イカ 利用

イカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 03:02 UTC 版)

利用

科学

  • 神経細胞 - 他の生物に比べて極端に太く扱いやすい「巨大軸索」と呼ばれる神経があり、これを利用して神経細胞や神経線維の仕組みや薬理作用の解明が進んだ。なおこの実験で用いられたのはヤリイカであった。ヤリイカはコンラート・ローレンツに「人工飼育が不可能な唯一の動物」とさえ呼ばれるほど飼育が難しい生物であったが、松本元がその飼育に成功した。ローレンツは実際に水槽で生きたヤリイカを見るまで、そのことが信じられなかったという[8]
  • 平衡石 - 平衡石という平衡感覚をつかさどる組織を持つ。平衡石には特定の周期で樹木の年輪と同じ様な環状の模様が形成される。これを使い、イカの年齢や生育環境を知ることができる。
  • 放射性物質 - 肝臓には、108mAg 或いは 60Co が蓄積されやすく、海洋の放射性物質による汚染の状況を知ることが出来る。中央水産研究所では、蓄積量を継続的に調査している。また、108mAg の蓄積には、分子量70kDaの蛋白質が関与している[9]

工業

  • 液晶 - 1980年代に函館にあった日本化学飼料がイカの肝を原料としたダーク油からコレステリック液晶を製造販売していた。

また、この液晶をアクセサリーとして販売していた会社も存在する。 液晶ディスプレイにイカが使われているという話には2つの系統があり、一つは、コレステリック液晶を使ったカラーテレビという、まったく実現されなかった話で、もう一つは、TN型液晶ディスプレイにイカ由来の原料が使われているという話である。 後者に関しては、TN型液晶ディスプレイでコレステロール誘導体が使用されていたのは事実であるが、イカ由来のコレステロール誘導体の使用は確認されていない。 また、イカ墨が天然の液晶物質であるという話も流布しているが、これも事実ではない。

食材

イカ、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 385 kJ (92 kcal)
3.08 g
糖類 0 g
食物繊維 0 g
1.38 g
飽和脂肪酸 0.358 g
一価不飽和 0.107 g
多価不飽和 0.524 g
0.492 g
15.58 g
トリプトファン 0.174 g
トレオニン 0.67 g
イソロイシン 0.678 g
ロイシン 1.096 g
リシン 1.164 g
メチオニン 0.351 g
シスチン 0.204 g
フェニルアラニン 0.558 g
チロシン 0.498 g
バリン 0.68 g
アルギニン 1.136 g
ヒスチジン 0.299 g
アラニン 0.942 g
アスパラギン酸 1.503 g
グルタミン酸 2.118 g
グリシン 0.974 g
プロリン 0.635 g
セリン 0.698 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
10 µg
(0%)
0 µg
0 µg
チアミン (B1)
(2%)
0.02 mg
リボフラビン (B2)
(34%)
0.412 mg
ナイアシン (B3)
(15%)
2.175 mg
パントテン酸 (B5)
(10%)
0.5 mg
ビタミンB6
(4%)
0.056 mg
葉酸 (B9)
(1%)
5 µg
ビタミンB12
(54%)
1.3 µg
コリン
(13%)
65 mg
ビタミンC
(6%)
4.7 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(8%)
1.2 mg
ビタミンK
(0%)
0 µg
ミネラル
ナトリウム
(3%)
44 mg
カリウム
(5%)
246 mg
カルシウム
(3%)
32 mg
マグネシウム
(9%)
33 mg
リン
(32%)
221 mg
鉄分
(5%)
0.68 mg
亜鉛
(16%)
1.53 mg
マンガン
(2%)
0.035 mg
セレン
(64%)
44.8 µg
他の成分
水分 78.55 g
コレステロール 233 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

食用になる種類が多く、日本では軟骨やクチバシを除くほぼ全身が食される(クチバシも周囲の肉は「とんび」と呼ばれて珍味とされる)。料理・加工法も刺身、焼き、揚げ、カレーやパスタの具を含めた煮物・炒め物、塩辛干物など多彩である。としても好まれる。イカ焼きは、お祭り・海の家の屋台の定番となっている他、イカそうめんイカめしなどが収穫量の多い地域の特産品となっている。長野県では、古くから保存食として用いられていた塩いか(茹でたイカの腹に、ゲソと共に粗塩を詰めたもの)が、現在でも食べられていて学校給食でも供される。干したイカは出汁取り用として東アジア・東南アジア全域で好まれる。しかし、中にはダイオウイカのように食用には適さない種も存在する。

日本は世界第一位のイカ消費国であり、その消費量は世界の年間漁獲量のほぼ2分の1(2004年現在 約68万トン)とも言われている。また、イカの一種であるスルメイカは、日本で最も多く消費される魚介類である。他にギリシアなど正教徒が多い東地中海地方では、のためイカ料理がよく食される。スペインやイタリアなど地中海の国でも常食される。[10]逆にユダヤ教では鱗がない海生動物はカシュルートでないためイカを食べることは禁じられ、欧米諸国でもタコと同様不吉な生き物とされ、イカを食べない地域は多い。

栄養的には、ビタミンEタウリンほかアミノ酸が多く独特のうまみを感じさせる。他にも亜鉛DHAEPAなどの有用な栄養分も豊富である。

イカは消化しにくく、胃もたれの原因と思われがちだが、消化率は魚類と大差ない。

アニサキス

イカはアニサキス寄生虫の宿主である。食材として用いる際は、加熱または-20度以下の環境で24時間以上冷凍するのが望ましい[11]。生食する場合は、目視で確認し、かつ刃物で切れ目を入れて提供する[12]。醤油、酢、わさびでは死滅しない[12]。内臓は生食してはならない[12]

日本における主な料理法

他、揚げかまぼこの類など様々な揚げ物の具として使用される。

イカゲソ

食用にする際には10本の腕全てを日本では下足(げそ)と呼ぶ。主なイカゲソ料理としては、天ぷらげそ天)・から揚げイカ天すり身のてんぷら)・塩辛がある。主に山形県で盛んに食べられる。

高度経済成長の頃はイカの胴体部分に比べ足の部分は全く売れなかった為、築地市場では一斗缶に大量のげそが無造作に置かれ、タダ同然で売られていたという[13]

イカスミ

イカスミのパエリア(アロス・ネグロ

パスタのソースに使ったイカスミスパゲッティや、パエリアアロス・ネグロArròs negre」)に混ぜるなどして使われる。

イカゴロ

中腸腺はイカゴロと呼ばれ、イカ塩辛の特徴的な味を構成する。ルイベとして食べられることもある。加熱するとカニの中腸腺であるカニミソのような味となる。しかしイカ加工時の発生量に対して需要は少なく、廃棄物として処理されるものが多い。他の生物の中腸腺と同様にカドミウムの含有濃度が比較的高く、通常食する量では健康に影響はないが、廃棄物として大量に処理したり、飼料として家畜類の主食に用いる場合は問題となる。

観賞用

イカは魚類などより飼育が難しいため、一般的な趣味とはなりえていないが、一部の水族館では展示が行われている。

ホタルイカ群遊海面がある富山県では、ホタルイカ漁が観光資源として生かされている。漁期には、青白く光るホタルイカが漁獲される様子を間近に見られる他、滑川市の博物館「ほたるいかミュージアム」や魚津水族館で捕獲個体が展示される。また安価なことから水族館で他の魚や海獣の餌として広く用いられる。


  1. ^ 『和漢音釈書言字考節用集(https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100217663/1?ln=ja)』-、明和3。 
  2. ^ a b c d e vol8.タコ - 南三陸味わい開発室” (PDF). 海の自然史研究所. 2019年10月18日閲覧。
  3. ^ “イカは空を"飛ぶ"ことができる!! - 北大がイカの飛行行動を解明”. マイナビニュース. (2013年2月7日). https://news.mynavi.jp/techplus/article/20130207-a140/ 2013年2月7日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g 奥谷 2009, pp.193-195
  5. ^ a b c d e Staaf 2017, p.15-21
  6. ^ 仲谷 2011, pp.80-182
  7. ^ Strugnell, J.; Nishiguchi, M.K. (2007), “Molecular phylogeny of coleoid cephalopods (Mollusca: Cephalopoda) inferred from three mitochondrial and six nuclear loci: a comparison of alignment, implied alignment and analysis methods”, J. Mollus. Stud. 73 (4): 399–410, doi:10.1093/mollus/eym038 
  8. ^ 池田譲『イカの心を探る : 知の世界に生きる海の霊長類』NHK出版、2011年6月25日、38頁。ISBN 978-4-14-091180-8 
  9. ^ イカ・タコでの人工放射性核種の蓄積のされ方について 中央水産研究所 中央水産研究所主要成果集 第5号(平成19年 9月発行)ISSN : 1881-5944
  10. ^ “世界が驚いた→ニッポン!スゴ~イデスネ”. (2015年9月26日). https://www.tv-asahi.co.jp/shisatsudan/backnumber/2015/0027/ 
  11. ^ 食中毒アニサキス生の魚介類で猛威 毎日新聞(2017年5月8日)2017年5月9日閲覧
  12. ^ a b c アニサキスによる食中毒を予防しましょう”. 厚生労働省. 2016年6月10日閲覧。
  13. ^ “なぜ「げそ天」は老舗そば屋にないのか? みんなの知らない“げそ天そば”の世界”. 文春オンライン (株式会社文藝春秋). (2021年3月2日). https://bunshun.jp/articles/-/43675?page=1 2021年4月9日閲覧。 
  14. ^ 【参考】 Q.27 イカはどんな方法で獲るのですか?(全国いか加工業協同組合HPより)
  15. ^ 【参考】お魚なんでも辞典>漁法から調べる>イカ釣り(水産大百科より)
  16. ^ フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.48 1988年 永岡書店
  17. ^ フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 pp.47–48 1988年 永岡書店
  18. ^ スルメイカ(函館市資料) (PDF)
  19. ^ 「イカの街はちのへ」連絡協議会
  20. ^ "【能登町】能登の魅力を堪能できる「イカの駅つくモール」" DISCOVER NOTO 2023年12月13日閲覧
  21. ^ "批判にめげず 「イカキング」を大化けさせた製作者の意地とプライド" ITmediaビジネスオンライン 2022年10月08日7時30分更新 2023年12月20日閲覧
  22. ^ "【石川】命名 イカキング 能登町のモニュメントに愛称" 中日新聞 2021年6月22日10:01更新 2023年12月13日閲覧
  23. ^ 「唐津・呼子イカ検定 8年の歴史に幕」佐賀新聞(2014年2月20日)






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