表意文字 概説

表意文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/02 16:24 UTC 版)

概説

広義で、事物の概念を表わす文字を指すための用語である。ことばというものを主として「意味」の面からとらえて、一定の意味をもつ語のそれぞれに対応させた文字[3]。ひとつの字の示す単位が語形の段階にとどまり、さらに細かく分割して示すことのない文字体系[4]

なお厳密な意味では、文字は言語単位に対応するものであるとの理由から、絵文字を含めない[1]。広義の意味では、絵文字 (英: pictogram。言語との結びつきがないが、意味(概念)を表す図像) も含めることがある。

表意文字は、概念(意味)を視覚的な要素(直線、曲線、点など)で表した文字の体系。表意文字では文字の一つ一つに、示している意味(概念)がある。

なお表意文字は、程度の差はあっても、ほぼすべて表音主義も併用している[1](つまり、ひとつひとつの表意文字に対応する「音」があるというのが一般的)。

表意文字の例

たとえば象形文字があり[4]、具体的には、シュメール文字(の一部)や、エジプト文字(の一部の象形文字)などがある[4]。またヒッタイト象形文字も挙げられる。

知られている範囲では、シュメール文字 (スメリア文字) が最古の表意文字であり[1]、表意文字として一番有名である[1]

日本人は表意文字の例として漢字を挙げることは多い。一応挙げても良いが、それには微妙な面もある。その理由は下で説明する。

シュメール文字やエジプト文字に加えて漢字も表意文字の例として挙げられることは多い[4]。ただし漢字は、特に中国語の書記に使われている状況にあるものは、文字のひとつひとつが意味のみを表すのではなく、語や形態素を表し、その結果、語や形態素の発音も表している。その意味では「漢字は表意文字」と呼ぶことは、必ずしも適切というわけではない[5]。近年の(学術的な)文字体系の分類では、漢字は、中国語の書記で使用されるときには、「表語文字」と分類される。
一方、日本語の文章の中で使用されている漢字について、「漢字は表意文字」と言っても一応は良い。日本語の中の漢字については一般的に「漢字は表意文字」と説明しておいて、「漢字ひとつに、対応する音がいくつかある。音読み訓読みがある。」と説明する。

指事文字も表意文字である。たとえば漢字の「上」「下」は表意文字の一種の指示文字である(水平線(横線)を引いておいて、その線の「うえ」や「した」のほうに線や点を描きたすことで伝えたい概念を「さししめして」いるので指示文字である)。

アラビア数字(「1」「2」...「9」。また「0」)も表意文字である。それぞれ「いち(ひとつ)」「に(ふたつ)」...という概念を示している。また他の数学記号も(大部分が)表意文字である。

表意文字は、ひとつひとつの文字が意味(概念)を表している。その結果、表意文字で書かれた文章というのは、さまざまな言語で声に出して(音声化して)読み上げることができる。たとえば「1 + 1 = 2」は、日本語で「いち たす いち は に。」、英語で「One plus one equals two.」と読める。

&」は本来はラテン語の "et"(「〜と...」の「と」) を意味しており、英語のand、ドイツ語のundなど、違う言語の同じ意味の言葉を表す文字となっており、現代では表意文字といえる。

なお「広義の表意文字」についていうと、顔文字絵文字の一種なので、「広義の表意文字」に含めることが一応できる。携帯やスマホの普及で1990年代から多用され、近年では西欧でも絵文字の使用が一般化しているので、地域や国境を超えて「表意文字の一種」の使用が広がっている。

古代アメリカのマヤ文字紋章文字)についても「マヤ文字は表意文字」とされる。ただしマヤ文字で書かれた文章は、(漢字と仮名文字から成る日本語と同様に)表意と表音の組み合わせ(異なる文字体系)から成立している[6]


  1. ^ a b c d e f ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典【表意文字】
  2. ^ 『精選版 日本国語大辞典』【表意文字】
  3. ^ a b 精選版 日本国語大辞典【表意文字】
  4. ^ a b c d 『日本大百科全書』【表意文字】
  5. ^ たとえば Gelb, I. J. A Study of Writing, University of Chicago Press, 1963 参照。
  6. ^ 『神秘の王朝 マヤ文明展』 2003年 TBS 国立科学博物館 p.22


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