航空事故 航空事故の概要

航空事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/28 16:47 UTC 版)

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山中に墜落したグライダー(2017年)
ヘリコプターの事故(2011年、スイス)
大型旅客機の事故は、ひとたび起きると死傷者の人数が大きくなりがちである。これはテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故の再現画像。濃霧の中、離陸中の航空機が滑走路上で別の機と衝突。乗員乗客583人が死亡し、航空事故史に残る大惨事となった。
日本航空123便墜落事故。死亡者数520名、生存者は4名。
墜落したトルコ航空1951便の機体
トロントのピアソン空港の滑走路先に横たわる事故機の焼けただれた残骸(「エールフランス358便事故」)

概要

重大事故の形態としては、以下のような形が挙げられる。

墜落
飛行中に何らかの事情が発生し、航空機が地上もしくは水上へ落下する事象の総称。以下で述べる空中分解する例と、原型を保って墜落する例がある。
墜落時の衝撃で火災が発生することが多い。
墜落事故は空港内だけでなく、市街地や山岳部など場所を問わずに発生するため、市街地に墜落すると多くの住民も巻き添えになり、より一層の犠牲者が出ることになる。
空中分解
飛行中に航空機が構造破壊によって空中で分解する現象。生存は絶望的な例が大半。原因は、気象、災害、武器攻撃などの外的要因、あるいは機体構造の欠陥、整備不良、金属疲労、方向舵の過度の操作 などのような内的要因など。
不時着・胴体着陸
空港やそれ以外の場所に緊急着陸する例。主な要因として、降着装置(ランディングギア)が降りなかったり、燃料が尽きたり、時には操縦系統が全滅したり屋根が吹き飛んだりしながらも無事に着陸できた例と、着陸態勢は取れたが場所が不適当だったために機体が破損したという例に分かれる。墜落に比べると衝撃をコントロールできているため、生存率は高い。
オーバーラン
離着陸の際に滑走・制動距離が滑走路を逸脱する例。着陸失敗事故の大半を占める。地上で起きるので生存率は高いが、燃料の炎上や水没などで多数の死者が出た例もある。
離陸失敗
離陸滑走中に鳥の衝突や吸い込みが発生したり、離陸直後の上昇中に気象、機器などに起因発生する例。
火災
飛行中あるいは地上にいる際に何らかの原因で火災が発生する事故。
衝突
空中衝突して墜落する例と地上(山岳)に衝突する例がある。多くの例で、墜落して多数の死者を出している。
地上衝突
空港の滑走路や誘導路上で航空機同士で接触や衝突する例。特に離着陸に使用中の滑走路に別の機が入り込むと大事故となる。濃霧、視界不良による迷子、標識の不備や誘導用センターラインのかすれの放置、管制官の誘導ミス・指示ミスなどが原因となる。
テロリズム
ハイジャックなどで人為的に発生する例。
失踪・遭難
原因究明どころか機体や乗員乗客の破片すらも見つからない例。状態を指し示す言葉であり、機体が見つかれば別の言葉に切り替わるが、見つからない例も多々ある。技術などが発展した21世紀では失踪の例は減ってはいるものの、完全になくなったわけではない。

事故といっても、乗客・乗員が無事に生還できる例から全滅する例までさまざまである。

航空会社にとっては一度の事故が航空会社全体の信頼や存亡に関わる事態に発展することがあり、また、事故の原因が航空機の欠陥によるものであることが明らかになった場合、当該の航空機製造元や業界全体の信頼問題となりうる場合がある(コメット連続墜落事故ボーイング737 MAXの連続事故など)。

このため航空産業発足の当初から、航空事故に対してはその原因究明と対策に全力が注がれてきた。事故で判明したことや得られた情報は、同様の事故が再発しないよう以後の航空機の設計や運用に生かされている。

発生確率

航空事故を引き起こすリスク、事故確率の多寡は、航空会社や、その運航地域によって異なる。また(大雑把な傾向としては)先進国では低く、経済的な余裕のない発展途上国では高い傾向が見られる[1]。だが国によって決まるのではなく、各航空会社、一社一社ごとに大きく異なる。

アメリカ国家運輸安全委員会 (NTSB) の行った調査では、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%である[2]。米国内で自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.03%なので、その33分の1以下の確率となる[2]

NTSBによる1983年から2000年にかけての航空事故データ集計によれば、航空事故における死亡率が最も低いのは1998年の飛行距離100万マイルあたりの死亡率0.0001%である[3]。下記に見るように、飛行時間、飛行距離、出発回数(departure、便数)ごとに割合は異なる。

NTSBによる航空事故調査(1983〜2000年)[3]
10万飛行時間あたりの事故発生率 0.146%(1992年)〜0.315%(1983年)
10万飛行時間あたりの死亡率 0.006%(1998年)〜0.098%(1989年)
飛行距離100万マイルあたりの事故発生率 0.0036%(1992年)〜0.0076%(2000年)
飛行距離100万マイルあたりの死亡率 0.0001%(1998年)〜0.0024%(1989年)
10万出発回あたりの事故発生率 0.228%(1992年)〜0.475%(1997年)
10万出発回あたりの死亡率 0.009%(1998年)〜0.144%(1989年)

日本の文部科学省による1983年~2002年の国内事故統計に基づく推計では、今後30年以内に航空機事故で死亡する確率は0.002%で、交通事故で死亡する確率(0.2%)の100分の1以下となった[2]

航空事故における輸送実績1億人キロあたりの死亡乗客数は0.04人である[4]。これは東京─ニューヨーク間約1万キロを12万5,000回往復して死亡事故に遭う確率となり、週に1度往復したとすると2,404年に1度という計算になる[4]。また、10万飛行時間あたりの死亡事故件数は0.07件であり、これは飛行時間10時間のホノルル─福岡間を14万3,000回往復して事故に遭う確率となり、週に1度往復したとすると2,750年に1度という計算になる[4]

航空事故の死者数と自動車事故による死者数を比較すると、自動車事故が航空事故を上回る。1998年の全世界での航空事故による死亡者数は909人であった[4]。これに対して米国の自動車事故による死亡者数は4万1,967人(1997年)、日本の自動車事故死は10805人(1998年)、ドイツの自動車事故死は8,547人(1997年)、フランスの自動車事故死は7,989人(1997年)であり、国際航空運送協会広報部長I・グラードは「米国1国の車による1年間だけの死者の数でも、ライト兄弟が初飛行に成功して以来の航空機事故の死者よりも多い」と述べている[4]

2005年の航空事故による死者数は1015人だった[5]

オランダの航空事故調査機関アビエーション・セーフティー・ネットワークによれば、2015年の航空機事故は560件、死亡事故は16件であった[6]。これは485万7000回に1件の確率であり、1日1回飛行機に乗ったとして1万306年に1回の可能性となる[6]

2017年の死亡事故は地域間ターボプロップ機の2件、死者は13人、旅客機の死亡事故はゼロで、航空業界の記録上最も安全な年となった[5]

2019年は航空事故件数86件、うち死亡事故8件、死者数は257人だった[7][5]

2020年新型コロナウイルスの世界的流行で運航数が前年比42%減少したが、航空事故件数は40件、うち死亡事故は5件、死者数は299人だった[7][5]。半数以上がイラン軍によるウクライナ国際航空752便撃墜事件での犠牲(死者176人)で、5月のパキスタン国際航空8303便墜落事故では98人が死亡した[5]

オランダの航空コンサルティング会社To70によれば、大型飛行機の死亡事故率は100万便あたり0.27件で、これは370万回の飛行回数ごとに1回の割合である[7]

こうしたことから、航空機は様々な交通手段の中でも最も安全な手段のひとつとされる[2]。ただし、事故の最大要因が人的要因であること、ダイヤの過密化、航空機の大型化などを考慮すると、将来における航空機事故による人的被害の大幅な減少は期待できないとも指摘されている[8]

安全度ランキング

2019年1月にAirlineRatingsが発表した「世界で最も安全な航空会社20社」というランキングでは、以下の航空会社がランクインした。

なお、パイロットの飲酒問題が起きたJAL(日本航空と、多額の損失を出したエティハド航空ランク外である。

危険度ランキング

一方、同社による評価で最低レベルの1つ星または2つ星となったのは(つまり「危険」と判定されたのは)、

の4社だった。

航空事故はさまざまな要因が複合して事故に至るものであり、多くの航空機や人命を失った航空会社に安全性の問題があるとは必ずしも言い切れない。たとえば一機の事故としては史上最多の死者を出した日本航空123便墜落事故の場合、その原因は過去に製造元が機体に施した修理のミスだった(異論も存在、当該項を参照の事)。また、アメリカ同時多発テロ事件においてはハイジャックにより4機が犠牲になった。


注釈

  1. ^ フライトシミュレーターの運用と医学など分野を越えて分析研究が行われている。
  2. ^ アメリカン航空から1957年製造のダグラス DC-7型機を譲渡され小規模の様々な実験後1963年には離着陸失敗事故想定の再現検証実験に使用した[12]
  3. ^ 実施場所の条件、政府当局からの許可手続きと協力など。
  4. ^ 管制下の民間共用空港と市街地域の飛行から遠隔操作の無人離陸は許可されなかった。
  5. ^ 日本国内では、ディスカバリーチャンネルで2012年11月6日に『好奇心の扉:航空機事故は解明できるのか?』として放送された他、2020年4月20日に日本テレビ系列の「世界まる見え!テレビ特捜部」でも放送された。

出典

  1. ^ Fatal Events and Fatal Event Rates of Airlines
  2. ^ a b c d 「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」「リスクマネジメント最前線」2014,No 2, 東京海上日動リスクコンサルティング,p.5
  3. ^ a b 以下、Survivability of Accidents Involving Part 121 U.S. Air Carrier Operations, 1983 Through 2000 , Safety Report NTSB/SR-01/01 March 2001 PB2001-917001 Notation 7322 ,pp.2-3.
  4. ^ a b c d e 秋本 俊二「数字に見る航空機事故の確率」2001年07月16日,ALL ABOUT.及び同記事における杉浦一機『知らないと損するエアライン〈超〉利用術』(平凡社新書,2001年)内容紹介
  5. ^ a b c d e 「2020年航空機事故死者が299人に増加、運航本数は激減=民間調査」ロイター2021年1月4日
  6. ^ a b 橋賀秀紀「重大航空事故に遭遇する確率は? 最新統計ではわずか468万分の1!」CREA2016.8.15,文藝春秋. Aviation Safety Network,https://www.jacdec.de
  7. ^ a b c Adrian Young ,A DIFFERENT OPERATIONAL SCENARIO, SOME OF THE SAME OLD PROBLEMS: 2020 IN REVIEW,1 JAN,To70.
  8. ^ 米満孝聖「世界の旅客航空機事故による人的被害」国際交通安全学会誌 Vol.27,No.3 ,2002年11月,p51.
  9. ^ planecrashinfo.com による統計
  10. ^ ボーイング社による航空事故統計
  11. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典第二版より。この場合のTin()は金属の代名詞
  12. ^ FAA FIlm on crash safety tests, circa 1963. [1] From the archives of the San Diego Air and Space Museum[2]
  13. ^ 好奇心の扉:航空機事故は解明できるのか? | ディスカバリーチャンネル
  14. ^ Sandia National Laboratories: Sled Track





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