離婚に関する調停 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
「家事調停」の記事における「離婚に関する調停 (日本)」の解説
日本では、離婚件数全体のうち協議離婚が80%台後半を占め、調停離婚が10%前後を占め、裁判離婚が数%程度を占めている。 離婚は人事訴訟の対象となるから(人事訴訟法2条1号)、家事調停の対象にもなる(家事事件手続法244条)。離婚は、家事事件手続法別表第二に含まれない事項であり、合意に相当する審判の対象にもならない事項なので(同法277条1項)、離婚調停 は「一般調停」に分類される。 民法は単独親権制(離婚後は父母の一方のみが未成年の子の親権者となる制度)を採用しているので(819条)、未成年の子のいる離婚調停の当事者は、親権の帰属についても話し合う必要がある。また、離婚訴訟において、当事者は子の監護に関する処分、財産分与に関する処分又は年金分割に関する処分の申立てをすることができるので(人事訴訟法32条1項)、離婚調停においても、当事者は養育費、面会交流、財産分与、年金分割などを求める申立てをすることが認められている。 ところで、別居親と子との面会交流が充実しているほど別居親の養育費の履行率が高くなるし、逆も成り立つことは、世界共通の現象である。しかし、次に述べるように、日本の離婚制度には、当事者の感情的対立を緩和するという調停制度の良さを壊してしまう危険が数多く含まれている。 まず、民法は純粋な無過失離婚( no-fault divorce ;一定期間の別居などの客観的な基準だけで裁判離婚を認めること)を採用しておらず(770条)、また、有責配偶者からの離婚請求が原則として認められない。そのため、離婚調停で離婚の当否自体が争われると、離婚を要求する当事者も、離婚を拒む当事者も、相手当事者の非を事細かに主張する傾向がある。 また、離婚訴訟において、離婚請求と、離婚請求の原因事実から生じた損害の賠償請求とを併合することが認められるので(人事訴訟法17条1項、2項)、離婚調停においても、当事者が併せて慰謝料を求める申立てをすることが認められる。そして、日本の裁判実務は離婚自体慰謝料(婚姻関係を破綻させたこと自体を理由とする慰謝料)の請求を認め、離婚自体慰謝料の請求原因事実は、不貞や家庭内暴力のように、違法であることが明確な行為に限られないと解釈している。そのため、当事者双方とも、相手当事者の不当な言動を数多く主張立証して優位に立とうとする傾向がある。 さらに、日本は、親子交流支援の面でも、ひとり親支援 の面でも、改善が遅い法域と言われる。つまり、養育費確保支援が不十分なために、同居親は、離婚慰謝料を獲得するために別居親を攻撃して、報復感情の充足と養育資金確保の両方を図ろうとする。また、面会交流支援が不十分なために、当事者双方が子の親権を希望して相手当事者を攻撃したり、逆に、別居親が最初から親子交流の維持を諦めて、面会交流も養育費の負担も拒否することが少なくない。そのうえ、日本にはステップファミリー(拡大家族)という家族観(未成熟子と血縁や養育関係のあるすべての人が家族であるという家族観)が未定着であり、同居親の別居親に対する嫌悪感自体を面会交流の子への悪影響と捉える傾向も残っている(母子密着に寛容という文化的背景がある。)。こうした背景が、同居親が面会交流を単なる面倒ごととみなす傾向に拍車をかけている。 韓国(後述)等における運用にも刺激を受けて、こうした状況を少しでも改善しようと、大阪家庭裁判所が2015年(平成27年)11月から「親ガイダンス」を開始し、未成年の子のいる離婚調停の当事者に対して、子の利益を中心に置いた話し合いをするよう促している。同種の取組は、その後、各地の家庭裁判所に広がっている。 離婚をする調停を電話会議による期日で成立させることは認められていない(家事事件手続法268条3項、54条1項)。また、離婚の意思表示を代理人にさせることはできないと解釈されている。そのため、家庭裁判所の実務では、離婚をする調停を成立させるには、当事者双方の本人が同じ期日に家庭裁判所に出向く必要があると解釈されている。相手当事者に対する恐怖や仕事の都合などで出席できないと主張する当事者本人がいるときは、調停委員会が電話などでその当事者本人の意思確認をした上で、調停に代わる審判をすることが多い。 東京家庭裁判所には、人事訴訟において、当事者本人の一方が期日に出席していなくても離婚をする和解を成立させる運用をしている裁判官がいるが、日本全土に普及している運用ではない。離婚調停においては、同種の運用は見られない。
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