アメリカでのテレビ映画
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「テレビ映画」の記事における「アメリカでのテレビ映画」の解説
1941年にNBCが初の商業放送を開始して以降、まだビデオテープレコーダ (VTR)の無い時代で全てが生放送の時代がしばらく続くが、戦後世相が落ち着いてきた1940年代の終わり頃から、バラエティ番組や音楽番組以外にテレビ映画の製作が本格化した。しかし当時の大手映画会社のテレビに対する評価は低く、所属する俳優をテレビに使うことはなかった。テレビの前で1時間も1時間半もじっと小さいブラウン管を見つめ続けることは無いと考えていたからである。したがって初期のテレビ映画の主演スターは劇場用映画で使われることは無く、また知名度のある俳優がテレビに出てくることは落ち目になったからと揶揄される時期があった。 最初は15分番組での帯番組として、やがて30分番組枠で毎週同じ時間帯・同じチャンネル(same time , same channel)で翌週も続けていく形態が普通となった。これはアメリカでは時差があるためにフィルム撮影した映画なら同じ日に同じ時刻に同じ内容で放送できたからであった。 当初は子ども対象のものが多く、「ローン・レンジャー」「シスコ・キッド(英語版)」「スーパーマン」などが大手映画会社ではなく独立プロダクションが製作したものが多かった。これらに合わせて戦前に製作された子ども向けのB級映画を再編成した番組も作られた。 そして、1948年にアメリカの連邦最高裁判所の判決で、ハリウッド映画のメジャースタジオが独占禁止法に触れて、制作と興行が切り離されて、それまであったB級映画の製作が出来なくなった頃から、当時のB級専門の製作会社がどっとテレビ映画の製作に乗り出してきた。これらのテレビ映画が西部劇・コメディ・ホームドラマ・私立探偵・刑事物などのジャンルの作品を製作して放送されていった。大半が30分番組の連続物で1時間番組は無く、他に90分番組が作られたが、これは連続物でなく毎回違う内容の単発ものを製作していた。 やがて1950年代半ばになると大手映画会社もテレビ映画に進出してきた。ここから1960年代半ばまでが、アメリカのテレビ映画の黄金時代と言われる時代である。ワーナー、20世紀FOX、コロンビア(製作は当時子会社のスクリーンジェムズ)、MGMなどが加わった。これには当時劇場用映画が大作主義をとって、1本の超大作に製作費を注ぎ、製作本数の激減という状況になって余剰の人員をテレビへ投入せざるを得ない内情もあった。しかし、この頃からテレビ映画で育った監督や俳優がその後60年代に入ってから映画の世界で大活躍して有名監督や大スターになっていった。 そして30分番組がやがて60分番組に拡大して、番組も内容が求められるようになった時に、1961年5月に当時ケネディ政権発足と同時に連邦通信委員会委員長に就任したニュートン・ミノー氏が「アメリカのテレビは一望の荒野である」と発言して当時の3大ネットワークがテレビ映画番組の再検討を迫られる事態となった。その影響で西部劇が下火となり、医者・弁護士物・戦争アクション・宇宙ファンタジーなどのジャンルの番組を並べたが次第に人気を落としていった。 ここで一つの問題が起こった。1960年代に入って、高いコストを避けるためヨーロッパなどで製作することが多くなり、ハリウッドの俳優の出演機会が減っていったとともに、テレビ映画が1本の作品で毎週撮影し続けるため、同じレギュラー陣の顔ぶれでストーリーを書き続けていて、マンネリ化と企画難、出演する俳優が限定され、そして製作費の高騰に悩まされていった。これに対する打開策として、テレビ局と映画会社が共同で製作費を出して単発のテレビ映画を2時間番組の中で放映して、毎週違った作品を作り、放送後このフィルムを映画会社が権利を持って国内の二番館への劇場公開して、そして海外への輸出(輸出先での劇場公開が前提)する新しいシステムを作った。これがテレビジョン・ムービー(TVムービー)またはテレフィーチャーと呼ばれ、1964年に第1作としてドン・シーゲル監督の「殺人者たち」が製作された。このTVムービーは1970年代に入ると多数製作されて、その中からスティーヴン・スピルバーグ監督の処女作となる「激突!」も該当した。 毎週同じ顔ぶれの内容で放映されるTVシリーズと、そして毎週でなく一定の期間で放映されるものをTVミニシリーズとして放送されるようになった。やがて一気に放映するスタイルとして1977年秋に天才と呼ばれた編成マンのフレッド・シルバーマンが「ルーツ」を毎日60分ごとに1週間通して放映するケースを編みだした。こうしてTVシリーズ、TVミニシリーズ、TVムービーの形態として、現在もテレビ映画が制作され続けている。
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