アガトンの演説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 03:54 UTC 版)
続いてアガトンが、 これまでの演説者はエロースがもたらす副次的な福利ばかりを讃美し、エロースの性質自体を語らなかったので、まずそちらを先に行う。 第一にエロースは全ての神の内で最も美しい。エロースは神々の中で最年少者。常に青年と共にいるし、もし太古より彼がいたなら古い神話の神々の争いは生じていないはずだから。 またエロースは柔軟である。神々と人間の心情と魂、それも比較的柔和なそれに宿るから。 またエロースはしなやかである。いずれの魂の中にも忍び込み出で去るし、優雅な物腰をしているから。 第二にエロースは全ての神の内で最も優れている(徳を持っている)。なぜなら強制によらず、万人が万事において進んでエロースに奉仕するから。国家の君主たる国法も従う「公正」、他の快楽・情欲も支配する「自制」、勇敢なアレースすら愛によって抑えつける優越した「勇敢」を持っている。 また「智慧」も優れている。エロースは巧妙なる詩人で、何人も詩人にしてしまうほどの芸術的創作において優れた創造者である。 一切生物の創造にも関与し、射術・医術・予言術のアポローン、音楽のムーサ、鍛冶術のヘーパイストス、機織術のアテーナー、神々と人類の統治におけるゼウスも皆彼の弟子であり、かつて「アナンケー」(必然)に支配されていた神々の世界もエロースが入り来てその「美に対する愛」によってはじめて秩序立ちあらゆる善事が発生するに至った。 このようにエロースは自ら美しく優れた者であり、他の者にもまた同じような長所をもたらす。 エロースは平和、静けさ、休息、熟寝、親しみをもたらし、会合や祝祭・円舞・供牲を先導する。柔和、好意、慈悲、歓喜、温柔、華麗、優雅、憧憬、欲求をもたらす美しく優れた指導者。 という主旨の演説を行い、聴衆の喝采を受ける。
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