Variations and Fugue on a Theme of J.S.Bach Op.81とは? わかりやすく解説

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レーガー:J.S.バッハの主題による変奏曲とフーガ ロ短調

英語表記/番号出版情報
レーガーJ.S.バッハの主題による変奏曲とフーガ ロ短調Variations and Fugue on a Theme of J.S.Bach Op.81作曲年1904年  出版年1904年  初版出版地/出版社Lauterbach & Kuhn 

作品解説

2012年3月 執筆者: 佐藤 翠

作品81バッハの主題による変奏曲とフーガ

バッハ主題といって今日の我々がまず想像するのは「B(シ♭)A(ラ)C(ド)H(シ)」の主題かもしれないJ. S.バッハ自身が自らの作品頻繁に用いただけでなく、「バッハ復興」の時代である18世紀以降シューマンリストなどドイツロマン派の作曲家多くが、彼へのオマージュのようにこの「B(シ♭)A(ラ)C(ド)H(シ)」を用いて作品残したことでも有名な主題だからだ。実際にレーガーも、これを用いてバッハ主題による幻想曲とフーガ》(作品46)という大規模オルガン作品書いている。しかし、このピアノ作品に「B(シ♭)A(ラ)C(ド)H(シ)」の主題登場しない。この作品における「バッハ主題」とは、J. Sバッハ一作品に由来するものだからである。
この作品生まれきっかけとなったのは、1904年4月16日ミュンヘンにて開かれた演奏会だった。レーガー作品披露され大成功終わったことに満足したレーガーは、そのピアニスト、シュミット・リントナーに新たな大規模ピアノ作品」の献呈申し出た。これを受け、リントナーがその作品主題として提示したのが、J. S. バッハ作曲教会カンタータ《ただキリストの昇天によりて》(BWV 128)の第4曲アリア〈神の全能計り知れず〉における、オーボエ・ダモーレ通奏低音奏されるリトルネッロ主題である。
この演奏会から2ヶ月ほどで、この《バッハの主題による変奏曲とフーガ》(作品81)は完成した。そして同年12月14日ミュンヘンにて、もちろんシュミット・リントナーによるピアノ初演された。
14変奏大規模な二重フーガからなるこの大作は、レーガー独奏ピアノ作品の中で最も深度広がりのある大作である。「バッハベートーヴェンブラームス熱烈に賛美」し、その流れを汲む作曲家であることを自負していたレーガーらしい、ドイツバロック要素ロマン要素それぞれに盛り込まれ変奏曲である。そしてそこには、ピアノ作品ありながらその音楽端々に、彼のオルガン作品連想させる大胆かつ豊かな響き満たされ手法感じることができるだろう。

テーマAndante
冒頭に「オーボエソロのように」と指示があるが、これは言うまでもなく主題引用した前述アリア念頭に置かれているためである。14小節主題旋律厳格な和声進行のもと重厚に、しっとりレガート提示される

第1変奏:L’istesso tempo
主題旋律和声進行そのままに、内声十六分音符動き加わった変奏テーマと同じpに始まるが、後半部分は徐々に音域広がりオルガン思わせる重厚な響き締めくくられる。

第2変奏Sempre espressico ed assai legato
第1変奏同じく内声部に変奏施される音楽流れとしては第1変奏とほぼ変わらないが、内声部の動き三連十六分音符となったことで、音楽動きある流れ加えられる

第3変奏Grave assai
冒頭序奏的な部分から始まるが、これはそれまで音楽対照的に半音階的進行音域広がり特徴的な音楽である。pの静かな半音階下行ののち、主題旋律冒頭奏でられたかと思うと、急激なデュナーミク変化と共に重音アルペッジョ即興的な動き一気奏される49小節目)。その後再び主題旋律冒頭現れるも、断片的なままに終わり、その余韻残したままppp消え入るように曲がとじられる。このような極端なデュナーミク使用音色変化半音階的手法は、レーガーオルガン作品によく見られ彼の音楽特徴づけるものの一つである。

第4変奏Vivace
三十二分音符中心とした、動きあるリズムによる変奏である。オルガン的な第3変奏とは異なり、非常にピアニスティックな半音階進行満たされ音楽となっている。一見譜面見ただけでは主題見当たらないように思われるが、細かい三十二分音符中にしっかりと旋律主題組み込まれている。本来の主題和声進行しっかりと基づいた華麗な音楽である。

第5変奏Vivace
第4変奏引き続き、ピアニスティックな変奏。しかし、ここで主題旋律断片的に扱われ、「F(ファ)B(シ♭)C(ド)Des(レ♭)C(ド)A(ラ)B(シ♭)」を一つ要素として、変奏繰り広げられる三十二分音符奏されるオクターヴ同音連打特徴的なきらびやかな音楽である。

第6変奏Allegro moderato
両手オクターヴによる堂々とした響き始まり終始広い音域華麗な音楽繰り広げられる主題旋律冒頭が目立つ変奏だが、主題旋律しっかりと一通り要素的取り入れながら自由な変奏成されている。また、重低音重厚さ和声進行忠実なアルペッジオは、レーガー独自の手法というよりもむしろ、彼が尊敬していたブラームス音楽思い起こさせるだろう。

第7変奏Adagio
ピアニスティックで華やかな変奏続いたのち、この変奏は再び序奏的な部分から始まる。終始pp以下という静けさの中、短2度の上行を中心に音楽は進むが、次第主題旋律一部断片的に現れ始める(121小節目〜)。そしてその終わりは、主題旋律終結部明確に提示し、下声部半音階的動き三連符響かせながら幕をとじる。

第8変奏Vivace
再び、ffというデュナーミクとともに華麗な即興的変奏が始まる。この変奏扱われるのは主題旋律冒頭のみであり、それが断片的に、かつ要素的使用される以外は、主題旋律提示がない。これまでのh mollという調性から調号なくなってC durとなるが、実際めまぐるしい調性変化とともに重厚な和音連続重音のアルペッジオが繰り返されている。レーガーオルガン作品にも多く用いられ彼の音楽の特徴といえる和音重音連続的上行が、終始ふんだんに盛り込まれ音楽である。

第9変奏Grave e sempre molt espressivo
ここは、呼吸を置くようにゆったりとした変奏となる。調性がH dur変わり長調響きの中で主題冒頭提示される。しかし、音楽支えているのは主題旋律ではなく、その下声部置かれ三連符半音階的進行する和音である。主題旋律は、非常にゆったりとしたテンポのなか基本的に単音奏でられているが、下声部和音音楽一貫して支配しており、独特の響き生み出している。

第10変奏Poco vivace
14変奏中、最も短い変奏である。明確な主題提示がなく、低音流れあるオクターヴと、それに支えられ半音階進行特徴的である。続く第11変奏とともに間奏曲的な役割の強いものだと考えられる

第11変奏Allegro agitato
第10変奏に次ぐ短さであるこの変奏は、同じく主題提示がないという点も含めて第10変奏とともに間奏曲としての役割が強いと考えられるだろう。しかし、変奏自体第10変奏と対をなすものである流れるような第10変奏とは異なり迫り来る勢いと厚みのある音楽である。

第12変奏Andante sostenuto
この変奏も、下声部重厚な和音進行支えられながら、比較的に自由な旋律奏でられる。しかし、ようやく後半部分(211小節〜)に主題旋律終結部用いられる。しかしこの主題しっかりと最後までとじられる事はなく、再び重厚な和声進行中に溶け込むようにして、長調響き締めくくられる。

第13変奏Vivace
華やかな旋律のうちに、わずかな主題旋律要素残しながら、華麗に奏でられる変奏である。この変奏で再びh moll戻ったことでようやく、この音楽ところどころ主題響き感じ取ることができるかもしれないそれほどまでに主題旋律そのものの形がなくなっているのだが、一貫して大変技巧的に華やか印象的な音楽である。

第14変奏Con moto
最後変奏であるこの曲は、第13変奏流れ受け継ぎながら、重厚さ増したものになっている。そして何より言及すべき事は、最低音部にてオクターヴ主題旋律堂々と奏されていることである。短い間奏挟みながら主題旋律荘厳に鳴り響くさまは、まるでオルガンのペダル声部のようであるが、まさにこの手法、つまり、作品終結部において主題を再びペダル声部オクターヴ鳴り響かせる手法を、レーガー自身大規模オルガン作品(コラール・ファンタジー)で必ず用いている。こうしたレーガーお決まりの手法のもと、音楽最高潮盛り上がり迎え、その勢いと音量失わないまま、これまで最大デュナーミクとともに幕が閉じられる

フーガSostenuto
この作品エピローグとして位置する曲であるが、このフーガ用いられている主題は、これまでのものとは異なる全く新しいものである。つまり冒頭255258小節)と第2部333336小節)に現れる2つ主題による二重フーガであり、第1〜14変奏用いられた「バッハ主題」ではない。しかし、この二重フーガ主題は全く関連性のない新しものというわけではなく第14変奏冒頭の音型に由来している。
レーガーはここで、あえてこれまでのバッハ主題ではなく自身変奏の中で生まれた新たな要素フーガ主題として用いて作品全体をまとめ締めくくりたかったのかもしれない音楽作品最後長大フーガでとじるという手法は、ドイツ音楽において常套手法である。しかしレーガーは、その伝統的手法をしっかり取り入れながらも、その中に独自の新しさ求め実践したのだということが、この大規模な変奏曲から考えることができるだろう。



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