジボワール:

コートジボワールおよびギニア、リベリア:

コンゴ民主共和国(旧ザイール):

  • 言語名不明: ayous[5]

中央アフリカ:

  • 言語名不明: bado, ayus[5]

ナイジェリア:

リベリアおよびギニア:

  • マノ語(Mano, Manon): zogolo[25]

リベリアおよびコートジボワール:

オベチェ属

オベチェ属Triplochiton)は World Flora Online[31] や Hassler (2019) によれば2種が認められているが、よく知られているものはオベチェのみである[5]。もう一方の種は Triplochiton zambesiacus Milne-Redh. というもので、ザンビア南部およびジンバブエに分布する[2]

葉の形はヨーロッパ北アメリカカエデシカモアのものに似て掌状に裂け、果実には翼が見られる[28]

属名 Triplochitonギリシア語で〈3つの覆い〉を意味し、花の形にちなむものである[28]

脚注

注釈

  1. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 (1994) によれば、カメルーンの材木市場の名に由来する。
  2. ^ 板材の両端に力を加えて割れる時の力を測定したもの[15]
  3. ^ 木口に加えられる荷重に耐えられる能力のことで、短柱や支柱などに用いられる木材にとっては重要な要素となる[15]
  4. ^ 木材の弾力性を表す尺度で、曲げ強さとの関連で考慮される[15]
  5. ^ 木材の靭性の尺度のことで、急に加えられる衝撃荷重に対する抵抗力を表す[15]
  6. ^ Lyctus brunneus をはじめとするLyctus属の甲虫類などを指す[16]
  7. ^ ジャマイカへは1509年にはスペイン人たちにより、1655年以降はイギリスによりアフリカからの奴隷が連行されたが、記録からはアカン人英語版がその大部分を占めていたことが窺われる[21]

出典

  1. ^ African Regional Workshop (1998).
  2. ^ a b c Hassler (2019).
  3. ^ 須藤, 彰司「我が国の市場における輸入材(IV)完」『木材工業』第24巻第9号、1969年、12頁。  (国立国会図書館デジタルコレクション)
  4. ^ 堀田・緒方 (1989).
  5. ^ a b c d e f g h 平井 (2001).
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m ウォーカー (2006:183).
  7. ^ a b c d e f g 河村・西川 (2014).
  8. ^ a b 坂本・西川 (2016:44).
  9. ^ a b c d e f リズデイルら (2007).
  10. ^ a b 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 (1994).
  11. ^ a b c d e f g 村山 (2013).
  12. ^ a b c d e f g h i j k l 熱帯植物研究会 (1996).
  13. ^ 緒方 (1994:63).
  14. ^ a b c d e f g h i j k Irvine (1961:184).
  15. ^ a b c d ウォーカー (2006:182-3).
  16. ^ ホルガー (2000:181).
  17. ^ a b Faleti (2011).
  18. ^ a b c Azindow (1999).
  19. ^ Jackson (2000:1)
  20. ^ Désir (2014).
  21. ^ Osei-Mensah Aborampah (2005:129).
  22. ^ Kim Renfro (2018年5月9日). “This simple detail in Shuri's 'Black Panther' costume was a hidden message to the audience”. INSIDER. 2019年4月26日閲覧。
  23. ^ 现代科学技术词典 (1980).
  24. ^ Kröger (2001:386).
  25. ^ a b c d e f g h i j Schnell (1950).
  26. ^ a b c d e f g h i j k l m n Kerharo & Bouquet (1950).
  27. ^ 安岡 (2004:57).
  28. ^ a b c d e f g h i Keay (1989:120).
  29. ^ Agheyisi (1986).
  30. ^ Abraham (1958).
  31. ^ World Flora Online, http://www.worldfloraonline.org/, 28 Apr 2019.

参考文献

英語:

ドイツ語:

フランス語:

日本語:

中国語:

関連文献

ドイツ語・ラテン語:

英語:

  • Willis, W. Bruce (1998). The Adinkra Dictionary: A Visual Primer on the Language of Adinkra. Washington, DC: The Pyramid Complex 

関連項目

  • Milicia excelsa - ガーナやナイジェリアなど主に西アフリカ諸国に生育しイロコという材木が得られるクワ科の高木で、地域を跨いで様々な伝承が見られる。

外部リンク


オベチェ

出典:『Wiktionary』 (2021/06/18 09:11 UTC 版)

名詞

オベチェ[1][2]

  1. アオイ科 (wp)(旧アオギリ科オベチェ属落葉高木一種学名: Triplochiton scleroxylon白っぽく加工しやすい得られる

語源

ナイジェリア現地語の一つであるエド語 ovbẹkh より。

類義語

翻訳

脚注



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オベチェ」の関連用語

オベチェのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



オベチェのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日本木材総合情報センター日本木材総合情報センター
©Japan Wood-Products Information and Research Center 2025 All Rights Reserved, Copyright
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのオベチェ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryのオベチェ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS