衛星放送向けの番組作りによる改善
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 04:03 UTC 版)
「日本における衛星放送」の記事における「衛星放送向けの番組作りによる改善」の解説
長らく不振が続いていた衛星放送であるが、地上波(特にローカル局)では放送が難しい番組(海外ドラマ・民放系子供向けバラエティ・特定趣味系バラエティなど)や、高視聴率を重視しない番組製作(ナレーションのみの旅番組・経済番組・日本史バラエティなど)が可能となっている側面もある。また巨人戦を中心としたプロ野球中継は年を追うごとに中継本数を増やしており、BSデジタル放送の普及や認知度向上の面で貴重なコンテンツになりつつある。また、オリジナルのテレビドラマを制作する局も現れ、特にキー局系の地上波ではほとんど放送されなくなった時代劇の新作製作や、地上波で放送されていた時代劇の過去作を積極的に放送する動きが見られるようになった。また、海外作品では韓国ドラマも2010年代以降はBSでの放送を主軸に移している。2時間ドラマは2010年代の終盤になってほとんどの系列が相次いで地上波の新作放映枠を廃止された。 キー局系のBSデジタル事業者5社では、2005年に定期的にアンケート調査によりBSデジタル放送への接触率を調べる「BSパワー調査」を開始した(2012年現在はBS11を加えた6社が対象)。2010年8月現在では、ゴールデンタイムにおける5社合計の接触率が平均15.3%にまで上昇するなど、視聴者が徐々に定着しつつあることが数字にも現れている。2015年4月からは機械式調査に移行しており、地上波とは若干計測条件が異なるものの視聴率調査が実現している。 一方で、2007年より同様に始まったCSデジタルの独自調査である「機械式ペイテレビ接触率調査」(衛星テレビ広告協議会が関東・関西を対象に実施)の「プラットフォーム別世帯到達率」ではCSデジタルがBSデジタルを大きく上回っている状況であった。 とはいえ2008年3月期には民放キー局系列5局すべてが黒字化するなどの明るい材料もあり、少しずつではあるが魅力あるコンテンツを生み出せる状況が生まれつつあった。 スポンサーの一部からは「地上波は毎分視聴率に捕らわれ過ぎ。BSデジタルの方が全体として満足感のある番組作りができる」との声もあり、地上波とは異なる「(65歳以上のシニア層を中核とした)ゆとりのある番組」を提供しようとする企業が増え、若年層向け番組が主体になりつつある地上波番組とは対照的に、かつて地上波で放送されていた日本の2時間ドラマ(ほぼミステリー・サスペンスものの作品)の再放送のほか、前述の時代劇・プロ野球中継・アジアドラマ(主に韓国・中国・台湾など)や、演歌・昭和歌謡系の音楽番組などの高齢者層をターゲットとした番組が中心のため、地上波ではほとんど見られなくなったジャンルの番組が増えつつある。また、『噂の!東京マガジン』(TBSテレビ→BS-TBS)、『カーグラフィックTV』(テレビ朝日→BS朝日)のように製作局を地上波局からBS放送局に直接移行した番組や、『演歌の花道』(テレビ東京→BSテレ東)や『サウンド・イン"S"』(TBSテレビ→BS-TBS)、『ベストヒットUSA』(テレビ朝日→BS朝日)、『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日系列局→BSJapanext)のような地上波で放送されていたものの復活番組に、『笑点 特大号』や『それいけ!アンパンマンくらぶ』(両番組共にBS日テレ制作)のような地上波のスピンオフ番組も存在する。 報道番組では『BSフジLIVE プライムニュース』(2009年4月開始)を嚆矢として、BS各局では政治家や経営者等のロングインタビューを売りとする番組が相次いでスタートしているが、制作者サイドからは「分単位の視聴率に追われる地上波では、バトルと呼ばれる過激な討論がみられるが、BSでならバトルをあおらず、落ち着いた議論をする報道番組を作れる」との意見もある。 特に地上波局のネットワークを持たないBS11は、2010年度決算での黒字化以降は独自番組や地上波キー局以外の独立系テレビ局との共同制作番組の増強や2012年春季にアニメ放送本数を倍以上に増強する等強気の経営方針を打ち出し、売上高・営業利益ともに衛星放送局ではほかに類を見ない躍進を続けている。 こうした取り組みもあり、2000年代後半以降、衛星放送は広告収入の増加傾向を示し、BS放送はデジタル放送開始当初の赤字状況から好転しつつある。かつては単独一社提供番組や特定スポンサーによるスポットの大量出稿が多かったが、地上波の様な複数社による広告出稿へと変化している。 直接テレビを視聴する時間は低下しているがHDDレコーダ等の録画機器で録画した番組を視聴する時間は増加していることもあり、特にタイムシフト視聴率においてランキング上位を占める海外ドラマ・アニメ・映画がよく放送され、これらが録画・再生される確率が著しく高い衛星放送の利用も増加し、視聴者数と視聴時間の伸びが衛星放送関連市場成長の原動力となっている。
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