アガット湾(昭和湾)への上陸
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「グアムの戦い」の記事における「アガット湾(昭和湾)への上陸」の解説
アガット湾には第1臨時海兵旅団の2個海兵連隊と砲兵隊が接近してきた。この地を守るのは第38連隊第1大隊の約1,000名であったが、アサン湾での上陸作戦同様に、上陸支援の激しい艦砲射撃と空爆が加えられた。それでも第一大隊は海岸を目指してきた300隻の上陸用舟艇に山砲・速射砲で砲撃を集中し十数隻の上陸用舟艇を撃破した。 しかし、沖合3,000mの至近距離に配置されていた戦艦2隻、巡洋艦3隻を主軸とする支援部隊が、砲撃した日本軍の砲兵陣地の場所を割り出し、正確な艦砲射撃を加えてきた。戦艦の巨弾に対し歩兵・野砲は無力であり、大隊の砲兵はたちまちの内に沈黙した。その後にアメリカ軍は戦車の支援の下で上陸し、大原大隊長率いる第一中隊に攻撃をしかけてきたが、大原大隊長は軍刀を片手に陣頭指揮するも戦死した。その後大隊は壊滅状態に陥り、北方を守る第2大隊に残存兵力が合流した。 同日には、海岸線で第1大隊を壊滅させたアメリカ軍は、オロテ半島とアプラ方面を守備していた第2大隊にも迫り、第2大隊は一部で速射砲や山砲によりアメリカ軍を撃退したが、損害甚大で夕刻までには主要な火器はほとんど破壊され、死傷率は80%にも達した。 大損害を被った第29師団第38連隊の連隊長末長大佐は、もはや防衛戦による上陸阻止は困難であると判断し、残存戦力による夜襲を決心した。夜襲は第38連隊の残存兵力を結集して行なう事としたが、(ただし第2大隊は連絡網が遮断され、連絡が取れなかった為不参加)但しこの夜襲は末長連隊長の独断作戦であり、直属の第29師団を初め上層部には何の相談もなされていなかった。連隊長は総攻撃決定後に第29師団司令部に連絡したが、高品師団長からは、残存戦力を速やかに結集の上で背後の天上山縦深陣地に撤退し持久戦行い、師団主力の支援を行うようにと攻撃を中止するように指示があったが、末長連隊長は「既に戦術も戦力もない。これ以上生きるのも無駄であろう、自分の希望を貫徹させてくれ」と師団長に懇願し翻意しなかった。 アメリカ軍は日本軍の夜襲対策として、これまでの経験則より夜は照明弾を絶え間なく打ち上げ、日本軍の夜襲が容易に接近できないような対策を講じていた。そのような状況下で強引に突撃した第38連隊は、アメリカ軍の集中砲火を浴び死傷者が続出した。最大の攻撃は第3大隊による橋頭堡に対する攻撃で、日本軍は、戦車第9連隊の95式軽戦車5両を先頭に突撃してきた。M4中戦車やバズーカの集中砲火で戦車は全滅したが、第3大隊長長縄大尉は率先先頭に立って21時には第一線陣地を突破、22時には第二線の重火器陣地も撃破、その後4時には奥深くのアメリカ軍上陸点の船着場の陣地まで達したが、そこで大隊長・中隊長などが次々と斃れ、残存兵力は夜明けとともに撤退した。 また、一部の部隊は第4海兵連隊の防衛線を突破し砲兵陣地まで突入した。その激しい戦いでアメリカ軍も死傷者が続出し、ある小隊は兵員が4名にまで減少している。 また、北方より上陸した第22海兵連隊方面でも小部隊による日本軍の夜襲が断続的に続けられ、アメリカ軍は69名の戦死者を出したが、日本軍遺棄死体は390名を数えた。末長連隊長は部隊先頭に立って攻撃部隊を指揮してきたが、海軍砲台の小高い丘の上で銃撃を浴びて戦死した。この夜襲失敗により第38連隊は壊滅し、第29師団はアメリカ軍上陸初日に主力が壊滅することになってしまった。 連絡が取れずに総攻撃に参加しなかった第2大隊(奥城大隊長)はオロテ半島を根拠地として海軍部隊と須磨第一飛行場を防衛する事としていたが、早速翌日の22日にはアメリカ軍が戦車を伴って攻撃してきた。第2大隊は海軍部隊や野戦高射砲第52大隊と協力し、肉弾攻撃と対戦車地雷で戦車5両を撃破し100名死傷などの損害を与えてこれを撃退した。 この夜に第29師団の戦闘指令所は、艦砲射撃を避ける為に後方の的野高地に移動を開始した。軍参謀長田村少将は、この2日間の戦いを顧みて島嶼防衛の戦訓を参謀次長宛に報告しているが、これが後に日本軍の島嶼防衛戦術改善に寄与することをなった。また、第31軍司令小畑英良中将は自ら連合艦隊に「願わくば、この間の事情を諒察せられ成り行きにのみ委ねることなく何らかの有効適切な措置を講ぜられん事を敢えて具申す」と何らかの救援策を要請しているが、マリアナ沖海戦で大敗した連合艦隊に既にその力はなかった。
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