惑星レグニツァ上空の戦い
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「惑星レグニツァ上空の戦い」の解説
宇宙暦795年/帝国暦486年9月4日。帝国軍ラインハルト艦隊と同盟軍第2艦隊の戦い。第4次ティアマト会戦の前哨戦に位置されている戦い。ラインハルトがミッターマイヤー/ロイエンタールを配下として戦った最初の戦いであり、戦艦ブリュンヒルトが実戦に登場した初めての戦いでもある。 長年の悲願であるイゼルローン要塞攻略を目指す同盟軍は要塞に7度目の攻勢をかけるべく第2/第10/第12艦隊の3個艦隊を投入し、イゼルローン回廊同盟側出口の一つであるティアマト星系を進軍していた。同盟軍艦隊の内、先行していた第2艦隊が木星型惑星レグニツァの大気圏内を航行している所を帝国軍が探知し、折り悪くフレーゲル男爵と本気の口論を始めたラインハルトは、レグニツァへの出動という形で体よく要塞から追い出された。 惑星レグニツァの大気圏はレーダーがほとんど効かず、両軍共に目視で探査、航行しており、双方全く予期しない嵐の中の遭遇戦という形で砲撃戦が開始された。当初はパエッタ中将率いる同盟軍第2艦隊が優勢で完勝寸前のように思われた。だがラインハルトは惑星レグニツァの大気に核融合ミサイルを撃ち込み、水素とヘリウムからなる大気を爆発させ、巨大なガスの奔流を第2艦隊に向けて叩きつけるという奇策を用い、戦局を一瞬で逆転させた。形勢不利を悟ったパエッタは自軍を撤退させ、一方のラインハルトも逆襲を被る危険を避けるため撤退した。両軍にとって消化不良な一戦であり、両軍の被害は互いに自然環境が不利に働かなければ自軍が勝っていたと主張しうる程度のものであった。この戦いの直後、戦艦アルトマルクの艦長であるコルプト子爵が、戦乱に乗じてミッターマイヤーの乗艦に砲撃したが、撃砕はならず、逆にミッターマイヤーの反撃によって撤退する同盟軍艦隊の正面におびき出され、同盟軍の一斉砲撃を受けて艦もろとも四散している。 劇場版第1作では描写が大きく異なる。帝国軍総司令官ミュッケンベルガー元帥は同盟軍の侵攻に向け、本国からの増援として回廊内に到着したばかりの「スカートの中の大将」ラインハルトを「招かれざる客」とみなし、そんな客は要塞に着く前に消えてくれれば幸いとばかりに、惑星レグニツァに向かわせた。パエッタは数において優勢でありながら有利な戦況を作り出せず、「体当たり攻撃」などという愚劣な命令を出してヤンを呆れさせている。ラインハルトはたった1発の核融合ミサイルで同盟軍を混乱に陥らせたが、ヤンはラインハルトの策を察知し、その意を受けたアッテンボローが、旗艦パトロクロスの舵を勝手に動かして艦を離脱させ、パトロクロスとそれに追随した少数の艦を救っている。そして、パエッタは呆然と撤退を呟くだけだった。なおOVA版でのアムリッツァ星域会戦では、ヤンはこの戦いでラインハルトが使った戦法を用い、恒星アムリッツァに核融合ミサイルを撃ち込むことで恒星の核融合反応を増大させ、それにより増大した太陽風を追い風にしてミッターマイヤー艦隊に急接近し、損害を与えた。 この戦いは劇場版第1作最初の、すなわちOVA版における最初の戦いとなった。 藤崎竜の漫画版では、若干の設定変更が加えられた上で一部描写が加味されている。なお、星系名は「レグニッツァ」と表記されている。 ブリュンヒルトを下賜されたラインハルトは、フレーゲルとの確執の末にミッターマイヤー、ロイエンタール両名の忠誠も手に入れていた。しかしラインハルトを敵視するフレーゲルはそのことを許さず、ミュッケンベルガーを強引に説き伏せて作戦参謀としてイゼルローン要塞に赴く。そしてラインハルト、キルヒアイス、ロイエンタール、ミッターマイヤーの4名と彼等の直属艦隊のみでレグニッツァ星系に展開した同盟軍を叩くように命を下していた(こうすることで、4人全員を同盟軍に始末させるのが目的であり、ラインハルトに面と向かって「これで君の戦力はおよそ1万だ。同盟軍は3万を超えているけどね」と嫌味を込めた発言をしている)。ところがラインハルト艦隊はロイエンタールの陽動とミッターマイヤーの奇襲によって同盟軍の先鋒である第2艦隊を蹂躙。これに危機感を抱いたパエッタ中将はやむを得ずレグニッツァの雷雲の中へと逃げ込んだ。 一方、パエッタの旗艦パトロクロスには作戦参謀として従軍するヤン・ウェンリーとジャン・ロベール・ラップの両名がおり、混乱の渦中にある艦内で冷静に状況を分析していた。レグニッツァの表面を構成するガスの危険性を察したヤンはすかさず撤退を上申するも、パエッタは状況が不利になっている事に気付かず棄却。入れ替わりにラップがガス状惑星の危険性を説明したことで、ようやく撤退を決意したのであった(乱気流のため光通信すら難しい状況であったが、パトロクロスが撤退行動をとった事で一部の艦も脱出を始めている)。 一方、第2艦隊の上方に構えていたロイエンタール、ビッテンフェルト、ミッターマイヤー旗下の艦隊はここぞとばかりに手持ちの核融合ミサイルを全弾投下、惑星表面に大爆発を起こして第2艦隊の艦を多数葬り去ってしまう。パトロクロス以下少数の艦は辛くも難を逃れたが、結果として同盟軍は第2艦隊の戦力の8割喪失という大敗を喫したのであった。 結果として帝国側では、勝利者であるラインハルトがこれまで以上に帝国軍の兵たちから「優秀な司令官」として慕われ、さらなる出世への道を切り開くこととなった。その一方で同盟側では、「敗軍の将」のごとく負傷しながらも生還したパエッタが痛みに耐えながらも総司令官のロボスに自ら報告を行い、兵力の過半数を失ったことから続く第4次ティアマト会戦には後方に回されたが、この敗北による「不名誉」はその後もパエッタについて回り、後のアスターテ会戦に際しては率いる兵力こそ原作小説と同じく、パストーレの第4艦隊やムーアの第6艦隊よりも多かったが、第2艦隊の兵たちの中には「レグニッツァでボロ負けした奴」や「トリューニヒト国防委員長に取り入って、この会戦に参加させてもらった」と陰口を発する者がおり、「率いる兵力の規模と、部下からの蔑視の度合いがどちらも大きい」という異常な状況を生み出した。
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