撮影詳細
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 17:42 UTC 版)
撮影の鈴木達夫の提案で、カメラにフィルターを付けて全シーン撮影した。沢田研二の原爆製造のシーンではパープル→グリーン→白で燃え尽きるイメージを演出した。池上季実子の登場シーンではピンクと、イメージに合わせた着色を行い、本作は実験映画としての側面もある。 冒頭のバスジャックのクライマックスについて長谷川は「皇居前広場に無許可で忍び込んで一発撮りした、いわばゲリラ撮影だった」、「思ったよりバスの速度が出なかったため突撃とならず、皇居係員ものんびり誘導に出てきた程」、「仕方がないのでコマを抜いて速く見せた」と話している。撮影地は坂下門前。当然登場する皇居警察は実物。逮捕される可能性が高いだろうということで撮影は最後にまわし、撮影後は留置所かもしれないと覚悟してスタッフは皆歯ブラシや手ぬぐいを持参して撮影に挑んだ。バス内部のシーンや皇居の堀に向かって手榴弾を投げるシーンなどは、よみうりランドに作ったセット撮影である。 首都高でのカーチェイスも許可が下りる見通しが立たなかったためオール無許可。スタッフが撮影箇所の後方で、わざと4台の自動車をノロノロ運転で走り、一般の自動車が前に行かさないようにして撮影、東京のど真ん中でカーチェイスを繰り広げた。製作担当は延べ2、30名検挙されているという。予告編でも見られる湾岸での大型トレーラの上のジャンプやトレーラ下の潜り抜けは、三石千尋率いる「マイクスタントマンチーム」によるもの。劇中では、マツダ(当時は東洋工業)の協力により、沢田演じる誠がサバンナRX-7、菅原演じる山下がコスモAPを使用。スーパーカーブームの終盤に登場した発売されたばかりの国産スポーツカー・RX-7をズタボロになるまで酷使。カーチェイスは何日もかけて撮影したもので、ドライバーが疲れて、25台の約束が5台しか来なかったこともあった。苦労して撮ったカースタントだったが、長谷川がロスのFilmexに持って行って見せたら、ハリウッドの映画人から「なかなか面白い映画だと思うが、どうしてあんなC級カーアクションをラストにくっつけたんだ」と言われた。当時のハリウッド映画のレベルから見ればそう見えたものだが、長谷川は悔しくて「俺はC級カーアクションが好きなんだ!」と開き直った。 森達也は同じ大学の映研に所属していた黒沢清に頼まれ、本作の渋谷ロケに参加したが、映り込んでいるカットは一瞬。アップも撮られたのに短い台詞とともにすべてカットされていたという。 日本橋(劇中は渋谷の設定)のビルからの一万円札撒きや、国会議事堂前、国会議事堂裏口のゲリラ撮影は、相米慎二のB班が「逮捕され要員」として待機させられた。 山下がヘリコプターから地上に落ちるシーンでは、スタントマンは安全面から2メートルを希望したが、長谷川は迫力を出すため5メートルを主張、さらに撮影時にはヘリコプターは7~10メートルまで上昇している。東京湾のヘドロに落下したスタントマンは、完成フィルムを見て自分の飛び降りたあまりの高さに驚き「嘘だろ! 冗談でしょ!」と顔面を引きつらせたという。結局、スタントマンは骨折したといわれる。 東京湾にはさらに2人飛び込んでいる。当時の東京湾は非常に汚かった。池上季実子は現場に到着するなり、長谷川から「池上さんが東京湾に放り込まれるシーンから撮影する」と言われ仰天した。池上のマネージャーと監督、スタッフとの緊急討論が持たれた。その結果、「(1)リハーサルで助監督が飛び込んで安全を確認する (2)すぐ近くに風呂を用意する」という妥協案でまとまり、池上もヘドロいっぱいの東京湾に飛び込んだという。後年、「スタントなしで当時の東京湾に飛び込んだのは、今では20歳の貴重な思い出になっている」と池上は話している。 猫がプルトニウムを食べて死ぬシーンは、業者から「(殺しても代わりは)何匹もいますから」と言われたが、長谷川は猫を殺すのがどうしても嫌で、第2班監督の相米に「絶対に殺さずに死んだように見せろ」と命令し、相米はフィルムを何百フィートも回し、最終的にはマタタビを使って撮ったという。 沢田は「ボツになったシーンはいっぱいあります。小学校のプールにプルトニウムを撒くシーンとかも撮影したんだけど、想像するだけに替わっています。山本プロデューサーとゴジさんが『それをやると劇場で掛からないんだよ!』とか派手にやり合ってました。ラストのビル(科学技術館)の屋上シーンは全シーン撮り直したんですよ。『どこが悪かったんだろう?』と思いましたけど(笑)」などと話している。 沢田と菅原がクライマックスで取っ組み合ったまま落下するシーンは、千葉真一率いるジャパンアクションクラブ (JAC)の協力を仰ぎ、本番は北の丸公園で行われ、菅原はスタント?だが、沢田は自身で演じ、3度高いイチョウの木から落下し、イチョウの大木が折れた。 製作費用がどんどん膨れ上がり、プロデューサーの山本は途中で「これは破産するな」と思った。そこで山本は確実にヒットが見込める映画を並行して作り、その金を本作に充てようと考えた。そこで目を付けたのが、いしいひさいちの漫画『がんばれ!!タブチくん!!』だった。結局アニメ映画『がんばれ!!タブチくん!!』は大ヒットを記録し、2本の続編が作られた。後に山本は「『がんばれ!!タブチくん!!』がなかったら、『太陽を盗んだ男』の製作で僕は億を超える負債を背負い込み、立ち上がれなかったかも知れない」と述べている。
※この「撮影詳細」の解説は、「太陽を盗んだ男」の解説の一部です。
「撮影詳細」を含む「太陽を盗んだ男」の記事については、「太陽を盗んだ男」の概要を参照ください。
- 撮影詳細のページへのリンク