特定承継の登記申請情報(一部)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 09:16 UTC 版)
「移転登記 (不動産登記)」の記事における「特定承継の登記申請情報(一部)」の解説
本稿では、上記の登記事項のうち代位申請に関する事項以外の事項について、登記申請情報の記載方法を説明する。申請の受付の年月日及び受付番号については不動産登記#受付・調査を参照。 登記の目的(令3条5号)については、一般承継の場合と異なり、登記された権利又は持分の一部の移転も可能である。その場合、「登記の目的 1番先取特権一部移転」(記録例329)や「登記の目的 1番地上権A持分一部移転」(記録例259)のように記載する。 登記原因及びその日付(令3条6号)は、地上権・永小作権・賃借権・採石権については「原因 平成何年何月何日売買」のように記載する(記録例315等)。 売買以外の登記原因及びその日付については、所有権移転登記#登記原因及び所有権移転登記#原因の日付を参照(「民法第287条による放棄」を除く)。ただし、登記原因の節中以下の表左欄に掲げる登記原因につき中欄に掲げる根拠条文は、本稿における移転登記については、右欄に掲げるものが根拠条文となる。 登記原因示されている根拠条文本稿の移転登記における根拠条文共有物分割 民法256条1項本文・民法258条 民法264条が準用する民法256条1項本文・258条 時効取得 民法162条 民法163条 持分放棄 民法255条 民法264条が準用する民法255条 特別縁故者不存在確定 収用 土地収用法2条 土地収用法5条1項柱書及び1号 採石権につき、採石法19条3項の決定に基づく移転の場合、決定書(採石法20条参照)に記載された変更日を日付として「原因 平成何年何月何日譲渡決定」のように記載する(記録例316)。 先取特権については、債権譲渡・代位弁済・先取特権権の準共有持分の放棄・不可分債権の準共有持分を放棄によって移転する。具体的な記載例は、抵当権移転登記#登記原因及びその日付を参照。論点は同じである。 先取特権についての譲渡額又は弁済額(令別表45項申請情報)は、「譲渡債権額 金何円」や「代位弁済額 金何円」のように記載する(記録例329)。 登記申請人(令3条1号)は、原則として登記された権利又はその持分もしくはそれらの一部を得る者を登記権利者とし、失う者を登記義務者と記載する。なお、法人が申請人となる場合の代表者の氏名等の記載に関する論点は一般承継の場合と同じである。 真正な登記名義の回復の場合、以前に登記名義人であった者以外の者が登記申請人となることはできない(1965年(昭和40年)7月13日民甲1857号回答参照)。 添付情報(規則4条1項6号、一部)は登記原因証明情報(法61条・令7条1項5号ロ)、登記義務者の登記識別情報(法22条本文)又は登記済証を添付する。法人が申請人となる場合は更に代表者資格証明情報(令7条1項1号)も原則として添付しなければならない。 一方、書面申請の場合であっても、登記義務者の印鑑証明書の添付は原則として不要である(令16条2項・規則48条1項5号、令18条2項・規則49条2項4号及び48条1項5号)が、登記義務者が登記識別情報を提供できない場合には添付しなければならない(規則47条3号ハ参照)。 先取特権の移転登記について代位弁済が任意代位である場合、債権者に代位するためには債権者の承諾が必要である(民法499条1項)が、当該債権者が登記申請人(登記義務者)となるので、承諾証明情報の添付は不要である。 債権譲渡を原因として先取特権の移転登記を申請する場合、民法467条の第三者に対する対抗要件を具備したことを証する書面を添付する必要はない(1899年(明治32年)9月12日民刑1636号回答)。従って、登記記録上の先取特権移転登記は無効であるということがありうる(なお、不動産登記に公信力はない。不動産登記実務総覧上巻-4頁。)。 賃借権の譲渡による移転登記の場合(譲渡を許す旨の定めの登記があるときを除く)、承諾証明情報もしくは借地借家法19条1項前段又は同法20条1項に規定する許可があったことを証する情報が添付情報となる(令別表第40項添付情報ロ)。 地上権・永小作権・賃借権・採石権の目的たる土地が農地又は採草放牧地(b:農地法第2条1項)である場合、売買等(承諾証明情報を参照)による移転登記をするときは、b:農地法第3条の許可書(令7条1項5号ハ)を添付しなければならない。 登録免許税(規則189条1項前段)は、地上権・永小作権・賃借権・採石権については、共有物分割に係る場合は不動産の価額の額の1,000分の2であり(登録免許税法別表第1-1(3)ハ、共有物分割#登記申請情報(一部)も参照)、その他の場合は不動産の価額の額の1,000分の10である(同法別表第1-1(3)ニ)。また、先取特権については債権金額の1,000分の2である(同法別表第1-1(6)ロ)。なお、端数処理など算出方法の通則については不動産登記#登録免許税を参照。 共同担保にある数個の先取特権を移転する場合、登録免許税法13条2項の減税規定が準用される(1968年(昭和43年)10月14日民甲3152号通達1参照)。よって、移転登記が最初の申請以外の場合で、前の申請と今回の申請に係る登記所の管轄が異なる場合、登記証明書(登録免許税法施行規則11条、具体的には登記事項証明書である)を添付すれば(管轄が同じなら添付しなくても)、当該移転登記に係る先取特権の件数1件につき1,500円となる(登録免許税法13条2項)。この場合、登記申請情報に減税の根拠となる条文を「登録免許税 金1,500円(登録免許税法第13条第2項)」のように記載しなければならない(規則189条3項)。
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