明野教導飛行師団・常陸教導飛行師団
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「明野陸軍飛行学校」の記事における「明野教導飛行師団・常陸教導飛行師団」の解説
太平洋戦争の戦況が悪化した1944年(昭和19年)3月、参謀本部では連合軍機の本土襲来に備えて、教官、助教などに練度の高い要員を多く有する教育機関等(陸軍航空審査部を含む)を随時防空戦闘体制に移行させる「東二号作戦」が起案された。陸軍の学校、官衙の初めての戦力化であり、士気高揚策でもあった。これにもとづき臨時に防空任務につく諸部隊の総称が「東二号部隊」であり、参謀総長により配置が指示された。水戸分校は保有する戦闘機のうち約15機を用い、第10飛行師団指揮下の東二号部隊として防空を実施する常陸飛行隊を編成した。 同年5月、陸軍航空関係少尉候補者教育令(勅令第344号)により、陸軍航空士官学校で教育中であった少尉候補者第24期後期学生のうち11名の教育が明野陸軍飛行学校に移管され、己種学生(きしゅがくせい)として同月末の卒業まで教育を受けた。 1944年6月、陸軍中央は飛行学校5校と1分校、および航空整備学校1校を完全に軍隊化し、航空総監隷下で教育と作戦行動を常時並行して行わせることとした。下志津教導飛行師団等臨時編成要領(軍令陸乙第29号)により明野陸軍飛行学校および水戸分校は閉鎖され、それぞれ明野教導飛行師団と常陸教導飛行師団に改編された。明野教導飛行師団の編制は師団司令部、4個教導飛行隊、1個教導整備隊、通信隊、教育隊と学生であり、明野、北伊勢、天竜、佐野、都城西(宮崎県)の各陸軍飛行場に分散展開した。常陸教導飛行師団の編制は師団司令部、2個教導飛行隊、1個教導整備隊、通信隊、教育隊、学生を水戸北、水戸南、能代(秋田県)の各陸軍飛行場に展開し、戦闘分科操縦要員教育のほか、防空戦闘、あるいは重戦闘機、夜間戦闘機等の運用についての研究を実施した。明野ならびに常陸教導飛行師団の被教育者は、編制表により大尉を対象とする甲種学生、尉官対象の乙種学生と、准士官および下士官からなる己種学生とされた。同年8月には航空総監部の兼任による教導航空軍司令部が編成され、各教導飛行師団を指揮した。 同年9月下旬、陸軍中央は明野教導飛行師団の一部を捷一号作戦に投入することを決意し、翌10月、軍令陸甲第135号により人員と器材を抽出して飛行第200戦隊(戦隊長:高橋武中佐)が編成された。同戦隊は通常の倍の規模の6個中隊編成であり、操縦者には熟練の教官、助教を含み、四式戦闘機約80機を定数上保有することになっていた。しかし人員の充足は容易ではなく、操縦者には明野において乙種学生課程を終えたばかりの士官候補生第57期出身者、あるいは少年飛行兵第13期出身者など経験に乏しい者も含まれていた。同月、飛行第200戦隊は軍令陸甲第136号により編合された第30戦闘飛行集団(集団長には明野教導飛行師団長、青木武三少将を補職)の戦闘序列に入りフィリピンへ移動、ルソン島で作戦行動に従事した。他方、国内に残った明野教導飛行師団では従来の施設に加えて香川県木田郡林村(現在の高松市林)に新設された高松陸軍飛行場等を利用して教育と防空作戦を継続した。被教育者にはビルマ人留学生も含まれている。 同年11月、フィリピンの戦いで陸軍特別攻撃隊による体当たり攻撃が行われるようになると、「八紘特別攻撃隊」全12隊からは第1隊(八紘隊)、第7隊(丹心隊)、第9隊(一誠隊)が明野教導飛行師団の、第2隊(一宇隊)、第10隊(殉義隊)が常陸教導飛行師団の人員および一式戦闘機により編成された。同年12月、司令部が航空総監部の兼任であった教導航空軍は編成を解かれた。 1945年(昭和20年)1月、「振武特別攻撃隊」30隊(第18~第47)、同年3月にはさらに69隊(第48~第116)の編成が発令され、明野教導飛行師団からは計21隊が、常陸教導飛行師団からは計8隊が編成されている。 同年4月、本土決戦に備え航空諸軍を統率する天皇直隷の航空総軍司令部が編成され、航空総監部は閉鎖された。これにともない明野教導飛行師団は航空総軍司令官の隷下に入り、主として遠州灘、熊野灘方面に対する決号作戦の準備を進め、好機に乗じ同方面に来攻する米軍機動部隊を攻撃する任務が与えられた。常陸教導飛行師団は関東地方重点の防衛を担当した。同年4月18日、「下志津陸軍飛行学校令外四軍令廃止ノ件」(軍令陸第11号)の施行により明野陸軍飛行学校令が廃止となり、閉鎖中であった同校および水戸分校は正式に廃止された。
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