給付要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 15:11 UTC 版)
第99条(傷病手当金) 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。) 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の九月三十日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。) 前項に規定するもののほか、傷病手当金の額の算定に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して一年六月を超えないものとする。 以下のすべての要件を満たした被保険者に支給される(第99条1項)。 業務外の事由による傷病であること。業務または通勤を原因とする疾病、負傷については労働者災害補償保険(労災保険)が適用となり、健康保険は傷病手当金を含め一切適用できない(健康保険は業務外の傷病を対象とする)。 被保険者が5人未満である小規模な適用事業所に所属する法人の代表者であって一般の労働者と著しく異ならないような労務に従事している者については業務上の事由による疾病等であっても健康保険による保険給付の対象とされる(第53条の2)。従来、当面の暫定措置とされていて(平成15年7月1日保発0701002号)、さらに傷病手当金は本措置の対象外であるため支給しないとされてきたが、平成25年の法改正により第53条の2が追加され前述の通知が廃止されたことで、このような場合でも傷病手当金が支給されることとなった。 療養中であること。健康保険で診療を受けることができる範囲内の療養であれば、実際に保険給付として受けた療養でなくてもよく、自費での診療や、自宅での静養でも支給される(昭和2年2月26日保発345号、昭和3年9月11日事発1811号)。ただし、日雇特例被保険者の場合は、労務不能となった際にその原因となった傷病について療養の給付等を受けていなければならない(第135条1項)。 労務に服することができないこと被保険者(任意継続被保険者・特例退職被保険者を除く)が疾病や負傷により業務に従事できないことを指す。必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業務の種別を考え、その本来の業務に堪えうるか否かを標準として社会通念に基づき認定する(昭和31年1月19日保文発第340号)。つまり、現実に労働不能の体調でなくても、その被保険者が従事している労務に就労できない状態になっていればよい。具体的には、以下のような事例の場合は支給される。休業中に家事の副業に従事しても、その傷病の状態が勤務する事業所における労務不能の程度である場合(昭和3年12月27日保規3176号)。 傷病が休業を要する程度のものでなくとも被保険者の住所が診療所より遠く、通院のため事実上労務に服せない場合(昭和2年5月10日保理2211号)。 現在労務に服しても差支えない者であっても、療養上その症状が休業を要する場合(昭和8年2月18日保規35号)。 病原体保有者が隔離収容されたため労務不能である場合(昭和29年10月25日保険発261号)。かつては「発病を認められない限り保険事故たる疾病の範囲に属しないので傷病手当金は支給しない」(昭和11年保規178号)との取り扱いとなっていたが、病原体保有者に対する法の適用に関しては、原則として病原体の撲滅に関し特に療養の必要があると認められる場合は、自覚症状の有無にかかわらず伝染病の病原体を保有することをもって保険事故たる疾病と解するものである。 本来の職場における労務に対する代替的性格を持たない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより賃金を得るような場合(平成15年2月25日保保発0225007号)。報酬を得ていることを理由に直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかの判断をする。 一方、以下のような事例の場合は支給は認められない。医師の指示又は許可のもとに半日出勤し、従前の業務に服する場合(昭和32年1月19日保文発340号) 就業時間を短縮せず、配置転換により同一事業所内で従前に比しやや軽い労働に服する場合(昭和29年12月9日保文発14236号) 労働安全衛生法の規定により伝染の恐れがある保菌者に対し事業主が休業を命じた場合で、その症状から労務不能と認められない場合(昭和25年2月15日保文発320号) 療養の給付をなさないこととした疾病等(美容整形手術等)について被保険者が自費で手術を施し、そのため労務不能となった場合(昭和4年6月29日保理1704号) 負傷のため廃疾となり、その負傷につき療養の必要がなくなったとき(昭和3年10月11日保理3480号)。労務不能であっても療養のための労務不能ではないので支給しない。 休業期間が3日間を超えるとき。連続する最初の3日間は待期として傷病手当金は支給されない。例えば「休休休休」の場合は待期完成であるが、「休出休休」は待期は完成していない(昭和32年1月31日保発2号の2)。この3日間に公休日や祝祭日、年次有給休暇取得日が含まれていてもよく、また報酬を受けていたとしても、待期は3日間で完成する(昭和2年2月5日保理659号、昭和26年2月20日保文発419号)。 待期は、就業時間中に労務不能となった場合はその日から、就業時間終了後に労務不能となったときはその翌日から起算する(昭和28年1月9日保文発69号)。就業時間が午前0時をはさんで2日にわたる場合は、暦日によって判断し、労務不能となったその日から起算する(昭和4年12月7日保規488号)。 待期は、同一の傷病について1回完成させれば足りる。したがって、待期を完成し傷病手当金を受給した後に、いったん労務に服したものの、再び同一傷病について労務不能となった場合には再び待期を完成させる必要はない(昭和2年3月11日保理1085号)。 連続3日間労務不能で第4日目に労務に服し、第5日目以後再び労務不能となったときは、療養のため労務に服することのできない状態が同一傷病につき3日間連続していれば、すでに待期は完成したものとして取り扱われる。 したがって、「休休休休出休」「休休休出休」の何れの場合でも待期はすでに完成しており、前者の場合は第4日目、後者の場合は第5日目から支給を行う(昭和32年1月31日保発2号の2)。 船員保険の場合は、3日間の待期要件は不要である。したがって、休業初日から傷病手当金が支給される。 日雇特例被保険者においては、保険料納付要件を満たすこと。日雇特例被保険者が傷病手当金の支給を受けるためには、その疾病又は負傷について、初めて療養の給付を受ける日の属する月の前2月間に通算して26日分以上又は前6か月間に通算して78日分以上の保険料が、その日雇特例被保険者について納付されていなければならない(第135条1項)。 被保険者資格取得前の傷病であっても、資格取得後の療養について上記の要件を満たしたときは、傷病手当金は支給される(昭和26年5月1日保文発1346号)。事業主の保険料未納を理由として被保険者が傷病手当金を受けられないことはない(昭和25年3月9日保文発535号)。なお被扶養者に対しては傷病手当金は支給されない。
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