第三者委員会による5項目の提言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 03:21 UTC 版)
「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事における「第三者委員会による5項目の提言」の解説
3月8日に第三者委員会は3回目の会合を開いて、3月12日に全柔連へ答申する女性理事の登用や暴力の根絶などを含む組織改革に向けた提言をまとめた。この提言は練習現場の視察や全柔連会長の上村や女子選手を含めた関係者20名ほどの聞き取りを踏まえたうえでのものだという(聞き取りを行った女子選手の中に告発選手が含まれていたかは明らかにされなかった)。笠間治雄委員長は「組織ということで考えれば、全柔連は未成熟。答申を受けたから良い組織になるわけではなく、今後の全柔連のやる気にかかっている」と発言した。また、委員の田嶋幸三が「スポーツ界は法令順守などで未成熟なことが多い。柔道界が暴力を根絶し、いいガバナンス(統治)をできれば日本のスポーツ界全体にいい影響を与えると思う。」と発言すると、同じく委員である香山リカは「柔道界は伝統を重んじるあまり、今の常識とかけ離れてしまう部分があった。透明性や説明責任など今の社会で求められていることは、柔道界のような伝統社会でも求められる時代になっている。」との見解を示した。これに対して上村は、「提言をきちんと受け止め、しっかり取り組んでいかねばならない」と述べた。 3月12日には第三者委員会委員長の笠間らが全柔連に報告書を答申した。答申の概要は以下の通り。 (1)明確な指導方針の提示とその徹底具体的な指導方針の策定と周知*指導者資格制度および資格剥奪制度の確立 子どもプロジェクトの推進 規律委員会、裁定委員会制度の創設 (2)全柔連組織の改革 外部第三者の執行部中枢への登用 女性理事の登用 (3)強化システムの再検討 監督、コーチ人事の明確化 ナショナルチーム指導者と所属の指導者との連携強化 ナショナルチームへの選手選抜、代表選手選抜の際の説明責任 女子強化委員会ないし強化委員会内の女子専門部門の創設*女性監督、女性コーチの導入 (4)コンプライアンス(法令順守)の徹底 コンプライアンス委員会の設置 相談、通報窓口の整備*コンプライアンス、倫理研修制度 (5)リスクマネジメント体制の整備 組織内の調査委員会の制定*説明責任と情報公開 答申では複数の選手が肉体的のみならず精神的暴力を恒常的に蒙っていたなど、暴力行為が現に存在していたことを改めて認定した。委員の香山もこの点に関して、「『死ね』は、あいさつがわりだったと聞いている」と述べた。さらに答申では、「一部には暴力的指導で強くなる選手もいるという考えが根強く残っており、それを否定するための明確な指針はなかった」と、指導者が従うべき倫理的指針の不在を始め、組織的対応の拙さ、適切な情報開示の不備などが指摘された。また、全柔連理事に複数の女性や、法曹関係者など外部からの人材登用を提言するとともに、改革の過程を明らかにすることも合わせて求めることになった。 加えて笠間は、女子には女子の監督が相応しい時期に来ていると述べるとともに執行部には国際感覚に優れ、対外交渉能力に秀でた人材を外部から登用することの必要性を語った。しかし、第三者委員会は個人の責任を認定する性質のものではないとのことから、一般論として組織のトップの責任に触れたのみで、全柔連会長である上村個人の責任を直接問うことはなかった。 これに対して上村は、「柔道界が健全に発展していけるように、答申された内容を実行に移すのが自らの役割」と述べた。 一方、告発選手側の代理人を務める弁護士の辻口はこの答申の内容を前向きに評価するとともに、概要を一部の選手にメールで伝えたことを明らかにした。また、告発選手の相談役を務めた部会長の山口もこの答申を評価するとともに実現していくことの重要性を指摘した。 さらに、答申において提言された女性理事の候補として、1992年バルセロナオリンピック及び1996年アトランタオリンピックで銀メダルを獲得した日本大学准教授であり柔道部コーチでもある、文部科学省の中央教育審議会委員を務める田辺陽子の名前が挙がっているという。 またこの日に、JOCは告発選手15名の聞き取り調査がすべて完了したことを明らかにした。それを踏まえた報告書をJOC加盟団体審査委員会に提出して、同委員会が全柔連に対する処分を決定することになるという。 3月13日には強化選手の所属先関係者と強化方針の意見交換を行う「強化連携フォーラム」において、全柔連委員長の斉藤は今回の騒動について出席者に謝罪した。
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