イカ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/22 04:34 UTC 版)
イカ | |||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||
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シノニム | |||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||
イカ(烏賊・鰞) | |||||||||||||||
目 | |||||||||||||||
形態
神経系や筋肉がよく発達していて、たいていの種類は夜に行動する。漏斗からの噴水と外套膜の収縮・ひれを使って前後に自在に泳ぐ。 10本の腕は筋肉質でしなやかに伸縮し、腕の内側にはキチン質の吸盤が並んでいる。吸盤にはスパイクのような歯の付いた角質の環がみられ、筋肉の収縮を利用するタコの吸盤とは構造が異なる[1]。実際の腕は8本で、残りの腕2本は吸盤が先端に集中する「触腕(しょくわん)」とよばれる構造である。この触腕を伸縮させて魚類や甲殻類を捕食するが、釣りの時に触腕をちぎって逃げることや、テカギイカの仲間では成長に伴い触腕を欠くことから、必ずしも必要というわけではないようである。
コウイカ目・ダンゴイカ目・トグロコウイカ目では触腕は第3腕と第4腕との間にある「ポケット」に収めることができ、普段は8本脚に見える。ツツイカ目(閉眼目・開眼目)では長さを縮めることはできるが完全に収めることはできない。
タコの仲間との違いは腕の数(イカは8本の腕に加え、1対の触腕をもつ)のほか、ミミ(ヒレ)を持つことであるが、これらには例外もある(腕が8本のタコイカやミミのあるメンダコなど)[1]。
体内には貝殻を持つが、種によって組成や形状が大きく異なる。閉眼目・開眼目では有機質の薄膜で、軟甲(gladius、イカの骨)と呼ばれる。コウイカ科では石灰質の舟形で、甲 (cuttlebone, sepion)と呼ばれる。トグロコウイカでは、オウムガイのように巻貝状で内部に規則正しく隔壁が存在し、細かくガスの詰まった部屋に分けられている。
皮膚には色素細胞がたくさん並んでおり、精神状態や周囲の環境によって体色を自在に変化させる。調理に際して、両目の間にある神経系の基部を刺してしめると、ただちに体色が白濁する。
イカは本来の心臓の他に、2つの鰓(えら)心臓を持っている。鰓心臓は鰓に血液を急送する働きを担っている。
イカの血は銅タンパク質であるヘモシアニンを含むために青色である(ほとんどの脊椎動物血液中に含まれる鉄タンパク質のヘモグロビンは赤色)。
特にダイオウイカなど一部の深海イカは、浮力を得るために、塩化アンモニウムを体内に保有している。特定のイカにある“えぐみ”はこのためである(特にダイオウイカなどは辛臭くて食えたものではないという報告もある)。
体の大きさに対しての眼球の割合が大きいことから、行動の多くは視覚による情報に頼っていると思われる。イカやタコの眼球は外見上脊椎動物の眼球とよく似ているが、まったく異なる発生過程を経て生まれた器官であり、内部構造に明確な違いがある(眼の進化)。研究によると同じタンパク質とツールキット遺伝子によって並行に獲得された器官である。脊椎動物と違い視神経が網膜の背面側を通っており、視認の邪魔にならない。そのため視力に優れ、盲点が存在しない。
嗅覚や味覚に関する研究はほとんどない。
敵に襲われた時など、漏斗から水を勢いよく噴出し、ジェット噴射の要領で空中に飛び出し、腕とヒレを広げた状態で滑空する種もいる[2]。
学術的には、「頭足綱」の名のとおり頭部に足を持つと解釈されているため、イカを縦長に表示する際には足がある方を上に配置する。
生態
全世界の浅海から深海まで、あらゆる海に分布する。淡水域に生息する種類は確認されていない。体長は2 cm程度から20 mに達するものまで、種類によって差がある。
イカは小魚や甲殻類を主食とする。イカは自身の体の大きさに比べてかなり大きい獲物を襲う。アオリイカの幼体は自身より大きなムギイワシを襲うことが知られている。コウイカはエビやカニ、小魚を好んで食べる。スルメイカがハダカイワシを捕食する際は丸ごと捕食しているのが見られるのに対し、イワシを捕食する際は、触腕で捕らえ、腕で抱え込み、上顎及び下顎で頭部を落とし、胴体のみを食べるように持ち変える様子が確認されており、底生の魚類エゾイソアイナメはこの棄てられた頭部を多く食べている。しかしスルメイカは小魚よりウミノミやツノナシオキアミなどの甲殻類を好んで食べる[3]。
一方で、イカ類は海の蛋白源として重要な位置を占めている[3][4]。天敵はサメやマグロ、ミズウオなどの大型魚類・ウミスズメやフルマカモメ、アホウドリやペンギンなどの海鳥・アザラシやオットセイなどの海獣・イルカやゴンドウクジラ、マッコウクジラなどのハクジラ類を含む海生哺乳類である[3][4]。久保田正によるミズウオの胃内容物の調査では、150尾のミズウオから10科27種のイカが確認された[3]。また、マッコウクジラは14科50種のイカを食べているとされ、あるマッコウクジラの胃内容物の調査では、軟体部が残っている830個体中、600個体9科15種が同定されたが、このうちクラゲイカが最多で、次いでアカイカ、ニュウドウイカの順に個体数が多かった[3]。マッコウクジラの食料として、テカギイカ科(北太平洋)やクラゲイカ科(大西洋)が圧倒的に多くみられるが、これは各海域の大型イカ類の多寡を反映していると考えられている[3]。サウスジョージア島のゾウアザラシ60頭の胃の内容物の96.2%はイカで、1年あたり230万 tのイカを摂食している[4]。オットセイでは、スルメイカやホタルイカ、タコイカ等を捕食することが知られている[3]。また、サメもイカ類を捕食しており、捕食するものとしてはダルマザメ、アオザメ、ヨゴレ、ユメザメ、ナヌカザメ、ニホンヤモリザメ、ホオジロザメ、アブラツノザメ、クロヘリメジロザメ、ミズワニ、ヨシキリザメ、ネズミザメ、ヒョウモントラザメなどの多くの種類が知られている[5]。共食いも行い、深海性のイカの一種は食料の42%が共食いである[4]。陸生のクマやオオカミでさえ、偶然浜に打ちあがったイカを食べることが観察されている[4]。
敵から逃げるときは頭と胴の間から海水を吸い込み漏斗から一気に吹きだすことで高速移動する。さらに体内の墨袋(墨汁嚢)に墨を蓄えており敵が現れると墨を吐き出して敵の目をくらませる[1]。タコと比較すると、タコの墨はイカの墨より脂質が少なくさらさらしており、これを煙幕のようにして外敵の視界をさえぎることを目的とする[1]。イカの場合は墨の粘度が高くタコの墨のように拡散せず塊のようになる[1]。イカの墨が紡錘形にまとまるのは自分の体と似た形のものを出し、敵がそちらに気を取られているうちに逃げるためと考えられている。
- ^ a b c d e “vol8.タコ - 南三陸味わい開発室” (PDF). 海の自然史研究所. 2019年10月18日閲覧。
- ^ “イカは空を"飛ぶ"ことができる!! - 北大がイカの飛行行動を解明”. マイナビニュース. (2013年2月7日) 2013年2月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g 奥谷 2009, pp.193-195
- ^ a b c d e Staaf 2017, p.15-21
- ^ 仲谷 2011, pp.80-182
- ^ Strugnell, J.; Nishiguchi, M.K. (2007), “Molecular phylogeny of coleoid cephalopods (Mollusca: Cephalopoda) inferred from three mitochondrial and six nuclear loci: a comparison of alignment, implied alignment and analysis methods”, J. Mollus. Stud. 73 (4): 399–410, doi:10.1093/mollus/eym038
- ^ 池田譲『イカの心を探る : 知の世界に生きる海の霊長類』NHK出版、2011年6月25日、38頁。ISBN 978-4-14-091180-8。
- ^ イカ・タコでの人工放射性核種の蓄積のされ方について 中央水産研究所 中央水産研究所主要成果集 第5号(平成19年 9月発行)ISSN : 1881-5944
- ^ “世界が驚いた→ニッポン!スゴ~イデスネ”. (2015年9月26日)
- ^ 食中毒アニサキス生の魚介類で猛威 毎日新聞(2017年5月8日)2017年5月9日閲覧
- ^ a b c “アニサキスによる食中毒を予防しましょう”. 厚生労働省. 2016年6月10日閲覧。
- ^ “なぜ「げそ天」は老舗そば屋にないのか? みんなの知らない“げそ天そば”の世界”. 文春オンライン (株式会社文藝春秋). (2021年3月2日) 2021年4月9日閲覧。
- ^ 【参考】 Q.27 イカはどんな方法で獲るのですか?(全国いか加工業協同組合HPより)
- ^ 【参考】お魚なんでも辞典>漁法から調べる>イカ釣り(水産大百科より)
- ^ フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.48 1988年 永岡書店
- ^ フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 pp.47–48 1988年 永岡書店
- ^ スルメイカ(函館市資料) (PDF)
- ^ 「イカの街はちのへ」連絡協議会
- ^ "【能登町】能登の魅力を堪能できる「イカの駅つくモール」" DISCOVER NOTO 2023年12月13日閲覧
- ^ "批判にめげず 「イカキング」を大化けさせた製作者の意地とプライド" ITmediaビジネスオンライン 2022年10月08日7時30分更新 2023年12月20日閲覧
- ^ "【石川】命名 イカキング 能登町のモニュメントに愛称" 中日新聞 2021年6月22日10:01更新 2023年12月13日閲覧
- ^ 「唐津・呼子イカ検定 8年の歴史に幕」佐賀新聞(2014年2月20日)
イカと同じ種類の言葉
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