野生生物への関心
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/21 21:30 UTC 版)
「エバーグレーズの復元」の記事における「野生生物への関心」の解説
都市圏が原野に進出してくることが野生生物に少なからぬ影響を与え、動物種の中にはエバーグレーズ地域で絶滅を危惧されるものもある。絶滅を危惧される種の保護から恩恵を受けた動物はアメリカアリゲーターであり、その掘った穴が他の動物にとっても逃げ場となり、特に乾季に多くの種が生き残る場となることが多い。このアリゲーターはかつてエバーグレーズに豊富にいたが1967年に絶滅危惧種に挙げられた。しかし、連邦政府と州の組織が共同して活動し、アリゲーターの狩猟を禁じたことで個体数が戻って来た。1987年には十分に回復したと宣言され、もはや絶滅危惧種ではない。しかしアリゲーターのテリトリーと平均的な体重は過去よりも概して小さくなったことが分かっており、個体数が減少しているので、旱魃時における役割も限られたものとなっている。 アメリカワニも地域の固有種であり、1975年から絶滅危惧種に指定されている。同じワニ目に属するアリゲーターとは異なり、三角江や海岸など汽水や塩水の生息域で繁殖する傾向にある。その最も重大な脅威は人間による妨害である。人間に接触することが多いと、メスはその巣を放棄することになる。特にオスは、大きなテリトリーをうろついたり、アメリカ国道1号線やフロリダキーズのカードサウンド道路を横切ろうとして、自動車に轢かれることが多い。南フロリダには500ないし1,000頭のアメリカワニが生息していると推計されている。 エバーグレーズ地域の動物で近絶滅種となっているのはフロリダパンサーである。かつてはアメリカ合衆国南東部の全体に生息していた。1995年時点で、野生の状態では僅か25ないし30頭とされている。パンサーは都市の拡大侵略で最も脅威を受けた動物である。オスは繁殖のために約200平方マイル (520 km2) のテリトリーを必要としているからである。1頭のオスと5頭のメスがこの範囲内に生息している。その生息域が失われると、テリトリーを求めて他のパンサーと争うことになる。パンサーの死因は自動車との衝突が第1位であり、それに次いで多いのがパンサー同士の争いによる死である。1990年代、ネイプルズ やフォートマイヤーズなどの都市がエバーグレーズ西部やビッグサイプレス湿地の中に拡大を始めた都市圏の拡大によって、フロリダ州南西部でのパンサーの生息域を狭めた。工兵司令部やアメリカ合衆国魚類野生生物局などの機関が清浄水法と絶滅危惧種法の維持に責任があったが、それでも湿地とパンサーのテリトリーでの建設許可申請を99%承認していた。限界ある遺伝子の保存も危険な状態にある。生物学者達が1995年に、遺伝子の多様化のためにテキサス・クーガーのメス8頭を導入したので、2008年時点では野生の状態のパンサーが80ないし120頭となっている。 動物種の中で恐らく最も劇的な現象は渉禽類である。その数は観察者の証言によって19世紀後半に約250万羽だったと推計された。しかし、ユキコサギ、ベニヘラサギ、アカゲサギが、婦人帽の彩豊かな羽飾りに使われたために狩られて、絶滅の寸前まで至った。その流行が過ぎ去った1920年頃の後、1930年代にはその数が回復してきたが、さらにその後の50年間で、中央・南フロリダの治水・排水事業 (C&SF) の動きがその個体数増加を妨げていた。運河が建設されたとき、自然の水流がフロリダ湾海岸に近いマングローブ林によって制限されていた。1つの雨季から次の雨季に掛けて、水が治水・排水事業 (C&SF)によって引かれたので、魚類が伝統的な産卵孵化場所に辿り着けなかった。鳥類はその餌を漁るために巣から遠くまで飛んでいく必要があった。1970年代までに、鳥類の数は90%減少した。鳥類の多くが食物源に近い水質保全地域にある小さなコロニーに移動したので、その数を数えることが難しくなった。現在も、運河が建設される以前の数よりもかなり少なくなったままである。
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