道州制特区推進法から平成末期まで
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「道州制」の記事における「道州制特区推進法から平成末期まで」の解説
平成になって道州制の論議が活発になった背景には、国民の間では、交通網の発達によって交流圏が拡大した点を挙げる者が多いが、自治体関係者の間では、国家の債務が膨大になって、地方交付税や補助金や公共事業の削減で、地方が国の失政の尻拭いをさせられている点を挙げる者が多い。 道州制が施行される場合には州庁が設置されるため、各都道府県では、自らの都道府県庁所在地が州庁所在地に選ばれるのに有利な枠組みが、論議の中心となっている。これは、廃藩置県後の県の合併で、県庁を失った地域でも同様である。また、州庁が置かれる都市は、経済の中心地となって莫大な恩恵を受けて、税収増や人口増が期待されている。 実際に、道州制へ賛成派と反対派の特徴を見ると、府県庁所在地が中央省庁のブロック単位出先機関所在地である宮城県・愛知県・大阪府・北海道などが、また多くの政令指定都市などが賛成派なのに対して、県庁所在地が中央省庁のブロック単位出先機関所在地ではない福島県・富山県・福井県・兵庫県・鳥取県・三重県が反対派となっている。 一方で、国は「小さな政府」と称して政府機関を縮小し、地方への交付金を削減しつつ、地方への統制の強化と合理化を進めている。これは、市町村を大量に削減し、次いで広域自治体である県を大量に削減しようという発想としての道州制で、中央集権の強化という色が濃い。政府の道州制論議や、その前段階の三位一体の改革では、国の行政機関・機能・財源を都道府県に委譲するのを拒み、都道府県や市町村の「住民自治」の部分のみを「小さな政府」として、国は依然として統制権の強い「大きな政府」に留まろうとする意見が散見されるために、全国知事会では反発がある。 2006年2月28日に地方制度調査会が区域例を発表した際には、石原慎太郎・東京都知事(当時)や、橋本大二郎・高知県知事(当時)が、「国と地方の役割分担をどうするのかが曖昧だ」と批判した。同じく片山善博・鳥取県知事(当時)も、「国の在り方についての抜本的な議論が無い」と批判した。 同じく、佐藤栄佐久・福島県知事(当時)は、「必要性や課題を十分検討しないまま、『枠組み』を前提に制度設計が示された。道州制に移行できなければ権限や税財源を移譲できないという口実を与え、強く憂慮する。」と非難した。これに先立つ2006年2月22日の福島県議会でも、「歴史的・文化的に多様である地方自治体を中央集権的にコントロールする物であり、住民主役の真の地方分権改革とは対極にある。」と発言し、道州制を非難した。又、井戸敏三・兵庫県知事(当時)は、「ムードに流されて進めれば、単なる都道府県合併に終わる」と発言している。 道州制特区推進法の制定によって、現在の「道」と国の出先機関の地方区分が同一である北海道において、権限を新たな「道」に委譲し、やがて全国へと道州制を拡大していこうとしている。道州制に向けてのビジョン策定は、安倍晋三が、自らの選挙区である中国地方の山陽地方と山陰地方の格差を例に挙げて、総裁選で公約し、担当大臣も置いた。 反対派からは、「単なる都道府県の合併ではないか?」という見方や、合併ならば都府県庁を失う地域が軽視されるという危惧から、国民の関心は低い。 全国世論調査では、道州制に「賛成」・「どちらかといえば賛成」を含めて29%、「反対」・「どちらかといえば反対」を含めて62%であった。但し地方分権に「賛成」は62%になった。また地域ごとでは賛成は北海道、東北、四国で多く、反対は甲信越、九州で多い。「平成の大合併」で住んでいる市町村が合併した人の感想は、「合併して良かった」が19%、「合併しない方がよかった」が17%とほぼ変わらないのに対して、「どちらとも言えない」が63%に上った。 — 日本世論調査会調べ(期間2006/12/2-3、面接調査) このため、国土交通省の国土形成計画では、地方ブロック単位での独自の国際交流や、特色ある地域形成を目指す内容を盛り込んで、地方ブロックを道州に見立てた計画として、道州制のイメージの理解に努めたりしている。また、議論の叩き台として、11道州案や国土形成計画を用いた具体的な調査検討に入るなど、道州制を定着させるための様々な策を講じている。さらに、道州制と新型交付税を組み合わせて導入すると、政府は地方への歳出の削減度合が高まり、増税も抑制できる、というような意見も多い。このような点を実感を伴って理解されるには、国民に道州制という地方自治の方向性を浸透させる相当の時間を要すると見られる。
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