三省堂 大辞林 |
ぞう ざう 1 【像】
「理想とする女性の―を思い描く」
(2)神仏・人・鳥獣などの形を模して描き、また造ったもの。
(3)〔物〕 物体の各点から出た光線束が光学系によりそれぞれ対応する一点に集束するか、また一点から発散する形の光線束となる場合の、それらの点の集合。前者の場合を実像、後者を虚像という。
物語要素事典 |
像
【僧】
★1.僧と后・姫君。
『ささやき竹』(御伽草子) 左衛門の尉夫婦が十四歳の姫の良縁を願い、六十七歳の西光坊が毘沙門の法を行なって祈祷する。ところが西光坊は姫の美貌に愛欲の心を起こし、左衛門の尉夫婦をだまして、姫を長櫃に入れて鞍馬へ連れ去る。途中、関白が姫を救い出し、櫃の中へ牛を入れておくので、西光坊は、「姫が牛に化した」と驚く。西光坊は天罰で雷電に身体を裂かれ、姫は関白の妻になる。
『志賀寺上人の恋』(三島由紀夫) 女犯の罪を犯すことなく高齢に達した志賀寺上人が、美貌の京極御息所を見て恋に落ちる。上人は御息所の御所の庭に、杖にすがって一日一夜立ち尽くす。御息所が上人を御簾の前へ招くと、上人は御息所の手を押しいただき、しばらくの後に、手をほどいて立ち去る。数日後、上人が草庵で入寂した、との噂を御息所は聞く〔*『俊頼髄脳』では、志賀寺上人は九十歳であったとする。『浄瑠璃十二段草子』(御伽草子)では八十三歳とし、御息所は懐妊して、顔が六つ手が十二本ある子供を産んだ、と記す〕。
『大和物語』第105段 近江の介中興の娘が病み、浄蔵大徳が加持祈祷をするうちに、二人は情を通じてしまった。この娘は、親が大切に育て、皇子や上達部の求愛も退けて、帝に奉るつもりだったが、このことがあったため、親も世話をしなくなった〔*『今昔物語集』巻30-3に類話〕。
*僧が鬼と化して、后と交わる→〔鬼〕3b。
★2.僧と遊女。
『古事談』巻3-95 性空上人が、夢告によって神崎の遊女の長者を訪れる。長者の歌舞を前にして上人が瞑目合掌すると、長者は六牙の白象に乗る普賢菩薩と現じて光を放つ。上人が目を開けば、またもとの女人となる〔*『十訓抄』第3-15に同話。『撰集抄』巻6-10の類話では室の長者〕。
『小袖曽我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)』(河竹黙阿弥) 極楽寺の僧清心は、大磯の遊女十六夜(いざよい)と情を通じ、十六夜は清心の子を宿す。女犯の罪が発覚して清心は寺を追われ、十六夜とともに稲瀬川に身投げをする。しかし死にきれず、二人はいったん別れ別れになり、後にまた再会する→〔心中〕1。
『撰集抄』巻9-8 江口の里で時雨にあった西行が、晴れ間を待つ間の宿りを請い、主の遊女に拒まれる。西行が「世の中をいとふまでこそ難からめ仮りの宿りを惜しむ君かな」と詠むと、遊女は「家を出づる人とし見れば仮りの宿に心とむなと思ふばかりぞ」と返し、中へ入れる〔*『新古今集』巻10に贈答歌あり〕。
『たけくらべ』(樋口一葉) 十五歳の藤本信如は龍華寺の跡取息子、十四歳の美登利は遊女大巻の妹で、ともにやがては僧となり遊女となる身の上である。二人は同じ育英舎に通うが、互いを意識するようになってからは、めったに口もきかない。ある霜の朝、美登利の家の格子門に水仙の造花が差し入れてあり、その翌日、信如は僧林へ旅立った。
★3.僧と金銭。
『今昔物語集』巻14-1 比叡山の無空律師は、葬儀の費用に銭一万を僧坊の天井に隠して置いた。臨終時にそのことを弟子達に告げることができず、彼は死後、蛇となって銭にまといついた。
『夜窓鬼談』(石川鴻斎)上巻「蛇妖」 某住職の弟子が、金貨二十枚余りを寺庭の石の下に隠し、常にその金貨のことを気にかけていた。ある時、昼寝をする弟子の魂が、蛇の形となって身体から抜け出、石の上にとぐろを巻く。住職が碁笥の蓋を投げつけると、蛇は逃げる。その時、弟子は「美しい山に遊び、大きな石の上に座っていたところ、車輪ほどの板を投げつけられる」との夢を見ていた。
★4.尼僧。
『黒水仙』(パウエル他) ヒマラヤ山麓の寒村に、学校と診療所を作ってほしい、との依頼を受けて、イギリスから五人の尼僧が赴任する。しかしキリスト教国とは異なる環境で、尼僧たちの心も動揺する。病気の赤ん坊が診療所へ運ばれたが死んでしまい、「尼僧たちが赤ん坊を殺した」と村人は言う。尼僧の一人が、村にいる唯一の白人男性に恋い焦がれ、錯乱状態で転落死する。結局尼僧たちは、半年もたたぬうちに村を去る。
『尼僧物語』(ジンネマン) ベルギーの医師の娘ガブリエルは家族や恋人と別れ、修道院に入る。彼女はシスター・ルークの名を与えられ、神に仕えて沈黙と服従の日々を送る。彼女はアフリカのコンゴの病院での看護の仕事を志願し、外科医フォチュナティへの尊敬の念は恋心に近いものになる。しかし、やがてガブリエルはベルギーに呼び戻される。第二次大戦が始まり、父はナチスによって射殺される。ガブリエルは、尼僧として俗世に完全中立の立場を貫くことはもはや不可能であると悟り、修道院を出る。
*→〔憑依〕5の『尼僧ヨアンナ』(イヴァシュキェヴィッチ)。
*旅の僧と宿の女→〔言霊〕3の『道成寺縁起』・〔宿〕7bの『高野聖』(泉鏡花)。
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 ピュグマリオンは、自ら象牙を刻んで造った乙女の像に恋心を抱く。女神ヴェヌス(=アフロディーテ)が彼の思いを知り、象牙の乙女に命を与える。ピュグマリオンの口づけに乙女は目を開く。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第3話 ベッタは、砂糖・アーモンド・香水・宝石・金の糸などで若者の像を造る。愛の神に祈ると像に生命が宿り、ベッタは像を夫としてピント・スマルトと名づける。女王が彼に横恋慕して連れ去るが、ベッタは夫を取り戻し、まもなく男児を産む。
★1b.像が生きた仏となる。
『風流仏』(幸田露伴) 仏師珠運は木曽の宿で美女お辰と出会い、結婚しようとする。しかしお辰は岩沼子爵の生き別れた娘であることがわかり、二人の仲は引き裂かれたので、珠運はお辰を偲んで彼女に生き写しの観音像を彫る。やがてお辰と某侯爵婚約の報が届き、怒った珠運は鉈で観音像を打ち割ろうとする。その時、像はお辰と化して珠運を優しく抱き、二人は一緒に天へ昇って行った。
★1c.像を夫の代わりにする。神が、死んだ夫を冥府から連れ戻す。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第3章 ラオダメイアは、死んだ夫プロテシラオスに似た像を作り、これと交わった。ヘルメス神が冥府からプロテシラオスをいったん連れ戻したので、ラオダメイアは喜んだが、再び夫は冥府へ帰され、ラオダメイアは自害した。
★1d.美女の像に心をうばわれ、そのモデルの王女を妻とする。
『忠臣ヨハネス』(グリム)KHM6 老王が、「城内の一つの部屋だけは息子に見せるな」と忠臣ヨハネスに遺言して死ぬ。しかし息子の王は、禁ぜられた部屋に入り、美しい王女の立像を見て心をうばわれる。王は忠臣ヨハネスを連れて、立像のモデルである王女の住む、黄金の屋根の国へ船出する→〔無言〕1c。
★2.像を傷つける。
『黄金伝説』3「聖ニコラウス」 ユダヤ人が、聖ニコラウス(=サンタ・クロース)の像を造り、財産を守ってくれるよう願う。しかし泥棒が入ったので、ユダヤ人は怒って像を笞打つ。すると、盗品を分ける泥棒たちの所へ傷だらけの聖ニコラウスが現れ、盗んだものを返せと命ずる。
『二十四孝』(御伽草子) 丁蘭は十五歳で死別した亡母の木像を造り、生きた人に仕えるごとくしていた。丁蘭の妻が火で木像の面を焦がすと、瘡のように腫れ、膿血が流れた〔*二日後、妻の髪が落ち、妻は三年間、木像に詫びた。『蒙求』415「丁蘭刻木」などが原拠〕。
『怪人二十面相』(江戸川乱歩)「荘二君のゆくえ」~「おとしあな」 実業家・羽柴壮太郎が所蔵する、鎌倉時代作の国宝級の観世音像をいただきたい、と怪人二十面相が要求する。明智小五郎の助手で、十二~三歳になる小林芳雄少年が、観世音像と同じくらいの背格好であるので、全身を黒く塗って観世音像になりすます。小林少年は二十面相にピストルをつきつけて捕らえようとするが、地下室に落とされる。
『冬物語』(シェイクスピア) リオンティーズ王が、妃ハーマイオニの貞節を疑い、彼女を投獄する。やがて妃の死の知らせがとどき、王は、妃への仕打ちを悔いる。二十年後、妃そっくりに彫刻された立像を、王は見せられる。王は驚き、立像に接吻しようとするが、その立像は、本物の妃ハーマイオニその人であった。
『ジャータカ』第61話 百二十歳の老母が、息子を殺そうとたくらむ。息子は、等身大の木像に覆いをして床に置く。老母は斧で首を一撃して木像であると知り、倒れて死ぬ。
『菅原伝授手習鑑』2段目「道明寺」 筑紫へ配流される途中の菅原道真が、河内国の伯母のもとを暇乞いに訪れる。道真を暗殺すべく贋役人が迎えに来て、道真は輿(こし)に乗るが、後に見ればそれは木像だった。道真が自らの姿を形見として遺すために刻んだ木像が、身代わりになって輿に乗ったのであった。
★5.像の中に物を隠す。
『六つのナポレオン』(ドイル) ボルジア家の黒真珠を盗んだ男が警官に追われ、自分が勤めていた石膏像の製造工場へ逃げこむ。六つのナポレオン像のうちの一つが生乾きで柔らかかったので、男は像の中へ真珠を押し入れる。後に男は、ナポレオン像の売られた先を調べ、像を壊して真珠を取り戻そうとする。
★6.宝石や金で飾られた像。
『幸福な王子』(ワイルド) 町の広場に立つ王子の像は全身金箔でおおわれ、目にサファイア、刀の柄にルビーが、耀いていた。王子は、宝石を抜き取り金箔をはがして、貧しい人々のもとに運ぶよう、つばめに依頼する。冬が来て、つばめは寒さのため死に、王子の鉛製の心臓は割れる。
『大唐西域記』巻11「僧伽羅国」 僧伽羅国の精舎には先王の背丈と等しい金の仏像があり、頭部の肉髻(にくけい)に宝石が飾られていた。盗賊が侵入して宝石を取ろうとしたところ、仏像の背丈がしだいに高くなって、取ることができなかった。盗賊は落胆し、「仏が宝石を惜しむとは」と言うと、仏像は首をうつむけて、盗賊に宝石を与えた。
『美神』(三島由紀夫) ドイツ人R博士は、古代ローマのアフロディテ像を発掘した時、自分と像だけの秘密を作りたいと考え、像の実際の背丈二・一四メートルよりも三センチ多い数を、世界の学界に公表する。十年後、臨終の床にあるR博士からこの秘密を聞いたN医師が、像の背丈を測ると二・一七メートルあった。R博士は、「裏切りおったな」と言って死んだ〔*→〔箱〕7の『日本霊異記』中-6と類想〕。
『ドン・ジュアン』(モリエール) ドン・ジュアンは、かつて決闘をして一人の騎士を殺した。その騎士の石像が建てられたので、ドン・ジュアンは石像を見に行き、「拙宅へ晩餐においでなさい」と冗談を言う。すると石像がうなずく。翌晩、石像は本当にドン・ジュアンの所へやって来る→〔土〕5。
『聊斎志異』巻2-47「陸判」 朱爾旦は、十王殿に立つ緑顔赤鬚の判官の木像を、酒に招待する。翌晩、判官像が本当に朱の家を訪れる→〔首〕2・〔魂〕4。
*死者を食事に招待する→〔言霊〕6の『ドイツ伝説集』(グリム)336「絞首台から来た客」。
『ヴィーナスの殺人』(メリメ) アルフォンスは自らの結婚式当日、テニスの試合に興じ、ラケットを持つ手に邪魔な指輪をはずして、銅製のヴィーナス像の指にはめる。試合後に指輪を取ろうとすると、像が指を曲げ、指輪が取れなくなっているのでアルフォンスは困惑する。その夜、アルフォンスと花嫁の新床にヴィーナス像が現れ、強い力でアルフォンスを抱き締めて殺す。
『捜神記』巻5-3(通巻94話) 三人の男が蒋子文を祭る廟へ遊びに行き、いくつかの婦人の神像をそれぞれ指さして、「おれの嫁はあれだ」と冗談を言い合う。三人の夢枕に蒋侯が立って「良い縁組である」と礼を言い、「某日を期して三人を迎え取る」と告げる。三人は恐れ、取り消しを請うが、まもなく皆死ぬ。
*大人が子供と結婚の約束をする→〔言霊〕6の『サザエさん』(長谷川町子)。
『夢十夜』(夏目漱石)第6夜 明治の代なのに、鎌倉時代の運慶が仁王像を彫っている。無造作に鑿をふるって見事な像ができてゆくので、「自分」は感心する。見物の若い男が、「あれは、木の中に埋まっている仁王を鑿と槌で掘り出しているのだ」と言う。「自分」も木を彫ってみたが、明治の木には仁王は埋まっていなかった。
『巨人ゴーレム』(ヴェゲナー) 皇帝がユダヤ人を迫害する。ユダヤの司祭(ラビ)が、皇帝に対抗するために、粘土をこねて巨人ゴーレムを造る〔*巨人といっても、画面では、通常の人間より頭一つ分背が高いだけの大きさである〕。星型の大きなボタン(裏に呪文を記した紙が入っている)をゴーレムの胸にはめると、ゴーレムは動き出す。ゴーレムは自らの意志を持ち、造り主に従わず、家に火を放って街で暴れる。しかしゴーレムに抱き上げられた少女が、胸の星型ボタンを取り、ゴーレムはその場に倒れる。
『大魔神』(安田公義) 戦国時代。丹波の山奥に、背丈十メートルほどの埴輪型の武神像があった。その地では、家老が謀反を起こし城主を殺して、悪政をほしいままにしていた。城主の娘・小笹の願いにより、武神像に地下の魔神が乗り移り、武神像は鬼のごとき形相となって動き出す。武神像は城を破壊し、家老一派を皆殺しにして、暴れ回る。武神像はさらに村里へ向かおうとするので、小笹は「お鎮まり下さい」と訴える。武神像は穏やかな顔に戻り、崩れ落ちて土と化した。
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漢字辞典 |
出典:漢字辞典 |
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