殺害までのやり取り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 06:36 UTC 版)
「司ちゃん誘拐殺人事件」の記事における「殺害までのやり取り」の解説
同日18時30分ごろ、Kは公衆電話ボックス(中道町上曽根字浜1802番地の1)から、A宅(一宮町東原)へ電話し、応対したAの父親Bに対し、「お宅じゃえらいことをしてくれるじゃねえか。お宅にAという子供がいるじゃねえか。預かっているから命が欲しかったら金を用意しろ。金を用意しなけりゃ若い衆を乗りこませるぞ。1,000万円用意しろ」などと要求。この電話を始め、殺害・死体遺棄に至るまでに、身代金要求の電話を計16回にわたって掛けた。 一方、BはKから(18時30分ごろに)最初の脅迫電話を受けた直後、近所の石和警察署金田駐在所に通報。これを受け、山梨県警察は身代金目的の誘拐事件として、同日22時45分、山梨社会部記者会の加盟各社に対し、志村安行県警広報官を通じ、報道協定を結ぶ旨を連絡。23時10分に協定の申し入れを行い、翌3日2時10分に本協定を結んだ。また、警察庁は記者クラブが仮協定を締結した直後、日本新聞協会・日本雑誌協会に対し、地元記者クラブの仮協定が結ばれたことを連絡し、被害者Aが発見・保護されるまでの間、全国の新聞・放送機関・雑誌は事件に関する一切の取材・報道を自粛することとなった。 そして3時30分、山梨県警捜査一課と石和署は、石和署内に「一宮町身代金目的幼児誘拐容疑事件捜査本部」(本部長:赤池英利・県警刑事部長)を設置した。事件発覚後、捜査本部はA宅の電話に録音装置を取り付け、3回目の電話以降は、電話局に逆探知を依頼したが、Kからの電話の長さはいずれも5分未満(多くが2分程度)で、8日までに掛かってきた21回の電話のうち、最初の2回を除く19回について逆探知を試みたものの、いずれも不成功に終わった。これは、甲府では各電話局(集中局・固定局・中心局)の回線網が複雑に張り巡らせられてあったためで、逆探知には最低でも10分間は必要だった。 4回目の電話(8月3日6時50分ごろ)の際、KはBから「子供の声を聞かせてくれ」と言われ、5回目の電話(同日7時12分ごろ)で「お父さん、お父さん」というAの声を聞かせた。これに対し、Bが「大丈夫だ、お父さんが迎えに行ってやる」と言うと、Kが電話に出て、共犯者がいることをほのめかした上で、Bからの「今日は日曜日で、1,000万円は用意できないので、身代金を下げてほしい」という要求を拒絶した。続く6回目の電話(3日18時59分)では、Bとともに妻C(Aの母親)も電話に応対したが、この時にKは「あす1日しかおられない。仲間はせいせい(山梨の方言で『飽き飽き』の意味)になってる」と発言した一方、Bからの「子供の声をもう一度聞かせてくれ」という懇願に対しては「今夜はダメだ。明日の朝だ」と拒絶した。Cは捜査本部に対し、この声を「知人男性X(神奈川県内在住)に似ている」と証言したが、捜査本部は十分な裏付けを取らないままXを重要参考人と断定し、それが事件を長期化させる一因となった(後述)。 7回目の電話(8月4日8時14分)で、KはBに対し「身代金を500万円に減額するので、11時に甲府駅まで持ってこい」と要求。続く8回目の電話(8時54分)では、電話に出て「お父さん助けて」と哀願したAに対し、Bが「お父さんが助けてやるからな」と約束した。その後、BはKからの要求通り、現金500万円を持って国鉄甲府駅北口に出向いたが、犯人 (K) は現れなかった。この間、9回目の電話(11時9分)では、甲府駅に出向いていたBに代わり、Cが応対したところ、AはCに対し「お母さん助けて」と言っていた。 Kは、Bが帰宅後に最初に応対した11回目の電話(13時7分)で、「ひとりで行っているんじゃないじゃないか」などとBを詰問していた。そして、13回目の電話(17時47分)でKは、「20時に、甲府市内の路上まで身代金を持ってこい」と要求した上で、Bの求めに応じ、Aを電話に出させた。この時、AはBから「ご飯食べているか」「ちゃんと寝てるか」という質問に「うん」と答え、BはAに「すぐ行ってやるよ」と約束したが、これがAの生前最後の肉声となった。その後、再び電話を代わったKは、Bに対し「身代金を持ってきたら、兄貴が甲府駅まで(Aを)連れて行く」と言っていたが、この時もKは現れなかった。Kは同日夜にAを殺害後、「何が何でも身代金を奪おう」との意思を固め、先述の指定場所まで行こうとしたが、結局は「そこには警察官が張り込んでおり、行ったら逮捕される」と考え、断念した。
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