アムリッツァ星域会戦
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「アムリッツァ星域会戦」の解説
宇宙暦796年/帝国暦487年10月14日。 帝国領に侵攻した同盟軍は投入した8個艦隊の内、前哨戦で第3/第7/第12艦隊の3個艦隊が全滅し、第9/第10艦隊も司令官を失った上半数近い損害を出し、司令部が健在だった第5/第8/第13艦隊もそれぞれ損害を出していた。ノイエ版では第7/第10/第12艦隊が壊滅、第3/第8艦隊が多大な損害を被り、第5/第9/第13艦隊もそれぞれ損害を被るも第3/第8艦隊よりは損耗率を抑えており、第13艦隊は9割の戦力を有していた(第5/第9艦隊の損耗率は不明)。藤崎版コミックスでは具体的な兵力が示されており、半壊した艦隊は何れも5000隻、三割の被害を受けた部隊は9000隻(第十三艦隊のみ11000隻)であり、合計艦数49000隻、帝国軍は主力のみで74000隻に達しており、参謀長のグリーンヒル大将は撤退を具申するも、ロボス総司令官はこのままでは引き下がれないとして、確たる今後の方針もないまま残存艦艇にアムリッツァ星域への集結を命じた。これに対してラインハルトは「奴らがアムリッツァを墓に選んだのなら、その願いをかなえてやろう」と冷笑し、キルヒアイスらの別動部隊を含む10万隻余りの艦隊を投入して同盟軍を圧倒した。 同盟軍は第5/第8/第13艦隊をそれぞれ左翼、中央、右翼の軸とし、これに第9/第10艦隊の残存艦艇を合流させ恒星アムリッツァ上に布陣した。また後方からの攻撃を避けるべく後背には機雷原を敷設した。ノイエ版では旧銀河連邦時代に放棄されたアムリッツァ採掘近傍の採掘惑星を盾に布陣しており、第10艦隊の残存艦艇を指揮下に収めた第13艦隊を左翼、第5艦隊を中央、第9艦隊を右翼の軸として前面に展開させ第3/第8艦隊を採掘惑星を盾にするように布陣させている。対する帝国軍はラインハルトの直属艦隊に加え各星系から同盟軍を追撃してきたロイエンタール、ミッターマイヤー、メックリンガー、ビッテンフェルト、ケンプ各艦隊を同盟軍前方に布陣させた。 会戦開始直後、同盟軍右翼の第13艦隊が恒星アムリッツァに核融合機雷を打ちこみ、その爆風を利用して帝国軍先鋒ミッターマイヤー艦隊に急接近し、多少の損害を負わせた。第13艦隊の突出を見た帝国軍左翼のビッテンフェルト艦隊は第13艦隊側面を突くべく突進し、ヤンはこれを躱すが、これにより中央でラインハルト艦隊と戦っていた第8艦隊の側面が露わになってしまい、直進してきたビッテンフェルト艦隊の攻撃をうけて第8艦隊は壊滅、潰走した(OVA版ではこの時アップルトンは戦死、原作ではそのような描写はない)。ここでビッテンフェルトは第13艦隊に再度攻撃を加えるべくその場で全艦隊に回頭を命じるが、その隙を突いて第13艦隊がビッテンフェルト艦隊に向け回頭し、猛攻撃を加えた。この時、ビッテンフェルト艦隊はワルキューレの発進を準備していたために回頭や回避運動が遅れて十分な対応がとれず、第13艦隊はかなりの戦力を削ぐことに成功した。その後ビッテンフェルトは強引に突破を図り何とか殲滅は免れている。ノイエ版ではワルキューレ発進後に第13艦隊がシールド用のエネルギーまで全て攻撃に注ぎ込んで猛攻を加え、黒色槍騎兵艦隊は味方のワルキューレが射線上に居るため思うように反撃できず、更にビュコックの第5艦隊の横撃を受けて大損害を負った。 アムリッツァ付近にて激戦が繰り広げられている中、キルヒアイス、ワーレン、ルッツの連合艦隊3万隻が同盟軍の背後に展開されていた機雷原を指向性ゼッフル粒子で除去して進攻し、同盟軍を挟撃することに成功した。なお、帝国軍の公式記録上では、この時初めて実戦で指向性ゼッフル粒子が使われた事になっている。これにより大勢は決し、同盟軍の残存戦力は撤退を開始した。ヤンはビュコックに残存戦力の集結とイゼルローン要塞への撤退の指揮を依頼すると共に、自らの第13艦隊を殿とし帝国軍の前に立ち塞がった。帝国軍は圧倒的な兵力を以て第13艦隊を包囲するも第10/第13艦隊との連戦で戦力が弱体化していたビッテンフェルト艦隊が穴となり完全な包囲網を敷くことはできなかった。第13艦隊は同盟軍の撤退を見届けた後、ビッテンフェルト艦隊を突き崩し脱出に成功した。 コミックスでは、キルヒアイス艦隊がミニブラックホールを用いて同盟軍後背の機雷原を突破したことで、挟撃されて恐慌したアップルトンの敵前回頭もあって同盟軍は甚大な被害を受ける。しかし、開戦前にヤンが恒星アムリッツァに仕込んでおいた、レーザー砲台を積んだ無人の太陽ボートでビッテンフェルト艦隊を打ち破り、第13艦隊が確保した退路から残りの艦隊も戦場から脱出している。ノイエ版ではヤンが無人艦隊を包囲の切れ目に接近させたことで危機感を覚えたビッテンフェルトが延翼運動を行い、ただでさえ消耗した戦力が薄く分散してしまう。ここに損傷艦が多く戦力外だったアッテンボロー麾下の第10艦隊残存部隊が廃棄された採掘場の小惑星を無人艦を使い加速させて突入、小惑星の岩盤に激突した帝国艦隊が次々に爆沈していく、混乱する黒色槍騎兵艦隊に同盟軍は残った火力を集中、壊滅しつつある艦隊の中でビッテンフェルトは最後の一兵まで死守しようとしたもののオイゲン大佐の諌めに従って退却。同盟軍は脱出に成功した。 この戦いによって同盟は参加した将兵3000万の内2000万を失うという歴史的大敗を喫し、全将兵の四割が戦死するという致命傷を負う。更に艦隊も第13艦隊を除いて全てが壊滅状態に陥ってしまい、後のクーデターで第11艦隊も失って実質的な艦隊戦力が首都直営の第1艦隊を除けば、ヤンの第13艦隊以外の全ての艦隊戦力を失ってしまう。加えて、軍備維持のために民間から更に人材を移動させた上にアスターテ会戦での遺族補償とイゼルローンの捕虜の食糧事情、更にこの戦闘での2000万人分の遺族補償までが嵩んでしまい、軍事、経済、社会の全てに於いて同盟に回復不可能の打撃を与えてしまう。この一連の事態は同盟内では「アムリッツァの愚行」と呼ばれ、同盟が滅亡する決定打の一つとなる。
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