イオニアの知的活動とヘロドトスとは? わかりやすく解説

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イオニアの知的活動とヘロドトス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 07:27 UTC 版)

ヘロドトス」の記事における「イオニアの知的活動とヘロドトス」の解説

上に述べたように、ヘロドトス未だ歴史という概念存在しない時代において、後世その端緒みなされる文筆活動行った。この背景には古代ギリシアイオニア地方活発化していた知的活動があり、ヘロドトス仕事もまた当時のこの潮流から孤立したものではない。前6世紀頃のイオニアはその主邑ミレトス中心として古代ギリシア人知的活動一大拠点となっていた。当時イオニア哲学者呼ばれる知識人多数輩出した。彼らの中には万物構成する根源追求したタレスアナクシマンドロスアナクシメネス等がいる(ミレトス学派)。またエフェソス出身ヘラクレイトスや、サモス出身数学者ピュタゴラスコロフォン出身クセノファネス、そしてヘロドトス同時代それ以降の人であるコス島出身ヒポクラテスなどの名も現代に伝わる。 こうした哲学者たちが生きた時代ギリシア人たちに過去の出来事伝え人生規範示し、「歴史」として伝えられたのはホメロス以来神話叙事詩であった古代多く地域と同様、これらの中では神々と人間世界連続しており、神そのもの超人的な力をもつ英雄たちが王家祖先として語られた。イオニア哲学者たちはこの神話叙事詩の語る世界、そしてそれ自体価値疑問投げかけた。それは神話内に登場する系譜矛盾追及出来事相互関係整合性確認、そして尊敬されるべき神々が行う「人の世破廉恥とされ非難の的とされるあらんかぎりのこと」(クセノファネス)に対す倫理的疑問表明であった。 また同じ時代には、ロゴグラポイ呼ばれる著述家たちが登場した。彼らは諸ポリス伝承関心持ち旧来からの韻文ではなく散文著述活動行っていた。彼らは「歴史家」の登場繋がっていく文学的潮流中にあった人々であり、その作品はほとんど現存していないものの神話から始まる諸地方伝承など記していたと考えられるこの中でも「地理学の祖」とも言われるミレトスのヘカタイオスは、現存していないものの『系譜(Genealogiai)』、『探求Historiai)』という著作があったことが知られており、その巻頭文章と伝わる以下の文章は後のヘロドトス執筆姿勢通じるものとして重視されるミレトスの人ヘカタイオスはかく語る。以下に記すのは、わたしにとって真実であると思われるところである。なぜなら、わたしの見るところ、ギリシア人の話は豊富であるが、笑うべきものであるから。 —ヘカタイオスヘロドトスが生を受けたハリカルナッソスイオニア南端部に位置していた。ヘロドトス親類詩人がいることや、その著作内容から考えてこうした知的に豊かな風土影響受けて成長した考えられるヘロドトスが自らに先行するイオニア哲学者たちの議論触れ、それを良く理解していたことは近現代ヨーロッパ学者たちによって早期から指摘されており、ヘロドトス『歴史』イオニアのより大きな知的文脈中に位置付けられている。 また、彼の思考法にはイオニア置かれていた独自の歴史的背景基盤を持つと想定され得るものがあることも指摘される例えヘロドトス『歴史』には、地理上の区分基づいて世界アジアヨーロッパ2区分(またはリュビア加えて3区分)する分類法各種比較行っている記述存在する。これはイオニア当時一般的に採用されていた分類法であるが、ある部分ではこの分類法の欠点批判し実態一致しないとも批判している。そしてさらにギリシアヨーロッパともアジアとも異なる独自の世界として捕らえようとしている記述があることが指摘されるこのようなヘロドトス思考法類似した例が、ヒポクラテス作品伝えられる空気場所について』の中にも登場する。この作品において気候環境がその地に住む人々の健康や性格影響するという考え方採用されており、それに基づいてアジアヨーロッパ住民違い論じられている。この中でヒポクラテス挙げているヨーロッパ住民とはスキタイ人であり、言外ギリシアヨーロッパ区別するような記述法を取っている。このようなギリシアアジアともヨーロッパとも異な別個の領域として捉える考え方は、ギリシア人一般的な地理区分ではアジア分類され歴史的にアケメネス朝ハカーマニシュ朝ペルシア帝国)の支配下にあったイオニア地方出身人々の独特の立ち位置の中から醸成されたものであるとも考えられる

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