イギリスの鉄道について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 05:21 UTC 版)
「汽車のえほん」の記事における「イギリスの鉄道について」の解説
邦訳が初めて出版された際、第1巻冒頭に原作者のウィルバート・オードリーから日本の読者へのあいさつ的な文章があり、その中に「イギリスの機関車は日本のものと違うかもしれません」と断り書きがある。これについて蒸気機関車時代のイギリスと日本の違いについて高畠潔の『続 イギリスの鉄道の話』第4章「イギリスの鉄道『1ダースの不思議』」より、頭に入れておくと物語が分かりやすくなる点についてまとめておく。(カッコ内は『汽車のえほん』で関係のあるお話) 前照灯がない 線路周囲に柵があるのが前提で、道路も立体交差が最初から多く、当時の灯火の明るさ及び機関車の制動距離的に乗務員側が障害物を発見しても無意味と考えられ、よって前照灯の必要性が薄く基本的に付いていない。トーマス達が夜間走行シーンでつけているランプはあくまで標識灯である。 (逆になるが、第27巻第3話(TV版84話「さかなにはきをつけろ」)は補機にヘッドライトのない事で起きた事故の話である。) 鉄道黎明期の機関車は屋根がない 鉄道黎明期の蒸気機関車において、機関士たちはボイラーの後ろに野ざらしでそのまま乗っていた。そのうち排煙や風雨から身を守るように遮風板(weatherboard)という覗き窓がある板を前部に立て、タンク機関車は後ろに進むこともあったのでこれを後にも立てて、それをつないだのが屋根の始まりである。テンダー機関車はさらに後の時代まで屋根がなかった機体が多い。 イギリスの蒸気機関車で屋根が付いたのは1860年のストックトン&ダーリントン鉄道のブローアム号とロウサー号が初だが、この2両はどちらかというとアメリカ風な造形の密閉式キャブで、窮屈だと機関士たちから評判が悪く、次から同鉄道も屋根は残したものの側面の窓がない開放的な構造に戻しており、他の鉄道でも屋根が小さく窓がなくカーブした切れ込みだけのサイドパネル、工法は開けっ放しというスタイルがイギリスの基本になった。 (21巻のスカーロイの回想シーンで、当初屋根がなく、その後改造でキャブが付いたことなど。) 内側シリンダーも好まれた 初期の機関車である1830年のプラネット号で、シリンダーを煙室の下につけると車体の中心に近いので圧力の偏向が小さく摩擦抵抗が減る(軸受けの過熱が防げる)ことと、保温効果がある事が分かったので、見た目もすっきりする内側シリンダー機を好む鉄道も多かった。(車軸の強度のためクランク軸がいらない外側シリンダーにこだわる人もいた。) (トーマスやエドワード筆頭の内側シリンダー機関車達。他に第24巻2話「オリバーの大しっぱい」で転車台に落ちたオリバーの内側シリンダーの構造が分かる挿絵がある。) ねじ式連結器を使っていた イギリスでは鉄道がいくつもの私鉄で構成されていた時代が長く、荷主所有の私有貨車も多かったので、島国で他国との列車連絡がなくても、自動連結器への交換を日本のように足並みをそろえて行うことが困難だった。 なお、現代の鉄道においても、イギリスを含むヨーロッパ各国や南米諸国では、鉄道会社・車両メーカーが国単位で多数存在し、それらを結ぶ国際線向けの自動連結器規格の統一が困難である都合上、ユニット単位で編成される電車・高速車両以外はねじ式連結器が使用されている。 また、ねじ式連結器(screw coupling)以前に「鎖式連結器(chain coupling)」と「スリーリンク・カップリング(three-link coupling)」という連結器も使用されており、前者はフックが「鎖の端」についているもので、これを相手のバッファービームにかけるもの、スリーリンクはフックがバッファービームに固定され、ここに三連の鎖をかけるもので、後に出現したねじ式連結器もこれと互換性があったので、旧式貨物や入替機では蒸気機関車末期でもこれを使用してたものがある。 ねじ式連結器はスリーリンク・カップリングの中央の鎖の輪をネジに変えて長さを調節できるようになったもので、これにより引き出し時の衝撃が起きにくくなっている。 (第21巻4話「エドワードのはなれわざ」では、このネジを緩めることで1台ずつ引き出せるようにして対処している。) ノン・コリダー・コンパートメント客車 縦貫通路(corridor)がなく、乗車する扉から個室に分かれている客車をノン・コリダー・コンパートメントという。 この方式の客車では乗客は車両全体の移動ができず、車掌も客車外側を伝って検札しないといけないため不便で、イギリスでも次第に片側面に通路のあるサイドコリダー・コンパートメント客車やプルマンのオープン式客車(中央に通路があって個室がない)に置き換えられていった。 しかし、近距離通勤用に限ればラッシュ時にもドア数が多く、客の乗降が速いので使われ続け、2005年の時点でも客車ではないがノン・コリダー・コンパートメントはロンドン南部の路線の電車に現存していた。 (アニーやクララベルなどがノン・コリダー・コンパートメント客車にあたる。)
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