旅行者下痢症
海外旅行者がおこす下痢を旅行者下痢症と呼び、感染性腸炎がその大部分を占める。途上国に1カ月間滞在した旅行者の約30%以上が、本症を発症するとされている。病原体としては病原性大腸菌、サルモネラ菌、キャンピロバクターなどが多く、通常は数日の経過で軽快するが、赤痢菌やコレラ菌などにより、重篤な症状を呈する例も時にみられる。原虫や寄生虫が原因になる下痢は慢性の経過を辿ることが多い。
本症の予防にはミネラルウオーターや煮沸した水を飲用すること、食品はなるたけ加熱したものを摂取することなどが重要なポイントである。食事をする店も衛生状態の良い店を選ぶよう心がける。リスクの高い旅行者には止痢剤(乳酸菌製剤など)を持参させ、症状があれば服用させるようにする。下痢が強い場合は、電解質飲料などで水分補給に努めるように指導する。
帰国後に下痢症状を呈している患者については、便の細菌培養と寄生虫検査(直接塗沫法、集卵法)を行い病原体を明らかにする。暫定的な治療には、ニューキノロン系抗菌剤やアジスロマイシンが推奨されている。(濱田篤郎)
参考:検疫所ホームページ http://www.forth.go.jp/tourist/useful/03_t_lo.html
旅行者下痢
(Traveler's diarrhea から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 02:04 UTC 版)
旅行者下痢(りょこうしゃげり)は、渡航者下痢とも呼ばれ、主に国外旅行者が滞在先、あるいは帰国後10日以内に3回/日の下痢症状が起こった状態である[1]。複数の病原体が原因になることもある[2]。
- ^ a b c d e f g 旅行者下痢症について 海外邦人医療基金
- ^ 熊谷正広,吉川晃司、「海外渡航者の下痢への対応 」 medicina 40巻2号 (2003年2月)p.272-275, doi:10.11477/mf.1402102519(有料閲覧)
- ^ 上田泰史,鈴木則彦,宮城 文 ほか、「海外旅行者から発見された赤痢患者および検出赤痢菌についての解析 1979年∼1995年の成績」 日本細菌学雑誌 1997年 52巻 4号 p.735-746, doi:10.3412/jsb.52.735
- ^ 齊藤剛仁,大石和徳、「海外由来の腸管感染症の実態と問題点」 日本内科学会雑 2016年 105巻 11号 p.2126-2132, doi:10.2169/naika.105.2126
- ^ a b c 旅行者の下痢 MSDマニュアル プロフェッショナル版
- ^ a b c お役立ち情報 止まらない下痢 FORTH 厚生労働省海外検疫所
- ^ プレジオモナス・シゲロイデス感染症とは 国立感染症研究所
- ^ 吉田昭夫,野田孝治,大村寛造 ほか、「海外旅行者下痢症の細菌学的研究 (4) 1984~1991年大阪空港における下痢原因菌検索成績」 感染症学雑誌 1992年 66巻 10号 p.1422-1435, doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.66.1422
- ^ 木村明生,峯川好一,北浦敏行 ほか、「海外旅行者下痢症患者における腸管原虫検出について」 感染症学雑誌 1987年 61巻 7号 p.789-796, doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.61.789
- ^ FORTH|お役立ち情報|ここに注意!海外渡航にあたって|旅先で下痢になったら FORTH 厚生労働省海外検疫所
- 1 旅行者下痢とは
- 2 旅行者下痢の概要
- 3 治療
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