著作とハーンドンのその後の人生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 05:21 UTC 版)
「ウィリアム・ハーンドン」の記事における「著作とハーンドンのその後の人生」の解説
ハーンドンは、法律実務会社が成功し、選挙で選ばれたり指名されたりする様々な役職に就いたので、中年までは快適な生活を送っていた。しかし、南北戦争後は、投資の失敗、銀行の破綻、親戚や友人への寛大過ぎる支援、および収入が減っても倹約できなかったことなどで、財政的に厳しい状況になった。 1869年までに貧窮し、自宅を差し押さえられるまでに行っていたが、当時リンカーン伝記のゴーストライターとして協力していたウォード・ヒル・ラモンが支援を申し出た。ハーンドンはリンカーンの知人達との往復書簡原本を閲覧させ、写しを渡し、現金2,000ドルと印税2,000ドルまでを受け取る合意と引き換えに、少なくとも10年間はハーンドンがリンカーンの伝記を出版しないという合意書を交わした。ハーンドンが自身のリンカーン伝記を出版できるようになった時までに、続いていた財政的問題やアルコール使用障害など様々な個人的障害があり、ハーンドンは資料の山を一貫した文章に組み立てることができない状態になっていた。 1870年代後半のある時点で、ハーンドンはインディアナ州出身でリンカーンの賞賛者であるジェシー・W・ワイクとの文通を始めた。このころまでに、リンカーンが死んだ時は子供だったワイクのようなリンカーンに心酔する人が増えてきており、ハーンドンに手紙を送って、リンカーンに関する記憶に関わるもの、特に身の回り品や自筆原稿などを求めるようになっており、ハーンドンは無料で応じざるを得ないことが多かった。ハーンドンが若いワイクに、所有する法的文書の山の中からリンカーンの自筆原稿を送ったとき、ワイクは感謝を込めてハーンドンに手紙を送り続け、このとき始まった友情が遅れていたリンカーン伝記の完成に繋がることになった。 意欲的な書き手だったワイクは、スプリングフィールドにあったハーンドンの農園や、インディアナ州グリーンキャッスルにあったワイクの自宅で会合することが多くなった。グリーンキャッスルにはワイクの父が雑貨店を構えており、ハーンドンも招待されることが多かった。ハーンドンは、自分で伝記を完成させることができないこと、完成させるとすれば助けが必要なことを認め、若いワイクにその伝記材料を与え、自身の記憶するリンカーンについて常に言葉で丁寧に伝えた。2人の共同作業は、それぞれの文章の書き方が著しく異なり、どのような伝記を作り上げるかという思いが異なっていたために、議論になることが多かった。ワイクは編年体で編んでいくことを好んだが、ハーンドンは基本的に家庭生活、法律実務、政治哲学などに分類した懐古談を緩く結びつけていく形を望んだ。しかし二人は互いに完全に依存し合っていることを認識していたので作業が続けられた。ワイクはハーンドンに史料と直にリンカーンに接していた故の証言を求めており、ハーンドンはワイクに原稿を創り出すエネルギーと増加する資金の援助を頼っていたので、それらが二人の関係を続けさせる絆になった。 二人の共同作業の成果である『ハーンドンのリンカーン:偉大な人生の真の話』は1889年にベルフォード・クラーク・アンド・カンパニーから3巻本で出版された。実際に原稿の大半を書いたのはワイクであり、共著者として認められた。この書は、リンカーンの母の庶出(さらにはリンカーン自身のそういう噂まで)、ハーンドンの長い間の宿敵だったメアリー・トッド・リンカーンに関する時として悪意のあるような否定的表現、エイブラハム・リンカーンの自殺願望、アメリカ史の中でも急速に崇拝され美化されていた殉教者大統領について聖人とは決定的にかけ離れた証言といったありのままの事実を含んでいたために、様々な評価を受けた。 この書を非難した中でも特に厳しかったのがリンカーンの長男ロバート・トッド・リンカーンであり、そのハーンドンに対する敵意は、アン・ラトリッジが父リンカーンの人生で唯一のロマンスの相手であるという証言が一番大きく影響したものだった。出版社の事業に問題があり、財務も好くなかったことに、当初の売り上げがはかばかしくなかったことも手伝って、二人の共著者への印税は僅かなものとなり、ハーンドンの分け前の大半はワイクから度々前借りしていた借金の返済に消えた。 1891年、ハーンドンはスプリングフィールドの北にあった自身の農園で、ほとんど貧窮のうちに死んだ。その死の時に、ハーンドンの所有していたリンカーンに関する史料や通信文の大半が共著者のジェシー・ワイクの所有に移され、その家族はその後50年間保存し続けた。ハーンドンはリンカーンの墓があるスプリングフィールドのオークリッジ墓地に埋葬されている。
※この「著作とハーンドンのその後の人生」の解説は、「ウィリアム・ハーンドン」の解説の一部です。
「著作とハーンドンのその後の人生」を含む「ウィリアム・ハーンドン」の記事については、「ウィリアム・ハーンドン」の概要を参照ください。
- 著作とハーンドンのその後の人生のページへのリンク