航空事故 航空事故の再現実験

航空事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 23:55 UTC 版)

航空事故の再現実験

ボーイング720の座席に置かれたダミー人形

政府専門機関、軍や航空機製造元が行う航空機事故の再現検証は物理的範囲で材質と機体など機器構造に機体内部の環境などといった限定範囲か局部的で、大型旅客機実機を用いて地上か空中で行う場合は機体から旅客脱出の実地、空港の環境、飛行特性や気象条件などのデータ収集を中心に行う事が多い。

人為的操縦ミスを飛行中など検証する研究についてここでは割愛し[注釈 1]、飛行運用から事故を検証する問題点を幾つか挙げると事故経過は気象状況など千差万別であること、パイロットや調査員などスタッフの安全条件と自動操縦飛行には法律の制限があること、廃棄前提であっても証明書類などを完備した飛行許可を取得した機体という条件のため型落ち旧式中古機でも高価なこと、離着陸などを想定した検証の場合は機体サイズによっては広い場所を確保する必要があり多角的な観察と測定できる環境範囲空間が必須など、多数の制約から自動車の衝突安全テストのような実験が難しいため、発生した重大事故の状況や残骸を調査し内容を分析する方法が主流である。

日本の場合、前項の事故調査に加えて人的被害や物損に及ばなかった危険事態を事故に準じた扱いの「重大なインシデント」に指定して状況の報告を義務付け、調査と分析を行っている。

1954年4月コメット連続墜落事故ではイギリス政府直轄の調査委員会は回収した残骸から原因を推定し実際に飛行させるかわりに巨大な水槽を用いた画期的な構造検証実験許可を行った。これは事故原因究明の再現実験に留まらず様々な分野の学術研究から注目された。
アメリカは連邦航空委員会 (FAA) 中心に時には他機関と合同で機種とその大小に拘わらず様々な実験が行われている。無償譲渡の廃止したレシプロ自家用機を用いて様々な検証を実施し、その一例にクレーンで吊上げたのち落下させ、キャビンの状態や機体構造強度のデータを収集している。1960年代には旧式レシプロ四発大型旅客機を無償譲渡[注釈 2]や購入により調達し離着陸失敗事故を想定し地上破壊プロセス、火災発生状況と構造検証の実験などを行い、後述のジェット旅客機を飛行から地上で全損させる実験はNASAとFAA主体で進めた共同計画と、アメリカ等4ヶ国の民間放送局5社共同体は都合[注釈 3]からメキシコで実施した2例がある。

1984年12月1日、着陸失敗などの被害軽減へ"着火しにくい燃料を使用する事で衝撃に伴う引火の被害を抑える事"を目的にした「衝撃実演 (CID)」をNASA連邦航空委員会 (FAA) の共同で行った。無線操縦による無人飛行装置を取り付け改造したボーイング720型機をエドワーズ空軍基地から離陸後に仮想滑走路(着地位置)へ突入させた(「制御された衝撃実演」の項目参照。Controlled Impact Demonstration もしくは Crash In the Desert)。

2012年には、「空港以外で不時着する事故」を想定してボーイング727-200型機を故意に「墜落」させ、内外部から映像を始めとする破壊される機体状況をのデータを収集する再現実験が、アメリカ・ドイツ・イギリスのテレビ局4社協力で行われた(2012年ボーイング727型機墜落実験)。この実験の様子は2012年4月27日に放映されたディスカバリー・チャンネルの「好奇心の扉:航空機事故は解明できるのか?」に収録されているほか、協力各社が国内向けに編集して放送されている[注釈 4][注釈 5][13]

建物への衝突を調査する場合には離陸しなくてもロケットスレッドで水平に加速し、壁に衝突させることでデータが得られるため多くの実験が行われている。例として1988年にサンディア国立研究所原子力発電所への航空機衝突による影響を調査するため、アメリカ軍から払い下げられたF-4をロケットスレッドで加速し、コンクリートの壁に衝突させる実験を行っている[14]


注釈

  1. ^ フライトシミュレーターの運用と医学など分野を越えて分析研究が行われている。
  2. ^ アメリカン航空から1957年製造のダグラス DC-7型機を譲渡され小規模の様々な実験後1963年には離着陸失敗事故想定の再現検証実験に使用した[12]
  3. ^ 実施場所の条件、政府当局からの許可手続きと協力など。
  4. ^ 管制下の民間共用空港と市街地域の飛行から遠隔操作の無人離陸は許可されなかった。
  5. ^ 日本国内では、ディスカバリーチャンネルで2012年11月6日に『好奇心の扉:航空機事故は解明できるのか?』として放送された他、2020年4月20日に日本テレビ系列の「世界まる見え!テレビ特捜部」でも放送された。

出典

  1. ^ Fatal Events and Fatal Event Rates of Airlines
  2. ^ a b c d 「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」「リスクマネジメント最前線」2014,No 2, 東京海上日動リスクコンサルティング,p.5
  3. ^ a b 以下、Survivability of Accidents Involving Part 121 U.S. Air Carrier Operations, 1983 Through 2000 , Safety Report NTSB/SR-01/01 March 2001 PB2001-917001 Notation 7322 ,pp.2-3.
  4. ^ a b c d e 秋本 俊二「数字に見る航空機事故の確率」2001年07月16日,ALL ABOUT.及び同記事における杉浦一機『知らないと損するエアライン〈超〉利用術』(平凡社新書,2001年)内容紹介
  5. ^ a b c d e 「2020年航空機事故死者が299人に増加、運航本数は激減=民間調査」ロイター2021年1月4日
  6. ^ a b 橋賀秀紀「重大航空事故に遭遇する確率は? 最新統計ではわずか468万分の1!」CREA2016.8.15,文藝春秋. Aviation Safety Network,https://www.jacdec.de
  7. ^ a b c Adrian Young ,A DIFFERENT OPERATIONAL SCENARIO, SOME OF THE SAME OLD PROBLEMS: 2020 IN REVIEW,1 JAN,To70.
  8. ^ 米満孝聖「世界の旅客航空機事故による人的被害」国際交通安全学会誌 Vol.27,No.3 ,2002年11月,p51.
  9. ^ planecrashinfo.com による統計
  10. ^ ボーイング社による航空事故統計
  11. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典第二版より。この場合のTin()は金属の代名詞
  12. ^ FAA FIlm on crash safety tests, circa 1963. [1] From the archives of the San Diego Air and Space Museum[2]
  13. ^ 好奇心の扉:航空機事故は解明できるのか? | ディスカバリーチャンネル
  14. ^ Sandia National Laboratories: Sled Track





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