任意継続被保険者(にんいけいぞくひほけんしゃ)
任意継続被保険者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:15 UTC 版)
以下のすべての要件を満たす者は、保険者に申し出ることによって、被保険者資格喪失後も継続して当該保険者の被保険者となる(第37条。「任意継続被保険者」、「任意継続加入員」、「任意継続組合員」などと呼ばれるが、以下、本項では「任意継続被保険者」で統一する)。任意継続被保険者は一般の被保険者資格を喪失した日に、その資格を取得する。家族等も被扶養者として加入する事ができ、要件は基本的に在職中の被扶養者認定の場合と同様である。 適用事業所に使用されなくなったため、又は適用除外の規定に該当するに至ったため一般の被保険者資格を喪失した者であること。任意適用事業所の取消によって資格を喪失した場合は任意継続被保険者となることはできない(昭和3年8月17日保理第2059号)。 資格喪失の日の前日まで継続して2月以上一般の被保険者(共済組合の組合員である被保険者を除く)であったこと共済組合の組合員は、共済組合の任意継続組合員制度の適用を受けるため、任意継続被保険者となることはできない。なお、共済組合等は「2月以上」が「1年と1日以上」となる場合が多い。 「2月以上」は、継続して2月以上であって、通算して2月以上でよいわけではない。原則として同一保険者であるが、加入していた健康保険組合が解散した場合には、保険者が自動的に全国健康保険協会に引き継がれるので「解散前後合わせて継続して2か月以上」ということになる。 船員保険の被保険者又は後期高齢者医療の被保険者等でないことそれぞれ当該制度がら給付を受けることができる者については、任意継続被保険者となることはできない。 資格喪失日(退職日の翌日)より20日以内に申し出ること 初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付したこと初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付しなければ、その者は任意継続被保険者とならなかったものとみなされる。 保険者は、正当な理由があると認めるときは、期間経過後の申出・納付の遅延であっても受理することができる。 しかし、原則地震等により金融機関の機能が麻痺した場合など、天災地変等を理由 とした未納以外は許容されないので、法律の不知、単純な払い忘れ、勘違い、口座振替の場合の残高不足、最寄の金融機関のATMが故障した、などの理由では被保険者資格の復活は認められない。これは、任意継続制度があくまでも任意による継続であるため、保険料納付の他各種届出等の事務を自ら行い、その結果(保険料の納付忘れ等の結果)はすべて自己に帰属するという一種の自己責任の法律論による。自己の責任または意思において資格が喪失したので、審査請求等法的な不服申し立ては正義に反し認められない。なお、総務省に対しあっせんの申し立てがあったため、1回目についてに資格の復活を認めやすくしている保険者もあるが、だからといって必ず認められるものではないことに留意すべきである。 任意継続被保険者は、以下のいずれかに該当するに至った場合、その資格を喪失する(第38条、カッコ内は資格喪失日)。 任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき(被保険者証に表示されている予定年月日)つまり、退職後も引き続き健康保険に加入することができるのは、最長2年間ということになる。 死亡したとき(死亡した日の翌日) 保険料(初めて納付ずべき保険料を除く)を納付期日までに納付しなかったとき(納付期日の翌日)保険料滞納喪失後の保険料納付はできず(督促状が送られることもない)、一度資格を喪失すると再度任意継続被保険者となることはできないが、保険者が未納について相当な理由があると認めた場合にはこの限りでない。 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき。(申出が受理された日の属する月の翌月1日)従来、一度任意継続被保険者となると、被保険者が任意に脱退することはできなかったが、2022年1月の改正法施行により、任意脱退が可能となった。任意継続から国民健康保険に切り替える場合や、被扶養者となる場合でも任意脱退を利用できる。従来の制度では、任意継続被保険者となって1年目は任意継続のほうが保険料が安かったのに2年目は国民健康保険のほうが保険料が安くなるケースがあったにもかかわらず被保険者が任意に切り替えることができなかった(国民健康保険は前年度の収入等により保険料を算定するため、退職直後は保険料が高くなり、収入がなければ次年度以降は安くなる場合がある。もっとも国民健康保険は市区町村ごとに保険料の計算方法が異なるため、任意継続といずれが有利であるかは旧制度であっても一概には言えなかった)。 就職して、一般の被保険者、船員保険の被保険者、共済組合の組合員となったとき(被保険者資格を取得した日) 後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき (被保険者資格を取得した日) 任意継続の保険料については、事業主負担がなくなるため、被保険者の全額負担となり、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。基本的に天引きの金額の約2倍から2.5倍になる(徴収する保険料の上限を設定している保険者もある)。各種の届出も事業主経由ではなく自ら行わなければならない。 納付後、同月内に健康保険(協会けんぽ、共済組合、健康保険組合、国民健康保険組合(厚生年金適用事業所に限る))の被保険者となった場合には後日還付される(ただし資格取得月を除く)。 任意継続被保険者の制度は大正15年の健康保険法制定時より存在する仕組みであり、国民皆保険が未達成であった当時は退職による無保険の回避が主な狙いであった。当初の任意継続要件は「資格喪失の前1年内に180日以上、又は資格喪失の際に引き続き60日以上被保険者であった者」とされ、加入期間は最大6か月とされた。その後の法改正で要件の緩和や加入期間の延長がなされ、現行の規定に至る。
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